一般質問のご報告①【南風泊地区高度衛生管理整備事業】

17日に12月議会が閉会しました。今議会でおこなった一般質問について、質問と執行部の答弁(要旨)を紹介いたします。

⚘⚘⚘⚘⚘

本池 平成25(2013)年に水産庁が策定した「下関地区高度衛生管理基本計画」にもとづき、本市の事業として南風泊分港の高度衛生管理型荷さばき所を整備することが決まった。平成28(2016)年には基本設計・実施設計がおこなわれているが、それ以降、工事が進んでいる様子が見えず、漁業関係者、市場関係者、彦島地区の住民の方々より「なにが起きているのか」といった声をいただいている。加えて、経済委員会にて何度も工事費の増額、工期の延長がおこなわれていることから改めて質問する。どのような経緯でこの事業が始まったのか。

三木農林水産振興部長 下関市地方卸売市場南風泊市場は昭和49(1974)年11月にフグを中心とした卸売市場として開設され、本事業を検討し始めたときにはすでに40年経過しており施設の老朽化が著しく耐震化についても未整備の状態だった。平成25(2013)年9月に国が全国的な水産物の流通拠点である下関漁港において、水産物の高度な衛生管理を実現するための基本的な考え方や対応方針等を示した「高度衛生管理基本計画(下関地区)」を策定している。この基本計画等をもとに平成25(2013)年10月に国が策定した「特定漁港漁場整備事業計画(下関地区)」にもとづき、安全安心な水産物の供給と販路拡大等をはかるための整備を山口県と下関市でおこなっている。財源的に有利な国の補助制度を活用し、全国の特定第3種漁港のすべてがとりくみを開始していた高度衛生管理対応に着手することは、南風泊市場の将来を考え実施すべきものと判断した。

本池 もともとあった市場を解体し、現在は仮設市場にて業務がおこなわれている。新しい市場が建てばまた引っ越しというスケジュールになっているが、現在の仮設市場の場所に初めから新市場を建てればよかったのではないかとの声もある。この場所に決まった理由は。

三木農林水産振興部長 平成28(2016)年3月に基本構想を策定し、そのなかで整備方法について4つの案を検討した。その検討のなかで現在の仮設市場の位置では十分な用地が確保できなかったことから、旧市場の位置へ建設することとした。高度衛生管理型荷さばき所は「搬入エリア」「洗浄エリア」「荷さばきエリア」に分け、衛生管理をおこなう必要がある。現在の仮設市場の位置に新たな市場を整備した場合、横長の設計が難しいことから、荷さばき所の区域が広くなり、陸揚げから搬出までの移動距離も長く、市場関係者に負担を強いることになる。さらに、陸揚げする船や畜養する生け簀を設置するには静穏度を保たせるために防波堤を延伸しなければならず、他と比較すると全体的にコストもかかることから現在の計画になった。

止水対策工事が進まない原因

本池 平成28(2016)年から地質調査と基本設計、実施設計をはじめ、各種工事の施工業者が決まっていったわけですが、基礎工事に遅れが生じ、現在も、まだ【写真】のような状態になっている。

 

本池 工事に関する遅れの原因をお聞きしする。建築主体工事の契約締結後から工事内容の変更がほぼ毎定例会ごとに出てきている。工事費も当初の契約金額24億394万円から、4億839万4800円増え、28億円を超えるまでになっている【下の表参照】。増額の大半を占めるのが止水対策工事で、これまで止水対策が進まず二度の工法変更がおこなわれている。工事変更内容はどのようなものか。

伊南建設部長 荷さばき所建設のためには海水を止水して基礎を施行することが必要となる。このため、止水工法として「硬質地盤クリア工法」という方法を採用した。この工法は鋼製の矢板で設置するいさいにオーガスクリュー(ネジ状の掘削機)により先行して地下を掘削し連動して鋼製の矢板を圧入するという工法で、硬質な地盤に鋼製の矢板を設置する場合に有効とされる工法だった。2度目の工法は耐震岸壁から旧護岸にかけて一定レベルまで掘削をし掘削した底面に海水を止水するためのコンクリートを打設した。

本池 これからおこなうガンパイル工法はどのような工法か。

伊南建設部長 矢板を設置する位置には裏米石(うらごめいし)が施行されている。これは5㎏~10㎏の雑石で大きさは20㎝~40㎝ある。硬質地盤クリア工法を施行し始めたが、オーガスクリューにより地中の裏込石の掘削を進めると、裏込石が動いて結果として矢板を設置することができなかった。この次として止水コンクリートの工法を試してみたが止水ができなかった。こうした経緯・現場状況も踏まえ改めてケーソン構造の岸壁の安定性なども確認しながら再度止水工法の検討を入念におこなった。今回のガンパイル工法では先端の石を粉砕しながら矢板を打撃により打ち込む工法なので、裏込石が動いて崩落することがあっても施行が可能となる工法と見込んでいる。

本池 今回のガンパイル工法で3回目になるが、止水のためには矢板をうたなければならないということになったのだと思う。今回の工法変更にいたるまで庁内でどのような検討・協議がなされてきたか。かかわった部局はどこか。

三木農林水産振興部長 問題解決に向けて止水工法の検討を海洋土木のコンサルタントに委託し工法の選定をおこなうなど、工事を進めるための調整をおこなってきた。市場流通課、農林水産振興部と建設部、港湾局にも意見を聞いてきた。

本池 「止水ができない」ということで、なんとか水を止めようと協議され変更がおこなわれているが、結局のところ止水ができない原因はなんだったのか。

伊南建設部長 地中の裏込石の状況が不確定だったこと、潮位が海沿いということで、ある程度は想定していたが思った以上に海水の圧が強く、なかなか止水ができなかったことだ。

本池 (荷さばき所建設予定地である)県施工の耐震岸壁はいつ着工しいつ完成したのか。

三木農林水産振興部長 着工は平成29(2017)年3月7日で完成は令和3(2021)年7月30日。

本池 下関市で荷さばき所の設計委託業務がなされたのはいつか。

三木農林水産振興部長 基本・実施設計は契約日が平成28(2016)年7月1日、契約期間は平成28(2016)年7月4日~平成30(2018)年3月9日。

本池 ということは(荷さばき所の)設計のさいには耐震岸壁はまだなかったことになるが、岸壁工事の詳細はどこまで把握していたのか。県と市でどのように情報共有をして荷さばき所の設計まで至ったのか。

伊南建設部長 市の建設部、農林水産振興部と、県の関係部局、県及び市の設計事務所による定期的な協議により情報共有をしながら設計を進めてきた。

本池 荷さばき所の設計後、耐震岸壁の設計内容に変更はあったのか。

三木農林水産振興部長 県に確認したところないということだった。

本池 県との連携、情報の共有はできていたのだと思うし、裏込材についても承知していたということになる。では、なぜ当初の設計に「硬質地盤クリア工法」がとられたのかという疑問が浮かぶ。これで施行できるという判断を、どの部局が、どのような根拠にもとづいて決定したのか。

伊南建設部長 判断したのは建設部公共建築課。硬質地盤クリア工法の採用にあたっては矢板の施行に関する専門の協会に対して硬質地盤クリア工法の概要、また、当該施工場所での適用についての聞き取りをおこなっている。実際に現地でも確認してもらったうえで施行が可能というご意見があったので採用した。

本池 結果的に、工法が間違っていたというのが止水ができない原因だと思う。しかし、現在までそこ(原因)には絶対に触れられてこなかったし、終いには「土木工事は難しいのだ」「掘ってみなければわからない」といわれてきた。これは聞き取りでもそうだった。これほどの増額が次々におこなわれているのに、「掘削する工法が間違っていた」ということが委員会でもこれまでいわれていない。そこが明らかにされないのはおかしいし、逆にいえば「難しい」の一言で片づけないでいただきたい。また、公共建築課が協会に意見を聞いて、そこにもとづき判断したとのことだが、市場流通課内には設計図書を確認できるなど事業を進めるに必要な体制はあったのか。

三木農林水産振興部長 工事の設計については建設部(公共建築課)のほうに意見をいただきながらやっているので体制としてはあったと思っている。

本池 公共建築課は日々さまざまな公共工事の関係業務に追われており、この南風泊もそのなかの一つということになってくるかと思う。よく大きな事業を進めるさい、技術職員を集めて「推進室」として工事関係の業務にあたるやり方もあったと思うが、そういうやり方はとられなかったのか。

笹野総務部長 一般的にさまざまな事業・プロジェクトを進めるなかで重点化するものには課内室を設置する場合がある。実際にいろんな協議をされたなかでこういった判断をされたかと理解している。当然職員の数は限られているので、そうしたなかで一番有効な解はなにかというところを探して、結果としてそういう体制を敷いたということだろうと理解している。

本池 「整備推進室」には技術職員は何人いるか。

笹野総務部長 室には二人。室長一人で技術職。もう一人は事務職員だ。

本池 技術職員は室長の一人だ。おそらくこれまで市場流通課からも技術職員の配置の要望があったかと思うがそれはできなかったのはなぜか。

笹野総務部長 市場流通課にかかわらず全庁的にいろんな事業の話を聞いたうえで増員要望があるが、そのなかで配置ができる、できないはある。市場流通課だけでなく建設部との連携をはかりながら事業に携わる職員が努力していると理解している。

本池 南風泊の事業を見ていて、公共工事を含めた安定的な行政運営にとって、技術職員の専門的で公的な視点というものの大切さを感じるところだが、この間、技術職の職員が足りず、追加の募集などもおこなってることはみなさん周知の事実だと思う。そこでお聞きするが、技術職(土木、建築、機械、電気)の職員数はどのように変化しているか。

笹野総務部長 (答弁は表参照)

土木 建築 機械 電気 合計
2005年 164 50 56 56 326
2015年 158 43 57 61 319
2024年 146 37 49 62 294

本池 一見関係ないように思われるかもしれないが、技術職の人数は公共工事の質に直結するものだと思っている。「減ってはいるが、今と昔ではやっている業務が違う」ということも聞いたが、業務量が減ったかといえばそうではないと思う。例えば設計に関しては委託がすごく増えているが、そのチェックは自前で設計する以上の技術的な視点が必要だとの指摘も元ある。自己都合で辞めていく若手の技術職の割合も多い。時代背景もあって全てが市の責任とはいわないが、組織としての弱体化が非常に危惧されている。今回は南風泊工事の工事の遅れという事実についても技術職員の体制、設計確認の体制はどうだったのか。組織としての検証が必要ではないか。市民から見れば一向に進まない工事に何億円もどんどん注ぎ込まれているようにしか見えない。

関係者への説明状況

本池 話を南風泊に戻すが、これだけ工事が長引いているなかで、適宜、説明がなされているのか。

三木農林水産振興部長 「高度衛生検討委員会」で整備状況や今後のスケジュール等について説明している。昨年度は3月に開催した。今回の工法の変更や今後の見通しに関しては、直接の影響が大きい卸売業者に説明している。

本池 関係者は卸だけではない。関係者のなかでも、もう(市場は)できないのではないともいわれているくらいだ。仮設市場も使用年数が延びすでに雨漏りなどもおき始めている。修繕が必要な箇所はきちんと対応していただくのはもちろんだが、進捗がどうなっているかを関係者に丁寧に説明することを求める。

水産業の振興を

本池 天然ふぐを漁獲する延縄漁の漁船の数はどのように推移しているか。

三木農林水産振興部長 日本海や九州西の海域におけるフグ延縄漁業については5t以上の漁船は国の承認が、5t未満の漁船は国への届出が必要となっている。市内で承認・届出済の漁船は合計で22隻だ。

本池 下関漁港水産統計年報より、南風泊に水揚げする漁船の隻数を見たところ、平成25(2017)年が168隻だったの対し、令和4(2022)年には84隻まで減っている。延縄漁師への支援はどのようなものがあるか。

三木農林水産振興部長 本市ふぐ延縄漁師に限定したものはないが、下関市の漁業者が漁船等を整備するさいに利用可能な支援として「漁業近代化資金」と「新規漁業就業者生活生産基盤整備事業」がある。

本池 タブレットには下関市水産統計より、下関市の市場の取扱金額、取扱量、次ページには、そのグラフを示している。沿岸、沖底の減少幅が大きいが、南風泊においても取扱量の低迷状況がわかるかと思う。「高度衛生化管理基本計画」では取扱量、金額ともに平成22年や平成24年のものが使われていた。計画のなかに「登録漁船」とあり平成22年に301隻となっているが、最新の数字でどうか。

三木農林水産振興部長 令和5年4月1日現在で192隻。

本池 301隻から192隻ということで、15年くらいたっているので、そのような変化が出ている。今回、現場の方々にお話を聞いて回ったが、みなさん危惧しておられるのは、高度衛生市場の建設が進まないことではなく、下関の漁業の衰退状況であり、取り扱う水産物がなくなってしまうということだ。高度衛生の市場については将来的にはないよりはあったほうがいいという声もあるが、立派なものをつくっても肝心な漁業者がいなければ「仏つくって魂入れず」状態になってしまうのではないか。とかく箱物建設がどんどん進むが、漁業者に対する支援――これも現在の高齢化などの現実にあっていない。漁業そのものを底上げする政策が下関は非常に弱く、その結果が現在の水産業の実態につながっているのではないか。 市場関係者の話だが、「エンジンが壊れたなどで辞めていく漁師が多い。エンジンを変えれば2000万円かかるが、その費用は個人では負担できない。借金できたとしても今後後継者もいないなかで返済の見通しはたたない。なのでやめるしかない、と辞めていく。市場の止水対策に2億9000万円かけるぐらいなら、何杯の船を修理してあげられるだろうか」といわれていた。高度衛生化の市場が要らないとはいわないが、今、しなければならないことはなんなのか、ということだ。基本計画策定時の供用開始(予定)は令和3年だった。これほど期間が延びたことにより前提条件は大きく変わってきている。今一度、どこまでの規模感の施設が必要なのか、関係者と再検討をおこなっていただきたい。関係者がどのように考えているかをしっかりと把握してからこの事業を進めるべきだと思うがどうか。

三木農林水産振興部長 大きく工事が遅れているのは事実なので、関係者の方にも説明をさせていただく機会をもうけていきたい。

本池 そのさいには関係者がどう考えているか、今の事業をどう見ているかの把握をお願いする。今回、国の手厚い補助金が、高度衛生化の事業を進める理由の一つになっているが、国の補助金が必ずしも地方のためになるとはかぎらないし、その縛りによって逆にしなくてもいい工事になったり、現場にあっていないということはこれまで経験があるかと思う。少なくとも、4億円の増額という事実についてその経緯には真摯に向きあっていただくと同時に、高価な市場建設よりもまず、下関の漁業の衰退状況に本腰を入れてとりくんでいただきたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です