広島市立北部医療センター安佐市民病院を視察しました。【視察報告】

広島市北部医療センター安佐市民病院(広島市安佐北区)

7月13日に文教厚生委員会の視察で広島市安佐北区にある広島市立北部医療センター安佐市民病院に行ってきました。下関市では、下関市立市民病院(向洋町)と下関医療センター(上新地町)を統合した新病院の建設が動いており、6月に基本計画が策定・公表されました。今後、設計・施工の事業者の選定がされ、基本設計・実施設計ののちにいよいよ建設が始まります。基本計画は下関市のホームページで公開されていますが、これに対しさまざまな意見が出ているのも事実で、こうした声を受けながら具体的な中身については調整がおこなわれていくようです。下関市民にとっていい病院にするため、先行事例を見るというのが今回の目的です。遅くなりましたがご報告します。

北部医療センター安佐市民病院とは

北部医療センター安佐市民病院は2022(令和4)年に旧病院(旧安佐市民病院)を移転し建設されました。広島市中心部から約15㌔離れており、電車や車で40分ほどかかる場所にあります。広島市内には広島市民病院(743床)、広島大学病院(742床)、広島赤十字・原爆病院(565床)など大きな病院がいくつもあり、JR広島駅新幹線口のそばに「高度医療・人材育成拠点構想」による860床の新病院建設が進行中です。

北部医療センター安佐市民病院は、移転前の旧病院をはじめ、近隣自治体の公立・公的4病院の再編・ネットワーク化の一環として整備され、広島県北西部、島根県南西部までを含む広範囲な地域の急性期医療を支えています。【「市内」から遠い、だから守備範囲が広い】【広島県北西部のさいごの砦】といわれるように、広島県北西部の救急診療、がん診療、多くの診療科の最新医療を地域住民に提供しているほか、高齢者救急を地域の医療機関と連携し対応しながら、日本の高齢者人口がピークを迎えるとされる2040年に向けたとりくみをしておられます。病院を運営しているのは、「地方独立行政法人広島市立病院機構」で、法人ではほかにも3つの病院を運営しています。

新病院建設にかかった費用は総額312億円で、そのうちわけは建設費が約220億円、土地代が約20億円、医療機器の整備費が約65億円で、残りが引越し代ということでした。市が企業債を借り入れ、返済は市と独立行政法人で半分ずつの負担になっており、すでに市の負担分は運営費負担金として法人に支払われています。

移転前の旧安佐市民病院は527床の病院でした。新病院は434床ですが、車で5分程度(3㌔㍍)の旧病院の場所に102床を残し、これは「安佐医師会病院」となっています。医師会病院には地域包括ケア病床、緩和ケア病床があり、安佐市民病院で手術等をしたのちすぐには自宅に帰られない患者さんは安佐医師会病院に転院しリハビリなどをして自宅に戻るという流れになっているそうです。そのため安佐市民病院は、在院日数が7・8日となっていて、これは国内の高度急性期病院で「一番短い日数」となっているそうで、地域の病院や医療を担う医師と連携して地域の高齢者を見ているということでした。

移転・建て替えの経緯

旧安佐市民病院は南館・北館で構成されていましたが、南館は1980(昭和55)年に建設されており、老朽化が進んでいたそうです。また、耐震基準を満たしていないことや、診療科の増設等による狭隘化が進み、新たな医療機器を導入することができないといった課題が生じたことから、2012(平成24)年、移転も視野に入れた病院の建て替えの検討を開始、2013(平成25)年には「現地建て替え」「移転建て替え」両案での基本構想が策定されました。

同年9月~10月にかけて地元説明会を実施(15カ所、参加者約1000人)したうえで、2014(平成26)年2月に移転建て替えを前提とする基本計画策定にかかる補正予算案を議会に提出しましたがこれを議会が否決。このとき賛否は同数だったそうですが、当時の議長が「議論が十分にされていない」と判断し、否決という結果になったそうです。

2015(平成27)年8月に市長による地元説明会が実施され、9月に旧病院の機能を一部残すことを含んだ機能分化の考え方として、「安佐市民病院の建て替えに伴う医療機能の分化整備について」を策定。同月、安佐市民病院の建替えを盛り込んだ病院機構の中期計画変更案を議会が可決しました。

「分化整備の考え方」には、広島市として、地域住民の思いに真摯に向き合いながら、安佐北区のまちづくりに資するため、

①JRあき亀山駅前には高度・急性期医療機能、災害拠点病院としての機能、へき地医療機関としての機能を整備すること、
②旧安佐市民病院北館には、日常的に高齢者等の地域住民が受診できる機能を整備すること、

 が基本方針として掲げられ、これに基づいた分化整備がなされました。

交通網や経営面には課題も

こうして広島県北西部、島根県南西部地域の中核的機能や役割を担う「北部医療センター安佐市民病院」が2022(令和4)年5月1日に開設となりました。病床数は434(一般病棟414床、精神病棟20床)、診療科目は33科となっています。「救命救急センター、ヘリポートを整備した高度で先進的な医療の拡充」「災害拠点病院としての機能の拡充」「県北西部地域等の病院支援と患者の受入の拡充」が担うべき医療の基本的な方向性とされています。

災害拠点病院として、免震構造の採用、病院1階部分(約1万5000㎡)をトリアージ・処置スペースとして使用することで約4000人の被災傷病者の受け入れを可能とするつくりになっています。感染症対策としても病棟に被災傷病者が上がらずに済むつくりになっていますが、面積が広いため、外来の高齢者が歩く距離が長くなっているということです。

交通網の整備

病院の移転にともなって重要になるのは交通です。下関市でも現在の下関医療センターや市民病院がなくなることには不安の声があり、高齢者をはじめみんなが安心して通院ができる交通網の整備が課題の一つです。

安佐市民病院の場合、JR可部線あき亀山駅に隣接して建設され、駅から病院入り口までの歩行者通路には屋根が設置されています。雨の日でもホームから濡れずに病院に行くことができる動線になっています。あき亀山駅はJR可部線電化延伸事業(可部駅から1・6㌔の区間の延長)で新設された駅で、もう一つの新設駅(河戸帆待川駅)の整備等あわせて27億円の事業費がかかっています。財源内訳としては、国が3分の1、市が3分の2です。

さらにバス路線も再編されました【㊤図参照】。複数の事業者が競合する区間もあり、広島市として、事業者間の調整、バス停設置場所の選定、バス待機場所の確保に苦労したそうですが、病院に乗り入れる路線が新規を含め増えています。ただ、高度急性期病院であるため、家族が車で連れてくることも多く、バスの利用は少ないのが実態です。バス運行の赤字に対しては市が事業者に補助金を出していて、その一部を病院も負担する仕組みになっています。病院としてもバスの利用を推進しているようですが、患者にも、病院に勤めている職員のみなさんにも使いやすい公共交通を整備することの難しさを感じました。病院スタッフのなかでもバス通勤は3%ほどにとどまっており56%が車で、来院や通勤のために924台の駐車場が整備されていますが、「患者用」「職員用」ともに不足状態にあるとのことでした。

病院の経営状況

計画時の収支のシミュレーションでは、はじめの二年間は赤字でその後黒字化する計画になっていたそうですが、開業以降赤字の状態となっています。計画通りにいっていない理由の一つが職員の人件費にあり、旧病院から病床数が減ったため職員も減る想定になっていたそうですが、実際は病棟が増え、看護師が減らない状況になって計画とは大きく変わってきたそうです。また近年の材料費、人件費が毎年のように上がるなかで黒字化にはいたっていません。また、法人では4つの公的病院を運営していますが、2024(令和6年)度の診療報酬改定により、昨年度は4病院とも赤字となり、資産を切り崩しながらの運営となっているそうです。今年の報酬改定でも物価上昇に追いついておらず、中東情勢の影響もあるなかで医療現場の厳しさは続いています。今年度より、広島市からの運営費負担金が増額となり年間約80億円になるそうですが、それでも厳しさは今後も続く見通しを語っておられました。

個室需要は想定を下回る

そのほか、計画で描いていたことと実態の差異という点では病床の個室化が挙げられます。同病院では50%を個室化したが、開業5年目の現状として個室のニーズが思ったよりも多くないとのこと。高齢者の方は個室ではなく多床室を望まれるようで多床室が足りなくなっている実情があるようです。多床室を望む人を個室に入れるようになってしまうため、本来有料であるはずの個室料金をいただくことができないということでした。

下関市の新病院の基本計画にも、「全室個室化が可能なレイアウトにより患者のプライバシーに配慮」「良好な療養環境を整備」となっていて、「時代的にも…」という言葉が聞こえてくるところです。容態にもよりますが、同室の患者さんとおしゃべりをしたい人もいるでしょうし、有料の個室を望まない人も多いと思います。こうした細かい部分についても、患者となる市民がなにを求めているのかという視点で再度見ることが大事だと思ったところです。最後にヘリポートにも上がりましたが、ヘリでの搬送は1年間に70~80件ほどあり、多いときはひと月10件ほどの搬送があるそうです。

下関市民に望まれる病院を

病院を運営している法人、行政の方々からお話を伺うことができ、下関市の新病院建設の今後を議論するうえでも大変参考になりました。人口規模も地域の実情も違うので、病院や行政として説明が難しいことがあるのだと思います。ただ、市民側からの目線として、地域から病院がなくなってしまうことへの不安や、交通網の整備に対する不安など共通する部分も多くあり、移転が決まるまでに市民と行政の間で相当なやりとりがあったことが伝わってきました。

北部医療センター安佐市民病院の移転・建設を含めた再編では、急性期を担っていた病院が診療所に変わったり、「急性期・慢性期」から「回復期・慢性期」に変わった病院もあります。今回、高度急性期・急性期を担う拠点病院の整備や交通網の整備について説明をいただきましたが、一方で広島市民の方々は今の状況をどう感じておられるのかというのは気になるところです。

医師の偏在や高齢化、看護師などの医療人材不足、人口減少、高齢化など課題は山積しており、根本には国が責任をもってかかわらなければ自治体だけで解決するものではないと思っています。下関市でも地域資源が急激に減っていくなかでの厳しさがありますが、市民が安心して暮らしていくために必要な病院とはどのような病院なのかを関係者の方々や市民のみなさんと一緒に考えていきたいと思います。説明をしていただいた行政や法人の皆様、ありがとうございました。

文教厚生委員会で安岡小と勝山小を視察しました。

建て替えが決まった安岡小学校2舎

5月13日に文教厚生委員会の市内視察があり、安岡小学校と勝山中学校に行ってきました。みなさんご存じのとおり、下関市は子どもたちが日々過ごしている施設の老朽化が深刻です。とくに小中学校は約60校ありますが、長年にわたって必要な維持管理や老朽化対策、更新がなされてこなかったことから、今になって施設の維持や更新をどうしていくのかが大きな課題になっています。今年3月に学校施設長寿命化計画が改定されていますが、下関市政の大きな課題であるこのテーマについて文教厚生委員会として視察することになりました。遅くなってしまったのですが、ご報告します。

安岡小学校 改修計画策定と早急な対応が必要

安岡小学校は市内でもっとも老朽化が進んでおり、危険度が高いといっても過言ではありません。とくに築71年の「2舎」は外壁の剥落が起き、危険カ所をたたき落としているため、校舎の壁面は【写真】のような状況です。昨年夏の大雨のさいには、この2舎の屋上から雨漏りがし、こどもたちの教材に被害が出ています。昨年12月、この2舎について建て替えの方向性が明らかになりました。その理由としては、昨年度に教育委員会がおこなった校舎耐力度調査により、安岡2舎は基準点を大きく下回ったことがあります。「長期間の使用に適さない」という結果を受け、下関市教育委員会は建て替えを決定しました。

来年度(令和9年度)に基本設計、実施設計に着手する予定で、その後は令和10年度に解体、11年度に建設の予定となっています(学校施設長寿命化計画より)。その間は、4舎正面の運動場にプレハブを建設することが検討されているようです。教育委員会は「単なる建て替えでなく将来のことを考えた設計にしたい」とのべておられ、どのような校舎を建てるのかは内部で協議中のようです。設計は来年度の予定で新校舎の完成にはまだ4~5年はかかる計画になっており、ここは子どもたちの安全のため少しでも早く進めていただきたいところです。

安岡小では2舎の建て替えとは別に、令和5年に解体した3舎の跡地に、「校舎増築事業」(以下、増築事業)としてプレハブ校舎(軽量鉄骨造2階建、延床面積800平方㍍)の建設が予定され、今年度の事業として動いています。これは現在の教室不足解消のためのもので、普通教室2室、特別教室2室、多目的室、相談室、放課後児童クラブ、トイレが整備される予定です。10年で4億円のリース契約で10年後には市の所有となり、その後も使っていくそうです。今年度整備し来年度に供用開始の予定ですが、増築の予定地は駐車場として利用されていて、新たな駐車場の敷地の確保も課題となっています。また、懸念されるのはイラン戦争の影響等で資材の高騰であったり、資材が入らない状況になることです。これは増築事業に限った話ではありませんが、今後の計画に大きな影響を及ぼすのではないかと思われます。

さらに、安岡小では老朽化が進む1舎(築57年)についても今後の方向性を決めるための校舎耐力度調査を実施する予定で、現在は委託業務の事業者公募の最中となっており、今後としては長寿命化大規模改修が計画されています。

以上のように、安岡では1舎、2舎、3舎(跡地)で改築、増築等の計画が動いていることになりますが、今はこれらがバラバラに動いています。そのことから、安岡小学校全体の施設の計画をたて、校舎や体育館も含めた施設の更新や維持管理を計画的におこなっていかなければならないと思っています。この全体の計画については「早ければ令和9年度に予算をとりたい」とのことで、そのために教育委員会のみならず、資産経営課(総務部)、財政課などと必要な協議をおこなっていくとのことです。

昨年12月に2舎の建て替えの方向性が決まったことはいいのですが、それから5カ月が経過しています。安岡の保護者や住民のみなさんからは「方向性はわかったが、その後なにも動きがない」「いつになったら危険な校舎が建て替わるのか」「早くしなければこどもたちになにかあってからでは遅い」という声が上がっているのが現実です。学校施設長寿命化計画の見直しにより、今後大規模改修の進め方を「学校単位」から「棟単位」でおこなっていくことになりました。であれば、なおさら安岡小学校全体を、いつ、どのように改修していくかの計画が必要ですし、そのうえでスピード感をもって改修を進めていくことが必要であると感じたところです。

大規模改修を終えた勝山中学校

安岡小学校を視察したのちは勝山中学校に行きました。

勝山中学校は、令和5年度~令和7年度にかけて長寿命化大規模改修工事をおこないました。長寿命化計画にもとづき大規模改修をした1校目となりますが、躯体以外の部分は全面的にリニューアルし、新品同様になっていました【写真】。

大規模改修した勝山中学校の外観

勝山中学校図書室

勝山中学校の大規模改修に要した費用ですが、

・工事請負費 18億8063万7000円(1舎=5億5423万6000円、2舎=7億136万2000円、3舎=6億2503万9000円)
・仮設校舎賃借料 1億4283万5000円
・設計業務ほか委託料 7109万1000円
・その他 2018万9000円
合計 21億1475万2000円

です。

この3年間のあいだに物価や人件費の高騰もありましたので、工事請負費は当初(17億九487万円)よりも8576万7000円増額となったそうです。

1年間に1棟の工事が進み、計3棟の工事が3年で終了しました。

校舎内を見て回らせていただきましたが、廊下も教室もトイレもとてもきれいで、先に視察した安岡小学校との落差を感じました。授業中であったため教室の写真はありませんが、案内していただいた教頭先生も、校舎がきれいになったことで生徒たちの「大切にしようという気持ちが育つ」といわれており、生徒の成長にとってもよかったと感じました。

大規模改修をした勝山中学校の校舎ですが、築52年がもっとも古く、教育委員会曰く「一番いいタイミングで工事した」とのことです。この「一番いいタイミング」とはなにかということですが、長寿命化計画では建築から50年を迎えるころに長寿命化改修をおこない、25年に1度は予防改修をおこなうことで、建物を100年もたせることができるとうたわれています。そういう意味で勝山中学校は「一番いいタイミング」であったということです。

ただ、下関市には築60年~70年を経過した校舎が多くあります。50年前後の校舎は大規模改修が適切かもしれませんが、60~70年以上も経過し老朽化が進む校舎をどうしていくかは別の話であり、同時並行で進めていかなくてはならないものだと感じています。

改築(建て替え)について

教育委員会は、今年3月の改定長寿命化計画で「長寿命化改修までに築年数が70年をこえる建物については、維持保全をおこない、適切な時期に改築する」と明記しました。改築=建て替えということですが、令和12(2030)年度までに実際に建て替えが計画されているのは安岡2舎だけです。しかし計画には、改築方向性が示されている校舎は安岡2舎を含めて8棟あります。「8棟」という数字ですが、長寿命化改修の対象を令和12年度推計の学級数が12学級以上の学校に絞っているためで、実際の老朽校舎はもっと多いことは指摘しておきます。ただ、それだけで見ても、豊浦小学校は4棟分が「改築」の方針になっているにもかかわらず令和12年までの計画は空白です。このペースでいいはずがなく、子どもたちの安全のために対応が急がれます。

下関市内の学校現場の実態ですが、老朽箇所の修繕や対応は、先生方や公務技師さん、学校支援課の方々が走り回ってしてくださっており、そのおかげで事故が起きずに保たれている状況です。雨漏りは通常になってしまっていますし、天井の崩落や窓枠の落下が起きたなどの学校もあり、現場の感覚としてはどの学校も「なんとかならないか」「いつになったら修理されるのか」という感情をもっておられる状況です。

そういうお話をお聞きしていると、勝山中学校1校の工事完了をもって「よかった」とはならず、もっとペースをあげてとりくむべき課題だと感じます。築年数が50年前後の長寿命化大規模改修をすれば新品同様になるということは伝わりましたので、他の学校もぜひ早急に進めていっていただければと思います。今のペースでは改修時期も逃してしまう校舎が出てくることが懸念されますし、なにより、子どもたちが学校で過ごすのは今しかないからです。

勝山中学校の工事は設計などを含めると実質5年かかっており、教育委員会も「今後はもう少し短縮できないだろうか」「古くなっていくものをどんどんやっていかないと間に合わない」との思いはもっておられることがわかりました。だからこそ、改修の進め方を変えておられますし、いかに早く進めていくかにシフトしておられるように感じます。

改定長寿命化計画では、予防保全(部分的な改修)についても「老朽化の実態にあわせて雨漏りや外壁落下の恐れがある施設を優先して改修する」としています。これら改定した計画のもとで学校施設の改善がどのように進んでいくのかを今後も確認し報告をしていきたいと思っています。

今後予算もかかることとは思いますが、委員会として現地を視察し必要性を共有できたことはよかったと思っています。

説明、案内をしていただいた関係者のみなさまに感謝申し上げます。

3月定例会の個人質問「学校体育施設開放の予約システム導入問題」についてのご報告。

 下関市議会3月定例会の来年度予算をめぐる個人質問(6日)で、昨年からスポーツ関係者のなかで大きな問題になっている学校体育施設の予約システム導入問題をとりあげました。スポーツ振興課は関係者の声は認識しつつも「問題ない」「今すぐ見直す必要はない」との見解を示しましたが、すでに起きている混乱を顧みることなくこのやり方を続けるなら市民の混乱は増すばかりではないかと思います。以下、個人質問の質疑要旨を紹介し、ご報告といたします。引き続き、皆様からのご意見をお待ちしております。

◇    ◇

本池 前田市長は施政方針のなかで「文化・スポーツの振興により交流の場を創出することで地域の活性化や交流人口の拡大を図る」とされ、その方針に沿って体育振興費1億4150万円、このうち社会体育振興育成業務には8192万円が計上されている。
 社会体育の振興と深くかかわって学校体育施設開放業務がある。この業務をめぐって下関市では現在、利用団体やスポーツ関係者から非常に厳しい怒りの声が上がっている。学校体育施設開放業務の事業内容とその目的を示してほしい。

田中観光スポーツ文化部長 下関市におけるスポーツ及びレクリエーションの振興のために、市立小・中学校の体育施設を学校教育に支障のない範囲内で広く市民に開放するものだ。

本池 学校開放をめぐっては、以前は各学校の利用団体でつくる体育推進運営委員会が受託しており、利用者は窓口である学校を経由して登録・利用申請をおこない年間の利用を決め、希望が重なったりしたときには話しあい、譲りあって利用がされてきた。これが業者による一括窓口に変わったのが令和6年度の利用分からで、来年度の利用分から予約システムによる予約と利用調整が始まっている【表①】。昨年12月に開いた説明会の参加者合計とどのような声が出たのか示してほしい。

田中部長 市内5カ所で利用団体やスポーツ関係団体等を対象に説明会を開催し、317団体、454人に参加いただいた。おもな意見としては、既存団体の活動を優先してほしい、備品や消耗品の管理をどうするのか、1カ月ごとの利用予約では活動の維持が懸念されるといった指摘がある一方、空き状況が明確化されることで活動場所を確保しやすくなったという意見もいただいている。

本池 私も1カ所に行ったが、かなりの意見が出ていた。その他の会場の様子も聞いたが、さらに激しかったようだ。その声を受けながらも2月1日には4月利用分の申請・予約【図②】が始まった。まず登録団体はいくつになったのか。

田中部長 4月分の抽選実施日である2月11日時点で登録団体数は485団体だ。

本池 2月11日の抽選結果通知で利用希望が叶った団体数とそうでない団体数は?

田中部長 485団体のうち428団体が申し込み、利用希望が1件も叶わなかった団体は23団体あった。

本池 1件でも当選した団体が残りの405団体だ。全体の申し込み件数と当選件数、落選件数を示してほしい。

田中部長 8223件の申し込みがあり、当選は7018件、落選は1205件。当選率は85・4%だった。

本池 市として一回目の抽選結果をどう評価しているか?

田中部長 相当の利用団体が希望する活動場所を確保できており、落選した団体も空き状況を見て継続的に予約している。システム導入前の活動状況と比較しても大きな差異は見受けられないので、概ね想定通りの結果であると考えている。

本池 私は1件も当選しなかった23団体がその後どうされているのか本当に心配している。そして405団体についても、複数件申請して1件でも落選すれば関係者がどんな苦労をされているかをご存じないから「概ね想定通り」といわれるのだと思う。予約システムの導入の話が浮上して以来現在まで関係者からたくさんの声をいただき、なかでもとくに重大だと思われる点について質問する。

一つ目は活動拠点が実質的に失われることによる活動の不安定さだ。たとえばどこかのチームに入って練習してみようとなったとき、「どこで、何曜日の何時から練習しているか」が一番大事な情報になる。でもそれがいえない状況だ。とくにスポ少やクラブチームはこの情報を募集チラシ等でも発信されている。それがあるから募集も申し込みもできる。「曜日が不確定では入れない」という声もあるし、指導者側の声としては、月謝をもらっているので「場所が確保できないために練習できない」は許されない。だからといって曜日や場所を変えることができるだろうか? 子どものいるチームだったら子どもたちの放課後や土日の過ごし方が大きく変わるし、送迎する保護者の予定にも影響が出てくる話だ。

指導者も仕事を持ちながら、子どもたちの成長に携わっていただいている。「場所」も「曜日」も社会体育に参加するための大事な条件だ。だからこそ関係者が必死に施設の確保に動いておられる。社会体育を支えて下さっているみなさんのことを想像しているだろうか? はっきりいえば、関係者になにをさせているのかという話だ。

 スケジュール【図②】を見ると、1カ月中会場が確保できるかどうかに追われ、すぐに次の月の予約が始まって、年がら年中、朝も夜も考え続けなければならない。この状況はスポーツ振興の観点から見てどうか。

田中部長 本業務においては利用団体の活動すべてに対し、特定の曜日や時間を毎回必ず担保することは難しいということをご理解いただきたい。そのうえで市民のだれもが身近にスポーツを親しめる環境を整え、さらに公平性を担保することはスポーツの振興につながると考えている。

本池 次に、システム導入のうたい文句であった公平性の質問だ。私自身、公平性といってこのようなシステムを強引に入れること自体に疑問を持つ立場だが、市がそういうからには本当に公平にするのか見なければならないと考えている。

市内中心部の競争率の高い学校では、地域のスポーツ団体の利用日である週2日を学校が非開放にしてしまって、他の団体が予約できる枠すらない状態になっていると聞いた。このことは認識しているか。しているのであればどのような対応をしているのか。

田中部長 当該事案は学校長が状況を踏まえて優先利用の取扱を判断して開放不可日とされているものであり、特段の対応はしていない。

本池 学校任せでなにもしていないといっているが、そういう対応が社会体育の振興になっていると考えるか。

田中部長 対応には問題がないと考えている。

本池 「公平」だと考えているのか?

田中部長 この状況であれば公平であると考えている。

本池 そのかかわりはどうかと思う。私は、スポーツを通じた交流や、人間関係の希薄化等をかかえる地域社会の再生、心身の健康の保持増進という視点からも、地域の方々の活動もまた大事だという立場だ。しかしそれはみんな同じだ。だからこそ譲りあって気持ちよく使わなければならない。そうした利用をしていく働きかけを社会体育を所管するスポーツ振興課はしなければならないはずだ。

スポーツの振興のためにさまざまな施策があるし、例えばこのたびの予算でも賞賜金など選手の活躍を称えるものも含まれている。そういう結果も日頃の活動あってのものではないか。もっといえば社会体育を支えて下さっている関係者のおかげだと思う。この学校で起きている事象に対し、一度でも学校や利用団体と膝をまじえて話をしているか? 教育委員会に話をしただろうか? していない。「学校が決めたこと」といって目の前の問題から逃げているだけではないだろうか。

その結果、練習場所からはじき出されるチームが出て、団体同士の対立が深まり、分断されて、学校や窓口には苦情が押し寄せている。終いには学校をどう抱きこむかみたいな話にならないだろうか。今の対応は学校を立てているように見えて実際は放り投げであり、学校関係者をどんどん苦しい立場にしている。

2年前、学校現場も社会体育の実情も無視して調整業務を市内一括で民間業者に放り投げたことで混乱が生じた。やり方を変えた背景には社会体育の窓口であった「教頭先生の負担軽減」があった。ここまできて、その達成度はどうか。 続きを読む