9月議会一般質問「水道料金の値上げについて」のご報告。

先の9月議会で、下関市で来年4月に予定されている水道料金の値上げについて質問しました。急激な人口減少が進むなか、全国の自治体で水道事業が困難になっており、下関市も事業の赤字を理由に水道料金の値上げに踏み切ろうとしています。物価上昇のなかで市民生活は厳しさを増しており、誰もが切り詰めた生活をしている最中にです。今議会では8議員が水道料金にかかわる質問をしましたが、それほど市民の関心が高い問題です。ハコモノ開発に何十億円も注ぎながら、安易な料金値上げをするのではなく、市民生活を守るために市政の抜本的な見直しが必要です。以下、執行部との質疑の文字起こしを掲載し、ご報告といたします。今後とも忌憚のないご意見をよろしくお願いします。

本池 水道料金については今議会で8人の議員がとりあげており、それほど市民への影響が大きく重要な問題であるということを重く受け止めていただきたい。上下水道局の説明内容は来年4月から、水道料金が平均20%上がるというものだ。そして4年後にまた値上げされ、現行と比較し約4割の値上げがおこなわれるというものだ。8月1日~8月8日にかけて水道局が市民説明会をおこなっているが、この目的はなにか?

伊南上下水道局長 料金改定の検討状況を知っていただくこと、料金改定の必要性を理解していただくことだ。

本池 参加状況は表のとおりだ。この人数を水道局内ではどのように評価をしているか。

水道局長 一部の地域では参加者がとくに少なかったり、いなかった地域もあった。周知についてはもう少し工夫することができたのではと考えている。

本池 私も2カ所の説明会に行ってみたが、参加者が少ないだけでなく水道局関係者をどちらでも見かけ、いわゆる「さくら」のような雰囲気もあったのだが92人のうち純粋な市民の参加は何人か。

水道局長 確認していない。

本池 ほとんど市民参加なき説明会であったと思う。豊北町などは参加者ゼロで中止になった。地域性から考えても信じがたいものがある。具体的にどのような周知をしたのか?

水道局長 市報の7月号でお知らせをした。6月下旬に水道局のホームページに掲載し、7月中旬に水道局のSNS、下旬に市のSNSに掲載した。各開催場所で開催1週間前にチラシを配布した。

本池 市報(7月号)だが小さすぎて誰も気が付かないし時期も早すぎる。8月号に載せてもよかったし、ホームページも新着に押し下げられていくので再掲しても良かったと思う。豊北町では一昨日にやりなおしの説明会があった。自治会長を対象に呼びかけられたそうだが、たくさんの参加があり相当な意見が出た。まともに呼びかければこれほど来られるということだ。それを市内8カ所でされていれば今のような状態にはなっていなかったのではないか。市民が水道料金の値上げについて理解していると思うか。

水道局長 参加された92名の方にアンケートを実施し、アンケートの回答者76名のうち72名が「理解できた」と回答している。一定の成果はあったものと理解している。

本池 参加者は理解しているということだ。一番最初に確認した説明会の目的は達成されたか。

水道局長 参加者のアンケートによれば、市民説明会の目的とすれば一定の成果は上がっている。

本池 市民全体が理解しているのかといっている。そもそも周知が行き届いていないなかで、来た人だけの評価をもって達成されたというのは違う。「周知については工夫ができたのではないか」といわれているが、その後の行動が市民に知ってもらおうという行動になっていない。今後10月に第3回経営審議会をおこなって答申を出し、12月に条例改定というスケジュールになっているが、これで市民に説明をしたことにするのか。

水道局長 料金改定は市民生活に影響を与えるということもあって、市民のみなさまのご理解が必要だと考えている。その手法として市民説明会を開催した。それだけでは十分ではないと思うのであらゆるSNSを活用して周知をかけ、市報を活用して分かりやすい説明に努めていくということだ。

本池 きちんと周知をすればたくさんの市民が来ることは豊北の事例で証明されたと思うが、今のままでは市民の多くがなにも知らないまま料金改定がされることになる。水道事業が厳しくなっていることは理解するが、なおさら市民に正しい情報を伝え、一緒に水道やインフラ整備の重要さについて考えなければならないのではないか。まともな周知をせず、説明会を終えたことにするのでは市民は納得しない。説明会のやりなおしを求めるがどうか。

水道局長 市民説明会は周知の重要な一つの手法だが、それだけでなく、SNS・市報、あらゆる情報とあわせてしっかり周知をはかっていきたい。その手法の一つに市民説明会をおこなったが、一部の地域で参加者がいない状況があったのでフォローして進めている。

本池 一部ではなく、ほとんどの会場で参加者が少なかった。これについてやり直しをしないのかと聞いている。検討するのか、しないのか?

水道局長 市民説明会は一つの手法なので、あらゆる手法をもってみなさんのご理解をいただけるよう努める。

本池 検討しないのだろうと思う。

参加者ゼロで中止となった豊北町では、住民の要望でやり直しの説明会がおこなわれ、多くの方々が参加されました(9月22日)

値上げの影響 ろくに説明もせず実行

本池 説明内容について触れていく。すでに指摘されているが、説明資料は、「水道料金を値上げするしかない」ということに徹した資料だ。水道料金が家計に占める割合は「ガス料金の半分以下」「電気代の5分の1」「飲料水として考えるとペットボトル水の320分の1」とか、市民からすれば、だからなんだという話だ。普段から水道水を使ってもらうためにこれをいっていくならわかるが、値上げを呑ませるためにいうことではないはずだ。企業会計の仕組みについて突然いわれても理解できるわけがなく、もしもこれを本気で考えたのであれば、誰に対し、なにを伝える説明会なのかを一旦整理したほうが良い。

値上げの理由は、「人口減少などによる料金収入の減少」「近年の急激な物価・人件費の上昇」「老朽化した施設・管路の更新や耐震化の本格化」といわれている。要するに、令和8~11年の総括原価(事業の維持・運営に必要な費用)が約232億円、現行の料金収入見込みが約193億円、不足額が約20%にあたる39億円。これを、20%の料金値上げによって回収するという内容でよいか?

水道局長 総括原価は232億円、現行の料金のままだと収入見込みが193億円、不足額が39億円で間違いない。

本池 232億円に対して現行料金収入193億円は約83%で、不足分39億円は約17%になるが、もしも【図】をもって値上げするのなら、20%ではなく17%ではないのか? また、「5年間で25・5%」を「4年間で20%」まで下げたといっているが、説明の端々にごまかしがあるように思う。説明会では総括原価232億円の内訳も、値上げ分の39億円の使い道も触れられなかったが、値上げによって増収となる39億円の使い道は?

水道局長 4年間で約39億円の使い道は、長府浄水場更新事業に約20億円、老朽化した管路の更新や耐震化に12億円、その他老朽化した施設の更新・耐震化などに7億円だ。

本池 そうした内容を市民に示すべきだ。今、全国各地の水道料金が値上げされているがほぼ同じ説明だ。施設・管路の老朽化は今に始まったことではない。平成23年の下関市の水道料金値上げ時にも長府浄水場の更新が理由になっていたし、「インフラ長寿命化基本計画」も国が平成25年に策定していることを見てもそれは明らかだ。

全国で状況は同じだが、想定をこえるスピードで人口減少が進行しているのが下関市の特徴だと思う。それを解決しないまま今日まで来て、このたびの説明会で、今、値上げしなければ、たちまち能登の(管路の被害状況)ようになるかのような説明をすれば、市民の不信感が広がるのも当然だ。説明会では「脅しは慎んでほしい」というご意見も出ていた。事後回収が難しい、施設更新にかかる費用を現在の利用者負担としていく制度のあり方も議論されており、そうしたことを正直に、丁寧に説明しないままでは納得されない。

ほかにも、水道局の経営努力の取組と成果として、水道サービス公社の廃止で5・5億円の成果を上げたとある。しかしこれまで公社がやってこられた業務のなかにある漏水箇所の特定が、今後は市民の負担になる。廃止によって市民に生じる負担や、サービスの低下についてはなんの説明もない。これは成果なのだろうか。

多い高齢単身世帯 少量使用者の負担増大

本池 値上げの内訳だが、基本料金の改定率は26%値上げで概ね固まっており、従量料金にスポットが当たっており、平均15・7%の改定率をどのような配分にするかという検討になっている。その主な検討部分は、「生活用水としての使用が多いメーター口径25㍉以下の従量料金」で、「ひと月10㌧までは1㌧あたり10円」になっているところを、「11円」にするか「20円」にするか「40円」にするかが案①~③で検討されている。なぜ従量料金の改定が検討の中心になっているのか?

水道局長 単身者、低所得者といった方々は、傾向として水の使用量が少なくなることが想定される。こういった方々への配慮として小口径13㍉、20㍉、25㍉の1月の使用量10㌧まで、他の区分に比べて安い単価に設定している。少量使用者への配慮で、その区分は増額を抑えるようにはしているが、その分、他の区分に上乗せされるようになるので、バランスを考えて従量料金を中心に検討しているところだ。

本池 少量使用者への配慮はするが、配慮しすぎることで他の区分の人とのバランスが崩れるので、公平性を鑑みるということか。

水道局長 そのとおりだ。

本池 平成23年の改定時に基本水量の廃止にともなってもうけられたのが、「10円」の部分だ。なぜここが「10円」となっているのか、簡潔に説明をお願いする。

水道局長 平成23年度までは基本水量に入っていたのでゼロだったが、それを改め、他市の事例も見ながら一番低額の10円に設定した。

本池 これは激変緩和措置だという説明も受けた。平成23年度の料金改定ではそれまであった「基本水量」が廃止となっている。それまでは1㌧使っても10㌧使っても料金が同じという「不公平感」があったことが理由になっている。このときは1㌧でも10㌧でも「1029円」だった。それが基本水量が取り払われたことにより、13㍉口径で1㌧の人は「1102円」、10㌧の人は「1192円」となり、90円の差ができたことを「不公平感の解消」といっているようだ。「不公平感の解消」といって、双方値上げをして差をつけた。冷静に考えたらただの値上げではないかと私は思っている。今回の値上げにさいしても少量使用者とそうでない方との不公平感解消といっている。質問だが、水道料金でもっとも多いのは、どの使用水量か?

水道局長 口径13~25㍉の令和6年度の使用水量の実績では、1カ月当り10㌧までの使用が一番多い。

本池 水道局の経営審議会でも使用水量の分析をしておられる【グラフ】。10㌧未満は4割となっており、「使用水量の少ない使用者群の構成比が上昇している」との記述がある。使用水量の少ない世帯の世帯構成や経済状況は把握しているか?

水道局長 今手持ちの資料がないが、当然検討して算出している数字だ。 続きを読む

【委員会視察報告】下関市の救護施設「梅花園」の現状と課題について。

下関市唯一の救護施設「梅花園」(下関市永田郷)

下関市議会では毎年委員会ごとに市内・市外で視察をおこないます。今年度から私は文教厚生委員会に所属しており、このたび市内視察で、救護施設「梅花園」(下関市永田郷)と、今年4月にオープンした「福祉プラザしものせき」(下関市上田中町)に行ってきました。

救護施設・梅花園は、これまで下関市が運営してきたものですが、2022年、養護老人ホーム「陽光苑」とともに下関市が社会福祉事業団に事業譲渡した施設です。市は2016年に策定した下関市公共施設等総合管理計画にもとづき、20年間で30%の公共施設の延床面積を削減するとして、施設の廃止、売却、民間譲渡を進めてきました。梅花園も陽光苑もその一つで、「民間での提供が可能」という理由から、築36年の建物と事業を当時指定管理者だった社会福祉事業団に譲渡した経緯があります。譲渡から3年が経過していますが、施設の老朽化をはじめ、物価上昇のなか事業収入が措置費しかないことによる運営の厳しさが指摘されています。

こうした事態に直面し、当時もっとこの施設の役割や市民生活にとっての必要性を確認し、本当に民間譲渡をしていいのかどうか、徹底的に議論すべきであったと私自身、反省を込めて思っています。そして譲渡後の課題については市議会として把握しておかなければならないとの思いで文教厚生委員会の視察先として提案したところ、委員長の判断により視察が実現しました。

市内唯一の救護施設

梅花園では園長をはじめ施設の方々、社会福祉事業団の理事長、事務局長が説明をしてくださいました。以下、その内容を紹介します。

梅花園は市内唯一の救護施設です。救護施設は生活保護法に基づく措置施設で、身体上、または精神上著しい障害があり日常生活を営むことが困難な人に対して、生活扶助や自立を目指した支援をおこなっておられます。

毎日の生活扶助は、食事の提供(朝食、昼食、おやつ、夕食)を基本に、病院受診や健康診断があります。入所者全員が生活保護を受けておられ、9割の方が精神や知的障害があります。多くの方が病院を受診されますので、送迎とつきそいをスタッフの方々がされるほか毎日の配薬もあります。健康診断には下関病院の医師の方が来られるそうです。入浴、洗濯、居室清掃の介助、散髪をしたり、生活用品やおやつ等嗜好品の購入にも一緒に出向くなど、自立を目指した支援をおこなっておられます。

入園者のリフレッシュのために、季節行事のほか、昨年度は火の山ロープウェイ、海響館、「レノファ」サッカー観戦などの外出行事をおこなったり、夏祭りにはキッチンカーを招いたり、新型コロナで中断していた慰問の受け入れを再開しミニコンサートを開催されたそうです。入園者とともに、園内清掃や草取りなどの美化活動もしておられ、花壇の手入れや畑での野菜の育成・収穫もしておられます。その一部は地域の方にも配布するなど、日頃から地域との交流を深めている様子も伝わってきました。

そのほか、自立支援のとりくみとして、近隣の「陽光苑」のトイレ清掃やランドリーへの職業体験を通じて、自立した生活へ向けたステップにされています。

設備と職員の配置状況

そうした支援をおこなう梅花園の施設概要は、鉄筋コンクリート造平屋建で、敷地面積は約6792平方㍍、建物面積は約1739平方㍍となっています。定員は50人で、4人用畳部屋が14室、特別居室1室となっています。1部屋10畳ですので、1人当り2・5畳です。職員体制は、施設長1人、事務員1人、指導員2人、介護職員・介助員11人、看護師2人、栄養士1人、調理員5人の合計23人(うち非常勤10人)と医師1人(嘱託医)で、入園者の生活を支え、自立支援をしておられます。ここに平均49人の方が入園されており、長い方では20年以上になる方もおられます。ほとんどの方が身体、知的、精神、または複合的に障害があり、こうした方々は主に生活困窮による緊急的な措置で入園されていますが、なかには集団生活があわず退園に至るケースもあるそうです。

この間、新型コロナやインフルエンザの集団感染も起きており、なかでも2024年末から2025年初めにかけて起きたインフルエンザの集団感染では、入園者21人、職員8人が感染したそうです。御用納めで行政も病院も休みに入っているなかで対応しなければならず、園長自ら運転して日々入園者を病院まで連れていくという過酷な状況でした。前後しますが、新型コロナの集団感染も起きており、業務継続計画(BCP)をはじめとした取組や対応が課題となっています。職員体制が潤沢ではないなかでも能登半島地震に伴う介護職員等の派遣要請に応じ、2023年、24年に金沢市や輪島市に職員を派遣され、福祉避難所における生活支援業務に当たられています。

地域生活への移行支援

 梅花園に入園される方のなかには、病気、障害、通院や服薬ができていない、金銭管理が難しい、アルコール依存、アパートや自宅の退去、退院後に戻る場所がない、入居施設での強制退去などに加え、家族からの虐待、長期の引きこもり、刑務所からの出所などさまざまな事情を抱えた人がおられます。入園後は個人の状況にあわせ自立を目指す支援を盛り込んだ個別支援計画を作成し、この計画に沿って、規則正しく活動的な生活ができ、健康と意欲を取り戻すことを目指しておられます。地域生活への移行を目指す方には、前記のような就労に向けた社会体験を提供し、グループホームやアパート暮らしへ繋がるケースもあるようですが、住居確保については、身元引き受けの親族等がいない場合が多いため入居手続きに苦心されているとのお話でした。

事業継続には課題山積

譲渡後の事業継続にあたっての課題の一つ目は、「定員50名の充足率向上を目標とした安定的な運営のとりくみ」です。

2022年から事業団で運営しなければならなくなっていますが、前提として措置施設ですので、措置機関(市)からの措置によって入所が決まります。生活保護事業収入だけが収入となりますので、充足率が下がれば収入も減る関係にあり、事業の継続は厳しいものがあります。措置された方については受け入れを積極的にされているようですが、部屋の狭さを理由に断られるケースが少なくなく、昨年度も5名の方が見学に来られたようですが入所になったのは一人だけで、時代に即していない施設が事業の継続にとって大きな障壁となっています。

そして、このことと直結する課題となっているのが、「事業譲渡後の建て替えの推進」です。2022年の事業譲渡のさい、市有財産譲渡契約により令和13年度(築45年)までの10年間は「現在の施設を救護施設の用途に供する」ことが決まっており、事業をしつつ将来的な施設の建て替えの課題に直面しています。事業団としては、2024年11月に広島県呉市の救護施設を視察されていますが、用地と財源の確保が大きな課題です。

今年7月10日には前田市長に対し、建て替えのさいの公有地の確保と、建設資金の確保の支援を要望しておられるとのことで、今月中には萩市の福祉複合施設を視察される予定です。建て替えの財源となる預金は財団にはないなかでの2022年の「譲渡」であり、事業団としては事業の継続のために建て替えに向けた道筋を懸命に模索されています。

建て替えが切実になっている背景には、新型コロナの流行があります。2022年には園内でクラスターが発生しており、この経験からも感染症に対する予防対策が必須となっています。現状は4人部屋で、1人が発症したら他の3人を別の部屋に移すことができず、ご飯を3食弁当にして部屋に運ぶ日々であったといいます。仕切りもない狭い部屋に大人4人。出たくても何日も出られない。当時の状況は言葉になりません――と涙を流しながら語っておられました。

施設の老朽化だけでなく、感染症対策やICT対応等の設備機能が不十分であること、機能の老朽化も顕著であることからこれらの課題解決として建て替えは待ったなしになっています。事業団の方は「リミットは7年」といわれており、時間は多く残されていません。

市が責任を持ち改善を

さらに事業団の方の説明では、救護施設は介護サービスのように独自の経営判断で入所者を入れていける施設ではないため、決まった措置費のなかで経営をしていかなければならない実情が紹介されました。社会福祉事業団のホームページの予算書をみると、梅花園の収入は生活保護事業収入の1億7288万8000円だけです。例えば、昨今のコメに代表される食料品の高騰、日用品や光熱水費の高騰、人件費の高騰に措置費が追いついているのでしょうか。日常の業務がどうなっているのかについて、もっと調査し課題を明らかにしていく必要があると思っています。

座学ののち、施設内見学をさせていただいたのですが部屋の狭さは想像以上のものでした。10畳の部屋に布団を敷く仕様ですが敷けば足の踏み場はありません。間仕切りもなく「プライベートもなにもない」といわれていました。トラブルが起きるのは当然で、そうした場合の部屋の組み合わせにも苦慮しておられるそうです。昔はこの基準でよかったのかもしれませんが、憲法25条にもとづく施設がこのような状態であることに衝撃を受けましたし、社会福祉事業団のみなさんが必死に訴えておられる意味が分かりました。

視察時間はわずか60分でしたが、他の議員のみなさんも現場の状況を重く受け止められていたように思います。長年議員をされている方も「20年やっているが初めて来た」といっておられ、まさに陽の当たらない現場であったのだと感じます。「だれ一人取り残さない社会」の「最後の砦」といわれる救護施設ですが、こうした現場にこそ光を当てていくのが行政の本来の役目ではないか、今の下関市は行政本来の役割を果たしているのか――と考えさせられました。

議員2期目になり福祉分野へかかわることが増えてきましたが、そうした現場に接するたびに、いつ、誰が、支援を必要とする立場になるかわからず、一人一人、今は生活が成り立っていても、なにかのきっかけでそのバランスはたちまち崩れてしまい、自分ではどうしようもできない状態に陥るものだと思っています。そしてそれは年々深刻になっています。だからこそ、崩れ落ちる前に支えたり、崩れ落ちても抱きかかえるような仕組みを社会全体でつくっていかなければならず、救護施設もその一つだと思います。社会福祉事業団に譲渡し「面積が減った」と喜んでいる場合ではなく、陽光苑も含めて譲渡が妥当であったのかどうかも検証が必要であるように感じます。

梅花園の視察後は福祉プラザに移動し、社会福祉協議会の方々に重層的支援体制の説明と館内の紹介をしていただきました。一番に、下関市の福祉全般を担っていただいている社協のみなさんの職場環境が改善されたことは本当によかったと思いますし、このプラザが核となり地域福祉がより充実したものになっていくことと思います。私も現場の方に学びながら少しでも役にたっていきたいと思います。

一方で、福祉の当事者がいる梅花園の実態との落差を感じたのも事実です。目前の課題としての建て替えについては行政が責任をもって予算と土地の確保をすべきだと感じていますが、要するに、最後のセーフティネットを市がどう考えているのか、その姿勢が問われているのだと思います。

 最後に、視察を通じ議員が現場に足を運ぶことの重要性を改めて感じています。

 2022年の譲渡のさいに当該施設に足を運び施設の役割や実態を掴んでいたら、市が事業を手放すことについて市議会内で議論をもっとできたかもしれません。それは現在もまったく同じで、現場を知る努力をし続けていこうと思うと同時に、今回、こうした視察ができたことは本当に良かったと思っています。説明していただいた梅花園、社会福祉事業団、社会福祉協議会のみなさま、福祉部の方々、ありがとうございました。