12月議会の一般質問「新下関市学校給食センターについて」のご報告。

下関市議会12月定例会では、来年4月から稼働を迎える「新下関学校給食センター」について質問しました。下関市は、彦島にある南部学校給食共同調理場の老朽化をきっかけに、下関市教育委員会が小中学校22校・8000食分を集約した大規模センターを建てる計画をうちあげ、さらにその運営は民設民営にすると決定しましたが、関係者を排除したかたちで進んでいるために、現段階でも未定で学校現場に丸投げされていることが多くあります。そうした学校現場の実情をとりあげ、教育委員会に対して安全な給食提供のために必要な体制整備と、現場の声に耳を傾けることを求めました。以下、質問と執行部の答弁の要旨を掲載し、ご報告とします。

新下関学校給食センター(2023年12月)

本池 南部学校給食共同調理場の老朽化を理由にした民設民営の大規模調理場がいよいよスタートしようとしており、学校現場をはじめ、さまざまな関係者が準備にあたっておられる。そうした方々の尽力で稼働まで体制はできていくのだろうが、安全提供の側から不安の声がまだまだ多いのが実際だと思っている。6月議会にひき続き、一つ一つ確認させていただく。

(1)受配校における給食業務について

本池 まず、センターからの給食の受配校において最大の問題といっても過言ではないのが栄養教諭の配置だ。確認だが、自校式で栄養教諭が配置されている学校からは原則的に栄養教諭はいなくなり、現状が自校式の学校は調理員もいなくなるということでよいか。

藤田教育部長 栄養教諭は山口県教育委員会が配置しており、配置校は人事のなかで検討していくことになる。現在の単独調理校で新センターに移行するところは調理員は配置しない。

本池 この22校は①栄養教諭がいて自校式の7校、②自校式だが栄養教諭が未配置である4 校、③南部・中部のセンターの受配校である11校にわけられる。それぞれの実情に応じた不安があるが、もっとも大きな変化をともなう①の学校を基準に聞く。

これまで食数報告や発注業務、アレルギー対応などの給食業務をすべてしていた栄養教諭が原則的にいなくなるうえ、調理員がいなくなる。学校給食業務の内容は多岐にわたる。とくに大変なのが食数報告だ。そして牛乳・パンの発注、アレルギー対応、食数変更や短縮日程への対応、給食費の管理、受取従事者への対応、配膳室の管理などがある。業務のなかには保護者とのやりとりも含まれているし、献立表やぶちうま食育だよりなど配布資料関係の仕事もある。栄養教諭が配置されていた学校では栄養教諭が一手に担っておられたので、残った先生方が分担することになる。

現状の提供体制の違いから学校にかぶさる負担も違うので空気感はさまざまだが、総じて、子どもたちの安心・安全のためにも、栄養教諭の配置が求められていることはいうまでもない。ただ、栄養教諭の配置が新年度からどうなるのか、学校現場も栄養教諭自身もわからない状況がいまだに続いている。6月議会で「栄養教諭は県が配置するのではっきりは申し上げられない」といわれていたが、いえることができたのか。センター規模に応じた基準での「3人」が配置されるのか、その場合どこに配置されるのか、答えてほしい。

藤田教育部長 県教委が配置することであり、人事異動の発表がない限り正確なことを答えることはできない。必要な人数が適切に配置されるよう要望・協議して参りたい。

本池 いつ発表されるのか。

藤田教育部長 県の人事発表をもってとなる。

本池 少し話はそれるが、今年度で確実に異動となる栄養教諭に対して、今後どこに行くようになるのかといったことは知らせなければならないと思う。今いる学校からは離れなければならないが、来年度からの職場がどこになるのかわからない状態に置くのはいかがなものか。一刻も早く当事者である栄養教諭に伝えていただきたいと思うし、県の人事の問題だというのであればきちんと県にいっていただきたいが、どうか。

藤田教育部長 県としっかり協議していきたい。

本池 話を戻す。6月議会でアレルギー対応を中心に、なぜ栄養教諭が必要であるのかは伝えた。来年度から先生方の負担が急増することになるので、給食業務を専門的におこなう人員が必要であると考える。県費での栄養教諭の配置がなされない場合、市費で支援員など配置できないか。

藤田教育部長 栄養教諭は市が人事権を持っていないので任用できない。支援員については検討はしているところだ。

本池 予算要求はしたのか。

藤田教育部長 検討している。

本池 教育部長は6月議会での答弁で「しっかり対応するよう体制づくりを検討している」といわれた。「しっかり対応する」とは学校現場に必要な人員を配置するか、負担を減らすかの二択だと思うが、その中身を教えてほしい。

藤田教育部長 マニュアルづくりをしっかり対応しているところだ。人員体制については検討をしっかりやっている。

本池 給食業務を担うことで負担が急増することが一般の教員にも伝わっているのか。その説明はどのようにしているか。すでにしているのであれば、だれが、何校に説明したのか等の実績を示してほしい。

藤田教育部長 9月8日に小学校の受配校、9月29日に中学校の受配校を対象に、ワーキンググループで検討した食物アレルギー対応のマニュアルや給食全般の手引きについて説明した。参加者は校長、栄養教諭、養護教諭、給食担当教員、事務職員だ。11月13日、14日に食物アレルギー等にかかわる実務者研修会を実施した。各学校で保護者への説明や対応が始まることから、基本的な手順や様式の説明とともに、これまで学校からいただいた質問にも回答し、実務者の理解度を深めた。今後は来年1月に給食全般の手引きに関する実務者研修、2月に給食費など経理に関する実務者研修会を実施する予定だ。

本池 校内での認識一致や説明を市教委ではなく実務者研修会に参加した先生が中心になってするという理解でよいか。

藤田教育部長 研修会や説明会を通して学校内での担当者への情報共有はできていると考えている。実務者研修会は録画したものを各学校で見れるようにしている。

本池 「不明な点について説明を求められれば出向く」という姿勢は今後も変わらないか。

藤田教育部長 まずは学校内で情報共有していただき、わからない部分があれば、説明に伺うし、適切に対応したい。

本池 求められたら直接説明に行ってほしいと思う。これまで保護者への説明に関しても、学校現場の声を伝えたときも、一貫して市教委は「求められれば説明に行く」といってきた。しかし、結局保護者に対しては説明動画を作成したのみで、学校現場から説明を求められれば今度は学校向けの動画をつくったということだ。いったい何本の動画をつくるのかと思うが、それで「説明したこと」にはしないでいただきたいと申しあげておく。

学級閉鎖の場合は…

本池 学校現場の負担急増について具体的に聞く。新センターへ移行後、インフルエンザ等により学級閉鎖するケースの場合、給食を停止するために学校側がしなければならないことはなにか。 続きを読む

【視察報告】「住みたい田舎ランキング」1位の今治市に経済委員会の視察で行ってきました。

7月3~5日の日程で、経済委員会の視察で愛媛県今治市と愛知県常滑市に行ってきました。大雨の時期と重なったこともあって大変遅くなりましたが、今回、「住みたい田舎」ベストランキング1位(宝島社『田舎暮らしの本』2023年度版)にもなっている今治市の視察内容を報告します。

今治市の視察のテーマは、「今治市の食と農のまちづくり~地産地消と食育のすすめ~」です。数年前から委員会視察で今治市を希望しており、その理由は今治市が学校給食を中心にした地産地消のとりくみの先進地で全国的注目を集めているからです。下関市では現在、学校給食調理場の老朽化にともない、22校を集約した民設民営型の大型センターの建設が進んでいますが、今治市は真逆で、大型センターから自校式の単独調理場や親子方式の小規模調理場への転換を進めてきた経緯と実績があります。なぜそうなったのか、学校給食を中心にした地産地消の推進がもたらした効果はどうなのか、課題をどのようにクリアしてきたのか。これらのことを知り、下関市の行政に反映できればと思いながら視察に向かいました。

食と農のまちづくり全国に先駆けた取組

今治市では市役所で農林水産課と学校給食課の職員の方々から説明を受けました。

今治市は全国に先駆けて30年以上前から食と農のまちづくりのとりくみをおこなってこられました。その始まりは1982(昭和57)年1月の市長選挙で、老朽化した給食センターをどうするのか、ということが争点になったことに始まります。大型の給食センターの建て替えをかかげる現職と、自校式調理場を推進する新人候補が立候補し、新人候補が当選しました。それから、新市長を支持した今治立花農協の方々が、「自分たちがつくった安全な食べ物を子や孫に食べさせたい」と、学校給食に地場産野菜や有機農産物を導入するよう求める陳情を提出されました。

その後、徐々に自校式調理場への転換が進むなか、1988(昭和63)年3月には、今治市議会が「食糧の安全性と安定供給体勢を確立する都市宣言」を決議します。宣言には、輸入食料に含まれる残留農薬や化学肥料の使用等への懸念から、「市民の健康を守る食生活の実践を強力に推し進める」ことが明記されています。

この宣言を受け、1999(平成11)年からは学校給食米を今治産の特別栽培米(農薬・化学肥料を50%以上削減)に切り替えたり、2001(平成13)年9月には地元産パン用小麦を使ったパン給食を開始。さらに翌2002(平成14)年には学校給食用豆腐の原料大豆の今治産への切り替えが始まります。

2005(平成17)年には12市町村が合併し新たな今治市となりますが、新市議会において「食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」【写真】が決議され、2006(平成18)年には「今治市食と農のまちづくり条例」が制定されます。この条例が今治市の食と農のとりくみの根拠となっており、時代の変化等あるなかで現在も食と農のまちづくりがおこなわれています。

「今治市の食と農のまちづくりのとりくみは、約40年前の消費者運動や農民運動などの市民活動に端を発しており、行政主導ではなく市民のとりくみとして発展してきました」「市民の活動が発展し、議会と連動し、それが流れとなって今に至っています」と、誇りを持って語られる職員さんの姿勢にも大変感銘を受けました。

条例の3本柱 有機農業の推進が特徴

今治市食と農のまちづくり条例の3本柱は「地産地消の推進」「食育の推進」「有機農業の振興」です。食と農に関するまちづくりのビジョンを明確にし、市の責務や、市民、生産者、食品関連従事者の役割を明確化し、具体的なとりくみがおこなわれる根拠となっています。

なかでもこの条例の大きな特徴としては、有機農業の推進と有機農産物の消費拡大を明確に位置付けていることで、「有機農業の推進」の障害となる遺伝子組み換え作物の栽培を事実上規制していることです。

学校給食センターから自校式へ

この3本柱の中心にあるのが学校給食です。先述したとおり24小中学校(2万1000食)分を提供していた大型センターから分離し、現在は21の調理場(自校式や親子方式などの小規模共同調理場)で1万3000食を供給しています。

食材についても地産地消を推進し、単独調理場への切り替えを契機に地元産農産物を優先的に使用するようにしてこられました。現在は今治市産の野菜の使用が約50%(重量ベース)を占めており、遺伝子組み換えとわかる食材の使用はおこなっていません。また立花地区の3つの小学校(鳥生小学校、立花小学校、吹揚小学校)には、有機農産物の導入がおこなわれています。有機農産物の使用の割合は令和3年で36・7%。現在は島しょ部でも、自然農法・有機農法で農業をやりたいという移住者の方々が増えており、こうした方々が生産された野菜等を使った「給食の日」もおこなっています。

給食の食材 コメも小麦も地元産

また市内の小中学校すべてで農薬・化学肥料を50%以上削減した今治産の「特別栽培米」がほぼ100%導入されており、「搗(つ)きたて」「炊きたて」で提供しています。ここで気になるのは価格です。特別栽培米はどうしても通常のお米より高くなってしまいますが、給食食材への導入については差額を公費で補填しています。令和5年度の予算は590万円です。 続きを読む

12月定例会での一般質問『2、下関の学校給食』のご報告です【文字おこし】

一般質問でおこなった『2、下関の学校給食』の質疑(要約)を掲載いたします。下関市では彦島にある南部学校給食共同調理場の建替え計画が進んでいるのですが、同時に、今現在自校方式で給食をつくっている学校も再編し、新調理場の受配校に加える計画になっています。ところが、このことについて、保護者にも学校にも、給食にかかわってくださっている方々にも伝わっておりません。今回の質問は、そのような声をうけておこなったものです。ぜひご覧いただき、質問やご意見をお寄せください。

 

南部学校給食共同調理場

2、下関の学校給食について

本池 次に、小・中学校の給食について質問する。大きくは、南部学校給食共同調理場の老朽化にともなう建て替え、学校給食調理場の再編計画についてだが、文教厚生委員会でも報告がありそこでもいくつか質問させていただいたし、先日の林議員、村中議員の一般質問のなかでも明らかにされた通りだ。学校給食をめぐっては、献立作成、食材の生産、集荷、調達、配送、調理など多くのみなさんがかかわってくださり、自校給食であれ、センターであれ、日々、子どもたちに安心でおいしい給食を提供してくださっています。しかし、その給食の提供体制が変わることが保護者や学校側に認識されておらず、ここ数か月のあいだに「新調理場ができると聞いたが、民営化するのは本当か」「自校式で温かい給食が食べられているのに、それがなくなるのか」「民営化すると食材はどうなるのか」といった声を頂いている。

 委員会の質問では、この度の施設が民設民営であることから、「業者が決まり、仕様が固まってからするという説明がなされ、その前段階の説明は「要望があればする」ということでした。しかし、現段階で決まっていることとして、新下関市場の場所に8000食のセンターをつくること、民設民営であること、自校式の学校の再編も含んでいることがあります。この3点については施設の中身に関係なく、保護者や学校に対して説明すべきだと申し上げている。ここで質問だが、これまでこの計画について、誰に対し、何回説明をしてきたのか答えてほしい。

徳王丸教育部長 文教厚生委員会で合計8回、今年4月の文教厚生委員会の勉強会で事業内容と進捗状況を説明。教育委員会の定例会で7回、校長会や組合など5つの団体に2回、PTA連合会にも2回。その他、市民の方からのお問合せにも丁寧に答えている。

本池 今おっしゃられた団体に対して、どの段階まで説明しているのか?

徳王丸教育部長 文教厚生委員会では毎定例会ごとに詳細に報告している。

本池 それが実際に保護者や現場の栄養士・調理師に伝わっていない。だから今、疑問の声が上がっている。今回の調理場建て替え・再編計画にはさまざまな問題が絡んでいることは承知している。南部調理場の老朽化、自校式調理場の老朽化、子どもの減少、市の財政難などいろんなものが絡んでいるのは承知している。しかし先ほどからいっている、新下関市場に8000食、民設民営、自校式の学校の再編を決める前に、「これからの学校給食をどうするのか」といった関係者を交えた協議が必要だったのではないかと、この間のみなさんの声を聞いていると思う。ここで質問だが、今市が計画しておられる給食調理場の再編によって、得られるもの、失われてしまうものはなんだと考えておられるか、また子どもたちにとってベストな給食提供の形態はなんだと考えられているのか、教えてほしい。
 
徳王丸教育長 新調理場の整備により得られるものとして、衛生基準に適合した施設で給食ができるようになる。高度な衛生管理手法のHACCP対応が可能になる。アレルギー対応給食の専用調理施設の整備ができるという部分が改善される。自校式から受配校になることにより学校行事への対応は難しくなる。

本池 ベストな給食の提供の形態はなにか。

徳王丸教育部長 衛生管理の改善が図られることがベストな給食が提供されることにつながる。

本池 改めて給食について考えてみるうえで、下関市内外の教育に携わっておられる方の声をきいたが、美味しさに関しては自校式の上をいくものはないとみなさん共通しておっしゃっていた。また、学校内に調理場があることそのものが子どもたちにとって大きな影響をあたえている。また、将来子どもたちが生活のなかに正しい食をとりいれられるよううに、給食を生きた教材として使うことがやりやすいのもまた自校方式だと聞いた。学校行事等の変化に対応できる、食材調達に関しても小回りが利くという利点があると聞いている。対してセンターでは、先ほども衛生面や安全面からの良さはあるでしょうが、子どもたちにとってどうかというところではベストは自校だ。そういう意味で下関は多く自校方式が残っており、子どもを育てる環境としては非常に優位であるということがいわれていた。
 子どもの成長にとって非常に優位な自校式だが、もう一つ、現在における問題として、食の安全性への関心も高まっていることがある。林真一郎議員の質問さいに食品の基準がないという話が出たが、ないのであれば独自で食材の品質にかかわる基準をつくるべきだと私も思っている。というのが、今、食品があらゆるルートで入ってくるようになっており、安全面・栄養面から考えても不安なものが出回っていることに保護者は非常に注視されているからだ。地場産食材はもちろん、より安全な有機食材の導入を求める要望があるのですが、こうした問題意識に対する教育委員会の見解をお願いする。

児玉教育長 先ほど質問のあった、ベストな給食の提供形態は自校方式かもしれない。ただ、教育委員会が果たすべき第一の役割は、安全な給食を確実に子どもたちに食べさせることだと認識している。そのためにセンターが必要であればセンターも導入したい、自校式で残すところは残したい、そういうバランスを保っていくために新しい共同調理場が必要だと考えている。

本池 地場産食材の導入、もっといえば、より安全な有機食材の導入を求める声があるが、そうした問題意識に対する教育委員会の見解をのべてほしい。

児玉教育長 地場産食材の使用については可能な限り実現したいと考えている。自校式であると食材納入業者に負担がかかる、センターでやると大量に必要になる、そういったところをどうバランスをとっていくのか、献立をどうするのか、そういう問題はこれから検討していくべきだと思っている。有機栽培や無農薬の野菜については現時点では調達可能な野菜品目や数量なども不明で、実際に学校給食に使用できるか不明。今後、これらの野菜を提供できる生産者があらわれ、必要な種類と量を学校給食に提供いただけるのであれば給食用食材として献立に活用することを検討したいと考えている。

本池 検討していただけるのはありがたいが、そうなると8000食規模にしてしまうことでその実現はさらに遠のいてしまうのではないか。周南市の給食センターを視察したさい、運営している民間企業の提案として、給食の残菜を肥料にして有機農産物を生産し、それを給食に使うという試みをされており、すでにとりくまれているが、その実現の見通しを聞きたとき、4000食の大規模ではなかなか難しいというお話を聞きこれは教訓だと思った。市内の農家も高齢化しており地場産食材の確保も難しい。有機農家はもっと難しい。そのなかでやろうと思えば計画的にやらなければならないし、産業として育てていかなければならないが、一気に多量を確保というよりも小規模から始めていくしかないのではないか。その場合、農政のかかわりが不可欠だと思うが、地場産農産物を学校給食に多くとり入れていくために、農林水産振興部としてとりくんでいることを教えてほしい。

渡壁農林水産振興部長 より多くの地場産農産物を取り入れてもらうために、教育委員会、学校関係者、青果物の取扱事業者等で構成される地場産農産物学校給食連絡会に生産者団体であるJA山口県とともに出席し、地場産農産物の使用量が増えるよう、生産量等の情報提供に努めている。また、学校給食の食材として市内で生産量の多い農産物だけでなく、子どもたち本市の農業に興味をもってもらうためにハナッコリーや垢田のトマトなど、市内の特色ある農産物を提供している。今後も利用拡大に向けてJAと連携し、本市多妻の農産物のの生産振興をはかっていきたい。

本池 ここで学校給食を中心にした有機農産物の生産で先進的なとりくみをされている今治市の例を紹介したい。9日の田中議員の質問のさいには千葉県いすみ市に触れられたが、今治市も先進事例の一つだ。今治市では1980年代から有機農業のとりくみを始めておられ、その契機となったのが、1万9000食分を作っていた大型給食調理場の建て替え計画だったそうです。保護者や農業者が地元産の安全な食材使用と自校方式による手作り給食を求めて運動を展開し、そのなかで誕生した新市長により、大規模調理場から自校調理方式への転換が進み、2000年に市内全部の学校が、自校方式か2~3校で構成される共同調理場への切り替えになったそうだ。こうした流れのなかで昭和63年には、今治市議会が「食糧の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」を決議し、そのもとで学校給食への有機農産物の導入や、地元産の農産物や加工品を地道に増やし、地産地消のとりくみを進めてこられた。そのことには理由があり、今治市には小規模農家が多く、産地間競争では大規模産地には勝てないということがあり、しかし逆に、気候や地理的条件から比較的どんな作物でも生産できるという強みがあったため、同市の農業を守り振興させていくために、地域内循環を目指したのだそうだ。

先の市議会の都市宣言は合併後も引き継がれ、この宣言を行政が受け止めつくられたのが「今治市食と農のまちづくり条例」だ。全会一致で可決されているが、この条例には、地産地消の推進、食育の推進、有機農業等の推進が規定され、さらに第10条ほかには遺伝子組み換え作物の栽培許可に関する規定があり、市長が認めたものでなければ栽培してはならないようなしくみがつくられている。今治市ではこの条例のもとで農林水産業の振興、食の安全の確保、地産地消を進めており、学校給食もしっかりとそのなかに組み込まれている。安全な食糧生産によって市民の食を守り、学校給食の導入で子どもたちの健やかな成長を促し、後継者を育成し、農山漁村の果たす役割まで明記して、豊かで住みよい、環境の保全に配慮した持続可能なまちづくりをおこなっている。

給食は教育委員会の管轄だと思いがちですが、そうではなく、やり方次第で大きな可能性を秘めている。その点自校式が多いことは強みだ。そこに戦略的な食に関するとりくみを入れていけば、安心・安全への関心が強くなっている今だからこそ、若い子育て世代の定住を促進するものにもなりうるのではないか。目の前の老朽化の問題は深刻だが、子どもたちの成長を含めてどんな下関市にしていきたいのかということに直結するものだと思うが、前田市長はどうか。

前田市長 いいお話をいただいたが、食の安全と、農業の跡継ぎ問題等々、下関がかかえる問題たくさんありますから、総合的に考えてベストを目指していきたい。 

本池 地産地消を進めるというとき、より生産者に近い農業振興課が深くかかわって、それこそ横の連携で、地場産農産物を増やす努力をしなければならないと思う。そして学校給食の提供形態も、地産地消をより早く実現しうる形を考えていかなければならないし、そのために、ぶつかっている問題については先に決めてしまう前に保護者や市民になげかけ、「下関の子どもたちの給食をどうするか」「下関の未来をどうするか」をテーマに、市民の熱意と知恵を借りるときだと思う。新型コロナで明らかになったが、すでに地産地消、地域内循環の必要性に気が付いている市民はたくさんいる。ある方が、「安全で災害に強い食糧供給は、コンパクトな地産地消に活路がある」と語っておられたが、市民を交えた活発な議論をすることを強く要望する。