3月議会が終わりましたので、ご報告します。

昨日23日、令和2年第一回定例会が終わりました。

3月の議会は「予算議会」といわれ、4月からの1年間の予算についてが話し合われます。議員は、執行部の出すどのような事業にどれほどの予算が付けられるのか、事業内容は市民にとって必要なものなのか、必要なところにきちんと予算が付いているのかなど、話し合い、意見を述べることが主な内容になります。代表質問、委員会審議を経て、採決をとるのですが、すべての議案が可決となりました。

今月3日、新型コロナウイルスの感染が下関市内でも確認され、一斉休校やイベント自粛などとかかわった深刻な影響が出るなかでの議会となりました。予算の審議の過程でもコロナ対応なども含めた質疑が多くかわされ、執行部も対応しておられますが、まだまだ市民のみなさんが置かれている実情には手が届いているとはいえない状況があります。引き続き実態を届けたいと思いますので、声をお寄せください。

私は、今年度の一般会計予算に反対し討論をおこないました。理由は、昨年の9月議会の一般質問とりあげたものと関係するのですが、来年度予算のなかの下関市立大学の運営費交付金のなかに、前田市長が推薦した特定の教授を採用するために約2000万円の予算を投入することが含まれているからです。

「お金がない」。市民のみなさんが市役所に行けば、必ずといっていいほどその言葉を聞くと思います。市の財政が厳しいのは事実で、毎年のように基金(貯金)を取り崩しているのが実態です。多くの市民には我慢をさせている一方で、特定の人物のためにお金をつぎこむことは間違っていると思います。仮にどうしても必要な事業であれば、関係者での論議を尽くさなければならず、公の大学でそのような恣意的な人事がなされることはあってはならないというものです。以下、内容を紹介いたします。

反対討論の要旨

議案第10号令和二年度一般会計予算に反対討論をおこないます。

来年度予算のなかには、公立大学法人運営業務2億4,423万4000円のうち、公立大学運営費交付金のインクルーシブ教育推進のための交付金2,185万円が含まれています。来年度予算の新規事業として計上されているこの予算は、専攻科設置にかかるもので支出と収入の差額が計上されています。

まず収入ですが、特別の過程の受講料として675万円、令和3年度からの専攻科設置のための受験料に相当する検定料と入学金で74万9000円、合計749万9000円を見込んでいます。次に支出ですが、教員3名と事務職員1名分の人件費として2,780万円、研究費144万円、消耗費10万円、合計2934万9000円となっており、先ほども述べたとおり予算に計上されている2,185万円はこの収入と支出の差額分となります。

つまり、昨年から問題になってきましたが、前田市長の推薦する特定の方およびそのグループを下関市立大学に採用するための予算だといっていいと思います。下関市立大学の一連の騒動は昨年5月30日に前田市長が市長応接室で山村理事長に研究者を紹介したところから始まっています。実際に市立大学では市長の意向を受けて中期計画にもなかったこの計画が動き始め、大学自治を逸脱した特定の人物の採用ありきの専攻科設置に学内での反発が広がり、9割の教員が反対する事態まで招きましたが採用を内定し、さらに九月議会には、大学運営の根幹にかかわる重要事項、たとえば教員の採用であったり、学部・学科の設置であったりですが、これらを現場の意見を聞くことなしに理事会で決めていく定款変更議案をこの市議会が可決しました。

全国的ニュースにもなり、大学のガバナンス上ありえないことだと驚きをもって受け止められるなか、1月にはその方が理事長の任命により市大の理事に就任し、さらに先日3月16日には現事務局長とともに副学長に内定したことが発表されました。また、4月1日以降に教授として採用されようとしています。

9月議会では何人もの議員が反対討論をおこないましたし、全国的に見ても考えられないようなことが「改革」の名を借りて進行しており、これについて問題視する声が大学内外から高まっています。それらについて「将来を見越して学長のリーダーシップのもとで生き残れる大学にするのだ」とか、「これに反対するものは抵抗勢力だ」「改革を恐れている人たちのいうことだ」といった意見が出ているようですが、これまでの手続きそのものがルールを逸脱しており、ならばルールすなわち定款を変更してしまえというやり方だったにすぎません。学内の合意形成も図られないなかで決められていったのは誰がどう見ても事実なのです。

ある市民の方が「市大は前田晋太郎大学なのか?」と私に問うてこられました。本来ならば「いいえ、下関市立大学です」と応えなければならないのですが、市長が「この人」と見初めた人物を理事長にお願いしたら採用されるというのであれば、それは大学としてのガバナンスを逸脱しており、私物化という指摘を払拭することはできません。そして、その度に市財政から何千万円という人件費その他を運営交付金として注ぐというのでしょうか。市民の皆様から、市長が気に入った人物が公金によって養われるのか? と言われた際、私たち市議会議員はなんと答えればよいのでしょうか。この議場におられる先輩議員の皆様にもお聞きしたいところです。

インクルーシブ教育の推進についてはなにも否定するものではありません。重要なことであれば教育現場の実状に即して推進するべきでしょう。ただ、それを特定の人物の採用ありきで、あまりにも乱暴なやり方で進めていることに大きな違和感を感じているところです。本当にインクルーシブ教育を充実したものにしたいのであれば、教育現場の先生方や、専門家、受け入れる市立大学の関係者などで論議を尽くしたうえで、下関にとって必要なものをとり入れるという形でなければ、市民の皆様の理解を得ることもできないのではないでしょうか。

2月27日、市立大学の名誉教授7人が連名で専攻科設置と定款の変更に対して疑問を抱き、意見書を前田市長と山村理事長に対して提出されました。2名の学長経験者も含みます。この方々も「やむにやまれぬ思い」だといわれていました。はじめから特定の人物の採用ありきだったことが今回の騒動の根源であり、そのような人事に対して市民の税金である運営費交付金を投入することについて、認めるわけにはいきません。

来年度予算のなかには市民にとって非常に重要なこともたくさん含まれています。しかしながら議案は一つですので、この内容を含んだ議案に賛成することはできません。下関市議会として、市民の皆様に対して説明がつくような懸命な判断を加えることを訴えて反対討論を終えます。

自治体財政の勉強会に行ってきました。

2月18、19日の2日間、東京都立川市でおこなわれた「議員の学校」に行ってきました。前々から行きたいと思っていたのですが2日立てということもあってなかなか行けず、今回やっと参加できました。

内容が膨大ですので、何回かに分けて報告したいと思いますが、全体を通じて何度もいわれたのが、「首長は一人。それに対してなぜ複数の人が住民の代表としているのか、その意味をよく考えてほしい」という議員の学校校長であるのNPO法人多摩住民自治研究所理事の池上洋通先生の言葉です。講義は合計4つあり、池上先生の講義は今後別掲しますが、2日間を通じてこの視点がつねに問われたように思います。

まず、予算議会の前に講師の森裕之先生(立命館大学教授)から令和2年度の予算のポイントをおしえていただきました。

今回の国の地方財政対策のポイントは3つ。

1、一般財源の確保(0・7兆円増)

2、偏在是正財源を活用した歳出の計上(0・4兆円増)

3、防災・減災対策の推進

です。中身についてはいろいろあるのですが、重点項目としては

■地域社会再生事業費(仮称)

■まち・ひと・しごと創生事業費

■社会保障の充実及び人づくり革命

■緊急浚渫推進事業費(仮称)

■技術職員の充実による市町村支援・中長期派遣体制の強化

■緊急防災・減災事業費の対象事業の拡充等

■会計年度任用職員制度の施行への対応

■次世代型行政サービスの推進

■地域医療の確保

となっています。

地方創生など今年度までやってきたものを来年度以降もおこなっていくというもの、来年度から新規で始まる地域社会再生事業費、幼児教育保育無償化、会計年度任用職員制度のスタートなど、一つの項目のなかでもさまざまな事業が含まれています。これら国が決めた事業を実行するのが都道府県や市町村で、そのための財源が国から地方交付税や国庫支出金などで地方自治体におりてくることになります。

来年度予算のポイントを抑えたあとは、地方財政の仕組みやその役割について森先生が詳しく教えてくださいました。地方自治体の収入になる「歳入」は大きく分けて4つあります。1つ目が地方税。2つ目は地方交付税。これは自治体の標準的な歳出に対して地方税では足りない部分を補填するために国からおりてくるお金です。3つ目は国庫支出金。いわゆる「補助金」で、これは使い道が特定されており、内容によって補助率が決まっています。4つ目に地方債。これは使い道が特定された借金で、充当率が決まっており、こちらも一般財源からの支出が前提のものです。

前記した予算の重点項目で「歳出」が決まり、その事務をおこなうための財源が地方自治体に地方交付税や国庫支出金として入ってきます。昨今、どの自治体も財政状況が非常に厳しくなっており、下関市民のみなさんも「お金がないからできない」という行政サイドからの言葉は聞いたことがあるのではないかと思います。まず人口減少や低所得化によって税収が激減している一方で、国から地方交付税として入ってくるお金がトップランナー方式でどんどん削られ足りていないことが大きく関係しているそうです。その仕組みについては次回の記事で紹介します。

地方に「お金がない」のは事実ですが、それで市民の命、健康、生活に直結するものを削っていいのかという問題についてですが、一方で国に対して地方自治体が声をあげていくことが今とても重要になっていることを教えられました。人口が減っているからといってこれまでおこなっていた住民サービスを削ることなどできるはずがありません。住民の命と健康を支えることは憲法で定められた国の義務で、それを担うのが地方自治体であることからも、「お金がない」といって住民の福祉を削ることはやってはいけないことですし、自治体自身の首を絞めていくことになるのだと、先生の講義を通じて思いました。

では、そのためにどのように財政を見て、提言をしていかなくてはいけないのか。それを考え、決めるのは住民自身だということです。そのために必要なことは、議員が住民のもとに足を運び下関市のあり方を一緒に考え、議会で発言し、論議をつくすことなにしはありえないということです。

議員の学校で出会ったほかの市町村の議員のみなさんは、一人会派の方が多かったです。政党には属さない無所属の一人会派の方もおられれば、自民党員でありながら一人会派を貫いている方もおられました。みな市民の代表として責任もって行政のチェックをしていけるよう、財政について深く学びたいという思いをもって参加されていました。前述の議員さんの一人は、「所属会派の決定に縛られ、自分の思いをあらわせないのは議会ではない。だからあえて会派には入らなかった。それと、市民になにかを聞かれたときに“お金がない”といわない議員になってくれといわれて市民から送り出された」といわれていました。全国で市民と向き合って頑張っている方が大勢おられることに学ばされました。財政の勉強で参加しましたが、議会とはなにか、地方自治とはなにか、という立場から意見交換をし、勉強できたことは大きな収穫になりました。

28日からは3月議会が始まります。今回の勉強をしっかりと活かしたいと思います。

 

2020年の年頭にあたってのご挨拶

新しい年を迎え、早1カ月が経ちました。31日に、下関市民の会による新春市民のつどいに出席させていただき、今年の抱負をこめて挨拶をさせていただきました。みなさんからは「今後も現場主義を貫いて頑張ってほしい」「今年も市民目線で市政と向き合ってほしい」など、たくさんの心強い叱咤激励をいただきました。以下、挨拶の要旨を掲載して新年のご挨拶とします。

昨年2月3日の市議選で多くの市民のみなさんから市議会に送り出され、1年がたちました。初めての3月議会から緊張の連続でいろいろと判断に迷うこともありましたが、常に「市民にとってどうなのか」を判断基準に、みなさんの力を借りながら活動してきました。

昨年3月議会での個人質問では、市立大学の学長専攻についてと行財政改革推進会議による私立高校に対する補助金の減額についてを、6月には安岡沖洋上風力発電建設計画についてと公衆衛生の問題として小中学校の老朽化したトイレの問題と公共施設の削減対象になっている公衆トイレについてを、9月議会では下関市立大学の専攻科設置問題と公共施設マネジメントについてを、12月議会では、豊北中学校のスクールバスについてと農業の振興の視点から有害鳥獣被害対策についてとりあげました。

とりあげる項目は、日々市民のみなさまのもとに足を運ぶなかで、各地で問題になっていることを自分自身の耳で聞き対話してきたなかから決め、現場のみなさんに直接話を聞きながら深く掘り下げていくことを意識してきました。直接かかわっている人に一人でも多く意見を聞くことで、細かいところまで詳しく知ることもできるほか、立場によっては意見の相違もあるなかで、なにがよりよい解決の方法なのか、どうすれば政策として実現できるのか、行政に掛け合っていく際に欠かせない作業だったように思います。

現状をどうすれば解決できるのかという視点から、関係者のみなさんに取材し、知恵をもらい、それらを持ち帰って長周新聞の先輩たちに助言をもらいながら、より具体的な内容の質問をつくりあげてきました。現状をより詳しく知ることによって「こうすればいいのではないか」というヒントも出てきますし、現場の実感としての提案をおこなうことで、縦割りではなく行政内部で他部局との協議をするという答えもいただきました。よりよい下関にするために、議員が現場に密着し、その願いや要求を実現するために議会に声を届け、機能する。あたりまえの仕事ではありますが、この一年間の議員活動のなかで、こうすればみんなのためになるんだという感覚が少しずつではありますが、わかってきたように思います。議会のなかで大きな会派に所属して持つ「力」よりも、自分の足で動き、たくさんの方の声や知恵を集めて、行政に届けていくことが行政を動かすもっとも強い力であることを学びました。

これらの活動のなかで、常に問われたのは「議員の仕事とはなにか」ということです。

3月議会の個人質問と9月議会の一般質問では、市立大学の学長選考と専攻科の設置の問題についてをとりあげましたが、これら一連の問題は公立大学の私物化として全国的にも注目されることになりました。市長のお気に入りの人材を市民の税金で運営している市立大学に入れるよう取り計らったり、それが困難であるなら大学の定款まで変えて、市長の任命する理事長によってすべてが決まっていく体制をつくるものです。市立大学そのものの問題はありますが、こういった市長の独断で大学を好きなようにする私物化をスルーして通していく市議会にも大きな問題があると思います。この一年間で見てきたのは、チェック機能とは程遠い市議会の実態でもあり、議員がまじめに市民の暮らしや、下関市の向かっている方向に向きあおうという姿勢が乏しいのではないかと私には思えました。

なんのために議員をしているのか。なにかの式典やでき上がった会合の場に行って挨拶をするだけなら誰でもできます。そうではなく、市民の暮らしや抱えている問題に向きあって状況を解決させていくことに努力したり、それこそ行政がうち出す政策が市民のためになるものなのかをチェックするのが議員の仕事なはずです。

「馴れ合いや惰性を基本にした“右にならえ”ではなく、あくまで是々非々を貫き、下関市政に民主主義を貫いていく」。このことを選挙やその前後の過程で私はみなさんに約束してきました。議員としてはまだまだ未熟ですが、この立場を堅持し、みなさんのお役に立てるようもっと勉強し、一歩一歩積み上げていかなくてはいけません。

下関の抱える課題はとても大きく、産業が低迷するなかで子育て世代から高齢者まで支えなくてはならない人たちがたくさんいます。議員活動を支えてくださっているみなさんや、この間出会ってきた多くのみなさんと一緒に、市民のために機能する市政になるよう、全力で頑張る決意です。今後ともよろしくお願いいたします。