9月議会一般質問「水道料金の値上げについて」のご報告。

先の9月議会で、下関市で来年4月に予定されている水道料金の値上げについて質問しました。急激な人口減少が進むなか、全国の自治体で水道事業が困難になっており、下関市も事業の赤字を理由に水道料金の値上げに踏み切ろうとしています。物価上昇のなかで市民生活は厳しさを増しており、誰もが切り詰めた生活をしている最中にです。今議会では8議員が水道料金にかかわる質問をしましたが、それほど市民の関心が高い問題です。ハコモノ開発に何十億円も注ぎながら、安易な料金値上げをするのではなく、市民生活を守るために市政の抜本的な見直しが必要です。以下、執行部との質疑の文字起こしを掲載し、ご報告といたします。今後とも忌憚のないご意見をよろしくお願いします。

本池 水道料金については今議会で8人の議員がとりあげており、それほど市民への影響が大きく重要な問題であるということを重く受け止めていただきたい。上下水道局の説明内容は来年4月から、水道料金が平均20%上がるというものだ。そして4年後にまた値上げされ、現行と比較し約4割の値上げがおこなわれるというものだ。8月1日~8月8日にかけて水道局が市民説明会をおこなっているが、この目的はなにか?

伊南上下水道局長 料金改定の検討状況を知っていただくこと、料金改定の必要性を理解していただくことだ。

本池 参加状況は表のとおりだ。この人数を水道局内ではどのように評価をしているか。

水道局長 一部の地域では参加者がとくに少なかったり、いなかった地域もあった。周知についてはもう少し工夫することができたのではと考えている。

本池 私も2カ所の説明会に行ってみたが、参加者が少ないだけでなく水道局関係者をどちらでも見かけ、いわゆる「さくら」のような雰囲気もあったのだが92人のうち純粋な市民の参加は何人か。

水道局長 確認していない。

本池 ほとんど市民参加なき説明会であったと思う。豊北町などは参加者ゼロで中止になった。地域性から考えても信じがたいものがある。具体的にどのような周知をしたのか?

水道局長 市報の7月号でお知らせをした。6月下旬に水道局のホームページに掲載し、7月中旬に水道局のSNS、下旬に市のSNSに掲載した。各開催場所で開催1週間前にチラシを配布した。

本池 市報(7月号)だが小さすぎて誰も気が付かないし時期も早すぎる。8月号に載せてもよかったし、ホームページも新着に押し下げられていくので再掲しても良かったと思う。豊北町では一昨日にやりなおしの説明会があった。自治会長を対象に呼びかけられたそうだが、たくさんの参加があり相当な意見が出た。まともに呼びかければこれほど来られるということだ。それを市内8カ所でされていれば今のような状態にはなっていなかったのではないか。市民が水道料金の値上げについて理解していると思うか。

水道局長 参加された92名の方にアンケートを実施し、アンケートの回答者76名のうち72名が「理解できた」と回答している。一定の成果はあったものと理解している。

本池 参加者は理解しているということだ。一番最初に確認した説明会の目的は達成されたか。

水道局長 参加者のアンケートによれば、市民説明会の目的とすれば一定の成果は上がっている。

本池 市民全体が理解しているのかといっている。そもそも周知が行き届いていないなかで、来た人だけの評価をもって達成されたというのは違う。「周知については工夫ができたのではないか」といわれているが、その後の行動が市民に知ってもらおうという行動になっていない。今後10月に第3回経営審議会をおこなって答申を出し、12月に条例改定というスケジュールになっているが、これで市民に説明をしたことにするのか。

水道局長 料金改定は市民生活に影響を与えるということもあって、市民のみなさまのご理解が必要だと考えている。その手法として市民説明会を開催した。それだけでは十分ではないと思うのであらゆるSNSを活用して周知をかけ、市報を活用して分かりやすい説明に努めていくということだ。

本池 きちんと周知をすればたくさんの市民が来ることは豊北の事例で証明されたと思うが、今のままでは市民の多くがなにも知らないまま料金改定がされることになる。水道事業が厳しくなっていることは理解するが、なおさら市民に正しい情報を伝え、一緒に水道やインフラ整備の重要さについて考えなければならないのではないか。まともな周知をせず、説明会を終えたことにするのでは市民は納得しない。説明会のやりなおしを求めるがどうか。

水道局長 市民説明会は周知の重要な一つの手法だが、それだけでなく、SNS・市報、あらゆる情報とあわせてしっかり周知をはかっていきたい。その手法の一つに市民説明会をおこなったが、一部の地域で参加者がいない状況があったのでフォローして進めている。

本池 一部ではなく、ほとんどの会場で参加者が少なかった。これについてやり直しをしないのかと聞いている。検討するのか、しないのか?

水道局長 市民説明会は一つの手法なので、あらゆる手法をもってみなさんのご理解をいただけるよう努める。

本池 検討しないのだろうと思う。

参加者ゼロで中止となった豊北町では、住民の要望でやり直しの説明会がおこなわれ、多くの方々が参加されました(9月22日)

値上げの影響 ろくに説明もせず実行

本池 説明内容について触れていく。すでに指摘されているが、説明資料は、「水道料金を値上げするしかない」ということに徹した資料だ。水道料金が家計に占める割合は「ガス料金の半分以下」「電気代の5分の1」「飲料水として考えるとペットボトル水の320分の1」とか、市民からすれば、だからなんだという話だ。普段から水道水を使ってもらうためにこれをいっていくならわかるが、値上げを呑ませるためにいうことではないはずだ。企業会計の仕組みについて突然いわれても理解できるわけがなく、もしもこれを本気で考えたのであれば、誰に対し、なにを伝える説明会なのかを一旦整理したほうが良い。

値上げの理由は、「人口減少などによる料金収入の減少」「近年の急激な物価・人件費の上昇」「老朽化した施設・管路の更新や耐震化の本格化」といわれている。要するに、令和8~11年の総括原価(事業の維持・運営に必要な費用)が約232億円、現行の料金収入見込みが約193億円、不足額が約20%にあたる39億円。これを、20%の料金値上げによって回収するという内容でよいか?

水道局長 総括原価は232億円、現行の料金のままだと収入見込みが193億円、不足額が39億円で間違いない。

本池 232億円に対して現行料金収入193億円は約83%で、不足分39億円は約17%になるが、もしも【図】をもって値上げするのなら、20%ではなく17%ではないのか? また、「5年間で25・5%」を「4年間で20%」まで下げたといっているが、説明の端々にごまかしがあるように思う。説明会では総括原価232億円の内訳も、値上げ分の39億円の使い道も触れられなかったが、値上げによって増収となる39億円の使い道は?

水道局長 4年間で約39億円の使い道は、長府浄水場更新事業に約20億円、老朽化した管路の更新や耐震化に12億円、その他老朽化した施設の更新・耐震化などに7億円だ。

本池 そうした内容を市民に示すべきだ。今、全国各地の水道料金が値上げされているがほぼ同じ説明だ。施設・管路の老朽化は今に始まったことではない。平成23年の下関市の水道料金値上げ時にも長府浄水場の更新が理由になっていたし、「インフラ長寿命化基本計画」も国が平成25年に策定していることを見てもそれは明らかだ。

全国で状況は同じだが、想定をこえるスピードで人口減少が進行しているのが下関市の特徴だと思う。それを解決しないまま今日まで来て、このたびの説明会で、今、値上げしなければ、たちまち能登の(管路の被害状況)ようになるかのような説明をすれば、市民の不信感が広がるのも当然だ。説明会では「脅しは慎んでほしい」というご意見も出ていた。事後回収が難しい、施設更新にかかる費用を現在の利用者負担としていく制度のあり方も議論されており、そうしたことを正直に、丁寧に説明しないままでは納得されない。

ほかにも、水道局の経営努力の取組と成果として、水道サービス公社の廃止で5・5億円の成果を上げたとある。しかしこれまで公社がやってこられた業務のなかにある漏水箇所の特定が、今後は市民の負担になる。廃止によって市民に生じる負担や、サービスの低下についてはなんの説明もない。これは成果なのだろうか。

多い高齢単身世帯 少量使用者の負担増大

本池 値上げの内訳だが、基本料金の改定率は26%値上げで概ね固まっており、従量料金にスポットが当たっており、平均15・7%の改定率をどのような配分にするかという検討になっている。その主な検討部分は、「生活用水としての使用が多いメーター口径25㍉以下の従量料金」で、「ひと月10㌧までは1㌧あたり10円」になっているところを、「11円」にするか「20円」にするか「40円」にするかが案①~③で検討されている。なぜ従量料金の改定が検討の中心になっているのか?

水道局長 単身者、低所得者といった方々は、傾向として水の使用量が少なくなることが想定される。こういった方々への配慮として小口径13㍉、20㍉、25㍉の1月の使用量10㌧まで、他の区分に比べて安い単価に設定している。少量使用者への配慮で、その区分は増額を抑えるようにはしているが、その分、他の区分に上乗せされるようになるので、バランスを考えて従量料金を中心に検討しているところだ。

本池 少量使用者への配慮はするが、配慮しすぎることで他の区分の人とのバランスが崩れるので、公平性を鑑みるということか。

水道局長 そのとおりだ。

本池 平成23年の改定時に基本水量の廃止にともなってもうけられたのが、「10円」の部分だ。なぜここが「10円」となっているのか、簡潔に説明をお願いする。

水道局長 平成23年度までは基本水量に入っていたのでゼロだったが、それを改め、他市の事例も見ながら一番低額の10円に設定した。

本池 これは激変緩和措置だという説明も受けた。平成23年度の料金改定ではそれまであった「基本水量」が廃止となっている。それまでは1㌧使っても10㌧使っても料金が同じという「不公平感」があったことが理由になっている。このときは1㌧でも10㌧でも「1029円」だった。それが基本水量が取り払われたことにより、13㍉口径で1㌧の人は「1102円」、10㌧の人は「1192円」となり、90円の差ができたことを「不公平感の解消」といっているようだ。「不公平感の解消」といって、双方値上げをして差をつけた。冷静に考えたらただの値上げではないかと私は思っている。今回の値上げにさいしても少量使用者とそうでない方との不公平感解消といっている。質問だが、水道料金でもっとも多いのは、どの使用水量か?

水道局長 口径13~25㍉の令和6年度の使用水量の実績では、1カ月当り10㌧までの使用が一番多い。

本池 水道局の経営審議会でも使用水量の分析をしておられる【グラフ】。10㌧未満は4割となっており、「使用水量の少ない使用者群の構成比が上昇している」との記述がある。使用水量の少ない世帯の世帯構成や経済状況は把握しているか?

水道局長 今手持ちの資料がないが、当然検討して算出している数字だ。 続きを読む

【委員会視察報告】下関市の救護施設「梅花園」の現状と課題について。

下関市唯一の救護施設「梅花園」(下関市永田郷)

下関市議会では毎年委員会ごとに市内・市外で視察をおこないます。今年度から私は文教厚生委員会に所属しており、このたび市内視察で、救護施設「梅花園」(下関市永田郷)と、今年4月にオープンした「福祉プラザしものせき」(下関市上田中町)に行ってきました。

救護施設・梅花園は、これまで下関市が運営してきたものですが、2022年、養護老人ホーム「陽光苑」とともに下関市が社会福祉事業団に事業譲渡した施設です。市は2016年に策定した下関市公共施設等総合管理計画にもとづき、20年間で30%の公共施設の延床面積を削減するとして、施設の廃止、売却、民間譲渡を進めてきました。梅花園も陽光苑もその一つで、「民間での提供が可能」という理由から、築36年の建物と事業を当時指定管理者だった社会福祉事業団に譲渡した経緯があります。譲渡から3年が経過していますが、施設の老朽化をはじめ、物価上昇のなか事業収入が措置費しかないことによる運営の厳しさが指摘されています。

こうした事態に直面し、当時もっとこの施設の役割や市民生活にとっての必要性を確認し、本当に民間譲渡をしていいのかどうか、徹底的に議論すべきであったと私自身、反省を込めて思っています。そして譲渡後の課題については市議会として把握しておかなければならないとの思いで文教厚生委員会の視察先として提案したところ、委員長の判断により視察が実現しました。

市内唯一の救護施設

梅花園では園長をはじめ施設の方々、社会福祉事業団の理事長、事務局長が説明をしてくださいました。以下、その内容を紹介します。

梅花園は市内唯一の救護施設です。救護施設は生活保護法に基づく措置施設で、身体上、または精神上著しい障害があり日常生活を営むことが困難な人に対して、生活扶助や自立を目指した支援をおこなっておられます。

毎日の生活扶助は、食事の提供(朝食、昼食、おやつ、夕食)を基本に、病院受診や健康診断があります。入所者全員が生活保護を受けておられ、9割の方が精神や知的障害があります。多くの方が病院を受診されますので、送迎とつきそいをスタッフの方々がされるほか毎日の配薬もあります。健康診断には下関病院の医師の方が来られるそうです。入浴、洗濯、居室清掃の介助、散髪をしたり、生活用品やおやつ等嗜好品の購入にも一緒に出向くなど、自立を目指した支援をおこなっておられます。

入園者のリフレッシュのために、季節行事のほか、昨年度は火の山ロープウェイ、海響館、「レノファ」サッカー観戦などの外出行事をおこなったり、夏祭りにはキッチンカーを招いたり、新型コロナで中断していた慰問の受け入れを再開しミニコンサートを開催されたそうです。入園者とともに、園内清掃や草取りなどの美化活動もしておられ、花壇の手入れや畑での野菜の育成・収穫もしておられます。その一部は地域の方にも配布するなど、日頃から地域との交流を深めている様子も伝わってきました。

そのほか、自立支援のとりくみとして、近隣の「陽光苑」のトイレ清掃やランドリーへの職業体験を通じて、自立した生活へ向けたステップにされています。

設備と職員の配置状況

そうした支援をおこなう梅花園の施設概要は、鉄筋コンクリート造平屋建で、敷地面積は約6792平方㍍、建物面積は約1739平方㍍となっています。定員は50人で、4人用畳部屋が14室、特別居室1室となっています。1部屋10畳ですので、1人当り2・5畳です。職員体制は、施設長1人、事務員1人、指導員2人、介護職員・介助員11人、看護師2人、栄養士1人、調理員5人の合計23人(うち非常勤10人)と医師1人(嘱託医)で、入園者の生活を支え、自立支援をしておられます。ここに平均49人の方が入園されており、長い方では20年以上になる方もおられます。ほとんどの方が身体、知的、精神、または複合的に障害があり、こうした方々は主に生活困窮による緊急的な措置で入園されていますが、なかには集団生活があわず退園に至るケースもあるそうです。

この間、新型コロナやインフルエンザの集団感染も起きており、なかでも2024年末から2025年初めにかけて起きたインフルエンザの集団感染では、入園者21人、職員8人が感染したそうです。御用納めで行政も病院も休みに入っているなかで対応しなければならず、園長自ら運転して日々入園者を病院まで連れていくという過酷な状況でした。前後しますが、新型コロナの集団感染も起きており、業務継続計画(BCP)をはじめとした取組や対応が課題となっています。職員体制が潤沢ではないなかでも能登半島地震に伴う介護職員等の派遣要請に応じ、2023年、24年に金沢市や輪島市に職員を派遣され、福祉避難所における生活支援業務に当たられています。

地域生活への移行支援

 梅花園に入園される方のなかには、病気、障害、通院や服薬ができていない、金銭管理が難しい、アルコール依存、アパートや自宅の退去、退院後に戻る場所がない、入居施設での強制退去などに加え、家族からの虐待、長期の引きこもり、刑務所からの出所などさまざまな事情を抱えた人がおられます。入園後は個人の状況にあわせ自立を目指す支援を盛り込んだ個別支援計画を作成し、この計画に沿って、規則正しく活動的な生活ができ、健康と意欲を取り戻すことを目指しておられます。地域生活への移行を目指す方には、前記のような就労に向けた社会体験を提供し、グループホームやアパート暮らしへ繋がるケースもあるようですが、住居確保については、身元引き受けの親族等がいない場合が多いため入居手続きに苦心されているとのお話でした。

事業継続には課題山積

譲渡後の事業継続にあたっての課題の一つ目は、「定員50名の充足率向上を目標とした安定的な運営のとりくみ」です。

2022年から事業団で運営しなければならなくなっていますが、前提として措置施設ですので、措置機関(市)からの措置によって入所が決まります。生活保護事業収入だけが収入となりますので、充足率が下がれば収入も減る関係にあり、事業の継続は厳しいものがあります。措置された方については受け入れを積極的にされているようですが、部屋の狭さを理由に断られるケースが少なくなく、昨年度も5名の方が見学に来られたようですが入所になったのは一人だけで、時代に即していない施設が事業の継続にとって大きな障壁となっています。

そして、このことと直結する課題となっているのが、「事業譲渡後の建て替えの推進」です。2022年の事業譲渡のさい、市有財産譲渡契約により令和13年度(築45年)までの10年間は「現在の施設を救護施設の用途に供する」ことが決まっており、事業をしつつ将来的な施設の建て替えの課題に直面しています。事業団としては、2024年11月に広島県呉市の救護施設を視察されていますが、用地と財源の確保が大きな課題です。

今年7月10日には前田市長に対し、建て替えのさいの公有地の確保と、建設資金の確保の支援を要望しておられるとのことで、今月中には萩市の福祉複合施設を視察される予定です。建て替えの財源となる預金は財団にはないなかでの2022年の「譲渡」であり、事業団としては事業の継続のために建て替えに向けた道筋を懸命に模索されています。

建て替えが切実になっている背景には、新型コロナの流行があります。2022年には園内でクラスターが発生しており、この経験からも感染症に対する予防対策が必須となっています。現状は4人部屋で、1人が発症したら他の3人を別の部屋に移すことができず、ご飯を3食弁当にして部屋に運ぶ日々であったといいます。仕切りもない狭い部屋に大人4人。出たくても何日も出られない。当時の状況は言葉になりません――と涙を流しながら語っておられました。

施設の老朽化だけでなく、感染症対策やICT対応等の設備機能が不十分であること、機能の老朽化も顕著であることからこれらの課題解決として建て替えは待ったなしになっています。事業団の方は「リミットは7年」といわれており、時間は多く残されていません。

市が責任を持ち改善を

さらに事業団の方の説明では、救護施設は介護サービスのように独自の経営判断で入所者を入れていける施設ではないため、決まった措置費のなかで経営をしていかなければならない実情が紹介されました。社会福祉事業団のホームページの予算書をみると、梅花園の収入は生活保護事業収入の1億7288万8000円だけです。例えば、昨今のコメに代表される食料品の高騰、日用品や光熱水費の高騰、人件費の高騰に措置費が追いついているのでしょうか。日常の業務がどうなっているのかについて、もっと調査し課題を明らかにしていく必要があると思っています。

座学ののち、施設内見学をさせていただいたのですが部屋の狭さは想像以上のものでした。10畳の部屋に布団を敷く仕様ですが敷けば足の踏み場はありません。間仕切りもなく「プライベートもなにもない」といわれていました。トラブルが起きるのは当然で、そうした場合の部屋の組み合わせにも苦慮しておられるそうです。昔はこの基準でよかったのかもしれませんが、憲法25条にもとづく施設がこのような状態であることに衝撃を受けましたし、社会福祉事業団のみなさんが必死に訴えておられる意味が分かりました。

視察時間はわずか60分でしたが、他の議員のみなさんも現場の状況を重く受け止められていたように思います。長年議員をされている方も「20年やっているが初めて来た」といっておられ、まさに陽の当たらない現場であったのだと感じます。「だれ一人取り残さない社会」の「最後の砦」といわれる救護施設ですが、こうした現場にこそ光を当てていくのが行政の本来の役目ではないか、今の下関市は行政本来の役割を果たしているのか――と考えさせられました。

議員2期目になり福祉分野へかかわることが増えてきましたが、そうした現場に接するたびに、いつ、誰が、支援を必要とする立場になるかわからず、一人一人、今は生活が成り立っていても、なにかのきっかけでそのバランスはたちまち崩れてしまい、自分ではどうしようもできない状態に陥るものだと思っています。そしてそれは年々深刻になっています。だからこそ、崩れ落ちる前に支えたり、崩れ落ちても抱きかかえるような仕組みを社会全体でつくっていかなければならず、救護施設もその一つだと思います。社会福祉事業団に譲渡し「面積が減った」と喜んでいる場合ではなく、陽光苑も含めて譲渡が妥当であったのかどうかも検証が必要であるように感じます。

梅花園の視察後は福祉プラザに移動し、社会福祉協議会の方々に重層的支援体制の説明と館内の紹介をしていただきました。一番に、下関市の福祉全般を担っていただいている社協のみなさんの職場環境が改善されたことは本当によかったと思いますし、このプラザが核となり地域福祉がより充実したものになっていくことと思います。私も現場の方に学びながら少しでも役にたっていきたいと思います。

一方で、福祉の当事者がいる梅花園の実態との落差を感じたのも事実です。目前の課題としての建て替えについては行政が責任をもって予算と土地の確保をすべきだと感じていますが、要するに、最後のセーフティネットを市がどう考えているのか、その姿勢が問われているのだと思います。

 最後に、視察を通じ議員が現場に足を運ぶことの重要性を改めて感じています。

 2022年の譲渡のさいに当該施設に足を運び施設の役割や実態を掴んでいたら、市が事業を手放すことについて市議会内で議論をもっとできたかもしれません。それは現在もまったく同じで、現場を知る努力をし続けていこうと思うと同時に、今回、こうした視察ができたことは本当に良かったと思っています。説明していただいた梅花園、社会福祉事業団、社会福祉協議会のみなさま、福祉部の方々、ありがとうございました。

9月議会の一般質問について報告します。

遅くなりましたが、9月議会の一般質問の文字起こしをアップさせていただきます。

1、下関市立大学の専攻科設置構想について 

本池 下関市立大学への専攻科の設置について質問する。9月11日付の毎日新聞で報道され、既にご存じの方も多いかと思うが、「日本の大学のシステムとして想定されていないこと」がこの下関の街で、下関市長や元副市長たちがかかわった下関市立大学で起こっているという事実に衝撃を受けている。

その記事の見出しには「教研審経ずに計画進行」「理事長(元副市長の山村氏) 市長の要望受け担当教員採用」「教員9割が撤回求める」とあり、「ガバナンス上大いに問題」として、大学のガバナンス(統治)に詳しい明治学院大の石原教授の話として、「学内にこれまでなかった組織をつくるときには、従来いる専門家(教員)の意見を聞きながら進めるのが当然だ。そもそも、事前に教育研究審議会で承認を得ない限り、教育研究の中身に関わる人事やカリキュラムを決めることはできない。日本の大学のシステムとして想定されていないことを市長と理事長が決めているということは、大学のガバナンス上、大いに問題がある」との意見が紹介されていた。

何度も申し上げるが、「日本の大学のシステムとして想定されていないこと」が下関市立大学では起こっているというのだ。

まず、事実関係について前田市長に質問する。この記事で書かれていることはすべて事実か。5月30日に市長応接室で山村理事長、元副市長ですね、らに対し「(研究者と)ぜひ会ってほしい。下関の何か役に立ってくれる人になりそうだ」と話していた、つまり市長が直接大学トップに特定の研究者の招聘(へい)を要請していたというのは事実か。

前田市長 毎日新聞は私も読んだし、毎日新聞から独自で取材をいただいて、しゃべれることはしゃべり、だいたいその通りに書いているなという感じだ。

本池 市長はどのような指示をされたのか?

 前田市長 私は政策決定をしていく過程でいろんな部署と協議する。いつもと同じ、普段の仕事の延長線上であったと思う。すべての政策がそうだが、こういうことをやりたい、こういう話をとり入れたいなど、議員もやられていることをしただけだ。これを確実に押し込めなど、そんなことはこの2年半(当選後)に1回もしたことはない。私がアイディアやつなぎたいものを持って来て、みんなでやってみないかと、部長や課長と話をしてコンセンサスをとり、下関でやれそうだと思ったときに政策が決まっていく。予算はどうだとか、5年かけてやるか、この量なら2年でできるからやってしまおうとか、いろいろスキームを組んでいく。そういう流れでやっている。私が指示したのは、私が非常にIN―CHILD(インチャイルド)、インクルーシブ教育を専門的に非常に熱意のある方をご紹介いただき、この方はすごくいいなと思ったので、市大の理事長に「会って話をしてみませんか」といっただけだ。

本池 この専攻科設置について、大学では「前田市長の意向である」と伝えられており、しかも事前に専攻科設置についての議論など何もなかったところに、いきなりトップダウンで持ち込まれたことから混乱が広がっているようだ。そこでは琉球大学のH教授の研究チーム3人を招聘する、つまり特定の人物の採用ありきで物事が進んでいることへの疑問があるようだ。経済の単科大学に、教育学部の専攻科を設置するというのだから、「いったいなにが動いているのだろうか?」と思われるのも無理はない。

大学において、H教授の研究チームを招聘する理由として「市民から高等教育機関でリカレント教育としてのIN―CHILD手法の講座開設希望が強く、下関市からの要請、市議会からの開設要望があること」との説明がされているが、誰がいつ要望したのかを一つずつ確認したい。

前田市長が理事長に直接要請したほかに、市民からの開設希望が強いことや、市議会からの要望とある。まず、市民からの開設希望というのは、誰がいつ、誰に対して希望したのか。まずこの件で市民からの要望があったのかお答えいただけたらと思う。

今井総務部長 市としてはとくに要望はいただいていない。

本池 聞きとりでも通告していたが、大学には確認されていないのか。

今井総務部長 大学の方でははっきりと団体とか市民などから要望をいただいているということはないと思っている。個人的に市民の方からの要望があったのかもしれないが、確認できていない。

本池 大学内でH教授のチームを招聘する理由として市民からの要望をあげているが、そのような事実は市としても承知していないし、大学でも個人的にかもしれないが、市民の要望というのはどう思われるか。

今井総務部長 大学でのことなので私の方から明確にいうことはできないが、市が市民の方から直接要望をいただいたというのは、これは確実にない。大学の方ははっきりわからない。

本池 議会からの要望も招聘理由の一つにあげられている。下関市議会がいつどのような形で要望したと市立大学はいっているのか、事実確認したい。市議会が決議なり要望を市立大学に対しておこなった事実はあるのか。

今井総務部長 これも市立大学でのことなので、はっきりと私から申すことはではないが、6月の定例市議会における一般質問(6月11日の安倍派・井川典子市議の一般質問)でインクルーシブ教育に関する質問もあり、大学でのとりくみを期待する旨の発言等もあったが、下関市立大学に問い合わせしたところ市議会から要請があったという事実は確認できなかった。

本池 市立大学の執行部は大学内で嘘の説明をしたということになるが、そういうことか。

今井総務部長 市としてはどういうことをいっているのか確認できていないので、ここで明確に嘘であるとかどうこう発言することはできない。

本池 市議会からの要望といえるかどうか疑問だ。前田市長は、なぜ下関市立大学に必要であると判断されたのだろうか? また、H教授と市長はどのような面識を持たれておられるのかうかがう。あと部長なり、教育長なりのなかで面識がある方がいらっしゃれば、どなたが面識があるのか答弁していただきたい。また、役所のいずれかの部局で今回の市立大学の専攻科設置について検討なりされてかかわっていた部局があれば、いつからどのようなとりくみをされているのかお答えいただきたい。

今井総務部長 市長の公約にも総合大学化がある。しかしこれはすぐに実現するのは大変難しいものだ。学部にこだわらず、新たな学問分野に挑戦することは可能であるので、市立大学の経済学部の組織や教員の方などはそのままで、新たなる分野に挑戦するということだ。インクルーシブ教育のとりくみは、総合大学化を実現する第一歩になると考えている。

この専攻科は現役の教員や大学を卒業した教員免許状を取得している者を対象にしたものである。これらは資格取得も視野に入れた社会人が求める教育の提供がこれからは求められていると考え、昨今のインクルーシブ教育の必要性に鑑みてとりくみを始めたところである。これについては各部局が連携して検討したわけではなく、総務部のなかで検討して市として判断をしたところだ。

総合大学化については、本格的に中長期的な方向を視野に入れた検討は総務部だけでなく教育委員会や産業振興部や各部局の職員も入れてワーキンググループをつくり、今、検討しているところだ。

本池 専攻科の設置については総務部といわれたが、いつからどのようなとりくみをされていたのかもう一度お聞きする。

今井総務部長 大学におけるインクルーシブ教育のとりくみについては令和元年6月4日に文書にて当該のとりくみの推進を大学の方に指示している。内容は2項目だが、一番目は学校教育法第91条に規定する専攻科の設置、それから公開講座をはじめとするリカレント教育の充実など、インクルーシブ教育に関する修学の場の提供ということである。二つ目は専門家による教職員への指導、助言、相談センターの設置など包括的な支援を必要とする市立大学の学生への専門的な対応を指示している。下関市立大学においては本市からの要請にもとづき、リカレント教育センターの設置、特別専攻科の設置などを検討したと聞いている。

専攻科の必要性についてだが、インクルーシブ教育については文部科学省が平成24年に方向性をうち出し、障害のある子の就学手続きは、それまで特別支援学校に進むのが原則だったが、本人や保護者の意見を尊重しつつ、一般の小・中学校と合わせて総合的に判断することとなっている。このような教育上の対応は、平成28年4月に施行された、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律とも相まって、義務教育段階から高等学校、大学と、高等教育でも迫られており、一般社会においてもヒューマンマネジメントの方向が求められていると想定されている。以上のようなインクルーシブ教育の考え方や今後の需要を考え、人材を育成する高等教育機関においてもインクルーシブ教育へのとりくみを推進することが必要であると市として判断したため、大学にそのとりくみを指示している。

本池 H教授と前田市長はどのような面識を持たれているのか。

前田市長 2年ほど前の秋頃だったと思うが、発達障害に関心のある一般市民の女性の方から、非常に力を入れておられる先生がいらっしゃるのだが、話を聞いてもらえないかといわれ、お会いしたのが初めてだった。そのときに非常に情熱的で、発達障害に力を入れておられる方で、これがH教授だが、提案されているIN―CHILDというプロジェクトに私も関心が生まれ、最初は市内の小学校、中学校一校ずつで平成30年度に試験的におこなうきっかけだったと思う。

本池 その後何度くらいお会いになったのか。

前田市長 これまで2度、3度くらいお会いしていると思う。

本池 2、3回で必要な人材だと判断されたということですね。インクルーシブ教育そのものはなにも否定するものではないし、教育現場の評価や実際にかかわっている方方の判断に委ね、良いものであれば積極的にとり入れるのも選択だと思う。問題は、そのような教育について、下関では教育現場からの要請や必要性からというよりは、行政や政治の側が前のめりになり過ぎているように見えて、これはいったいなにが動いているのだろうか? と疑問に思うわけだ。そのことは、この専攻科設置の進め方にも如実にあらわれているように思えてならない。一言でいえば強引であり、それこそ大学のガバナンス上おおいに問題であると見なされる事態を招いてしまっている。

そもそもこのような専攻科の設置は下関市立大学の「第三期中期計画」にも存在していなかったものだ。5月30日に市長応接室で山村理事長、元副市長ですね、に市長が要請し、6月19日の市立大学における経営企画会議で突如出てきた話であり、その後の26日の経営審議会で開設方針を決めるという急なものだった。一般的に大学で学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止に関する事項は、その大学の将来を見据えながら学内での論議を重ね、現在の大学の力量や学問分野の連関などを踏まえたうえで、本当に必要とされる学科を設置するべく、大学全体で築き上げていくものだと専門家の方からうかがった。今回のやり方は、非常に思いつきのような形でトップダウンで事が動いており、まず第一に教職員の理解や合意がまるでないのが特徴だ。

下関市立大学の定款によると、こうした専攻科を設置する場合、教育研究審議会の意見を聞き、経営審議会で設置方針について審議するとなっている。教育研究審議会には現場の教授たちも多く含まれ、定款第23条の審議事項として「教育研究審議会は、次に掲げる事項を審議する」とあり、そのなかには「重要な規定の制定及び改廃に関する事項のうち、教育研究に関する事項」「教育課程の編成に係る方針に関する事項」「その他市立大学の教育研究に関する重要事項」と明記している。既に内定通知まで出されているというが、現在、この専攻科の設置手続きとしてはどこまで進んでいるのか。定款に基づいて進んでいるのか、定款に反した状態であるのか認識をお聞きする。

今井総務部長 下関市立大学に確認したところ、現在、令和3年4月の設置を目指して検討を進めているということだった。進捗状況については適時市議会の方に報告をさせていただこうと思っている。また、定款に違反はしていないと考えている。

本池 先ほどのべた定款には違反していないということか。

今井総務部長 定款に違反していないと考えている。

本池 専攻科の開設方針を決めた経営審議会の委員は、理事長、副理事長、理事長が指名する理事、法人の役員又は職員以外の者で大学に関し広くかつ高い見識を有する者のうちから、理事長が任命する者、と規定されている。任命権者は理事長だ。この経営審議会の委員のなかに、「一般財団法人H研究財団」(H教授の名前がついた財団)の理事をされていた方がいらっしゃることを認識しておられるだろうか。そして、その方が26日の経営審議会では非常に推進する側から意見をのべられたと耳にしているが、事実だろうか。

今井総務部長 多分その方は、今年の4月1日に経営審議会の委員に就任されたと認識している。確かにH財団の理事をされていたということは私も聞いているが、すでに4月1日付でH財団の理事を辞任したと聞いている。

本池 認識しておられたということですね。私も気になったので、法務局に行って「一般財団法人H研究財団」の履歴事項全部証明書をとってみた。先ほどのべた下関市立大学の経営審議会の委員をされている方、H教授の研究チーム3人を招聘すべきと積極的に発言なされたと聞いている方が、昨年10月1日に成立したこの一般財団法人H研究財団の理事として名前を連ねておられ、「平成31年3月1日に辞任」との登記が今年6月28日付でなされている。経営審議会が開かれた6月26日の2日後に登記を急いで書き換えたのだろうか。

ついでに申し上げると、この一般財団法人H研究財団に、この市議会のなかでもかかわっている方がおられる。6月議会で井川典子議員が熱心にIN―CHILDについて説いておられたのが不思議だったのだが、設立から理事をつとめておられ、「平成31年2月23日辞任」との登記が3月25日付でなされている。さらに、亀田博議員が評議員として名前を連ねておられる。市長も在籍しておられた会派のみなさんは、勢揃いでいったいなにをされておられるのだろうか。このH研究財団の主たる事務所が置かれているのは、先ほどものべた市立大学の経営審議会の委員をされている方のご親族が事業をされている場所だ。

そこで質問だが、H研究財団の理事をなさっていた方は山村理事長の任命によるものなのか確認する。

今井総務部長 理事長が任命するということだから、そのとき理事長であった山村理事長が任命したということだと思う。

本池 山村理事長が「大学に関し広くかつ高い見識を有するもの」と判断した根拠はどのようなものだったのか。

今井総務部長 大学の方にそのことについて聞きとりをさせていただいた。議員さんのいわれた方については、平成31年4月1日付で理事長から経営審議会の外部委員として任命を受けておられる。選任した理由を確認したところ、本市で企業主導型保育所を起業し、成功させているため、経営感覚にすぐれている人物であると考えたこと、男女共同参画の観点から女性の委員であることの二点から委員への就任をお願いすることになったと聞いた。

本池 専攻科設置すなわち研究チーム3人の招聘とそれにともなう市の財政負担は数千万円を想定しているといわれている。仮に設置したとして専攻科に進もうとすると、学費は大学院生の半額である27万円であり、計画通りに10人が確保できたとして収入は270万円にとどまる。それに対して教員3名、つまりH教授と門下生を含む3人の人件費、事務職員を雇う経費などの負担はみな運営費交付金の増額でまかなうといわれている。つまり、市長が「この人だ!」と思った特定の教授なり研究者を市民の税金を投じて雇うということになる。個人的な利益誘導ではないか、私物化ではないかという指摘もあるわけだが、市長はいかがお考えだろうか。

前田市長 市立大学のためにきっとなるものだと信じている。

本池 今議会には議案第202号として、下関市立大学の定款変更議案が出されている。この議案は理事会で今回のような専攻科の設置などを決められるよう、問題になっている教育研究審議会や経営審議会の役割として明記している「大学、学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止に関する事項」を審議するという文言をみな削除し、好きなようにできる仕組みづくりであろうと私は認識している。ダメなら定款変更してでもやってしまおうというやり方だ。チェック機能を果たすべき市議会がこのような「大学改革」の名を借りた大学の変質を開けて通すのか、その判断が問われている。

何度もいうように、インクルーシブ教育そのものの是非についてここで訴えているのではない。必要なものであれば教育関係者なり、それこそ大学の9割の教員が撤回を求めるという事態を招くのではなく、みなの理解を得たもとで推進するべきだと思う。そうしなければうまくいくものもうまくいかず、無理を押して道理が引っ込むだけのように思う。今回の専攻科設置のやり方はあまりにも強引であり、市長が気に入った方を次から次へと雇う大学になるというのであれば、それは利権の具にしているという批判を免れることはできない。江島元市長は市長退任後、加計学園の系統である倉敷芸術科学大学に雇われていたと聞く。私学ならまだしも、公立である下関市立大学でそのような真似事が始まってよいのだろうか。

琉球大学教育学部特別支援教育専攻科は、定員割れを理由にして平成30年度をもって廃止されている。そして、今年度より教育学部特別支援教育特別課程に再編されている。琉球大学で廃止された機関を下関市立大学に受け入れ、そのために大急ぎで今年に入ってなにかが動き始めた。私にはそのような印象にしか見えない。

先ほどの答弁から明らかになったように、市民からの要請、議会からの要請の実態は極めて曖昧であり、市長の要請、ないしは直接のH研究財団の関係者でもあろう一部の市議会議員、経営審議会委員の要請等によって事が動いているようにしか見えない。これは利益相反が疑われても仕方がないものだ。

市民の皆様から見て、公正公平であるかどうかを疑われるような事態を招いており、市民の皆様の理解、そして大学関係者の理解を得られないのであれば、この話は振り出しに戻すべきであると訴えて、この質問を終わる。

 

2、公共施設マネジメントについて

本池 公共施設マネジメントについて質問する。国の進めるインフラ長寿命化計画の地方版とされている「公共施設等総合管理計画」だが、下関市では2016年2月につくられ、この具体的な進め方を示した「公共施設の適正配置に関する方向性」がパブリックコメントや市民アンケートを経て2018年12月に策定された。このなかでは下関市が持っている公共施設のすべてについて、残すもの、集約化、複合化、廃止するなどの方向性を打ち出している。前回64カ所の公衆トイレの廃止について質問したが、市民活動の拠点となっているいくつかの場所で廃止や集約化の計画が動き始め、各地で市民の批判が噴出する事態になっている。市財政が厳しいという面はあると思うが、市民の怒りの声や不安な思いを耳にするたびに、このままでいいのだろうかと思う。

質問だが、下関市では計画期間を20年間とし最低30%の公共施設の延床面積を縮減することを目標としている。まずこの数字がどのように出されたのか。根拠を示してほしい。

今井総務部長 平成28年2月に策定した下関市公共施設等総合管理計画においては、計画期間における総人口および生産年齢人口の減少割合は23~27%、公共施設等にかかる将来の更新費用の不足割合は約38%と予測されていることから、これらを総合的に判断して30%以上の削減という目標を設定した。

本池 将来人口予測に下関市は国立社会保障・人口問題研究所のデータを用いている。下関市では2015年10月に「下関市人口ビジョン」を策定しているが、その数字を使わなかったのはなぜか。

今井総務部長 前段階の平成27年3月に策定した下関市公共施設マネジメント基本方針においてもすでに国立社会保障・人口問題研究所の数値を使用していた。下関市人口ビジョンでは基礎としている数値は同じだが、今後も人口流出に歯止めがかからず、純移動率が縮小しないと仮定した場合や、合計特殊出生率が上昇し純移動率が縮小した場合など、将来人口を数パターン想定し、このうちもっとも縮小幅が小さくなるものを展望人口として示している。しかしながら公共施設マネジメントにおいては全国水準等と比較検討が必要となるため、より汎用的な国立社会保障・人口問題研究所の数値をそのまま用いることにした。

本池 全国の自治体が公共施設等総合管理計画を策定しているが、他都市を調べたところ、北九州市は40年間で20%、呉市は30年間で30%、なかには目標数値はあえて出さず住民との協議によって進めている自治体もあるようだ。下関市の20年間で30%という削減目標は他都市と比べてかなり高い数値だ。それが人口予測から来ているのであれば、下関市の人口ビジョンの展望人口に沿ったものであってもいいのではないかと思う。この数字のおかげで多くの市民が不安を抱えるものになっているからだ。この計画は経過年数や利用状況から策定したと、これまでの答弁でいわれているが、数字では図れない利用状況を見るべきではないだろうか。

今日紹介したいのは集約対象施設になっている彦島・老の山にある勤労青少年ホーム「ユーパル下関」だ。1973年に建設され築46年になるこの施設も2022年までの前期に集約化の対象となっている。まずこの建物が建設された経緯や目的を述べてほしい。

勤労青少年ホーム「ユーパル下関」

山本産業振興部長 昭和45年に施行された勤労青少年福祉法においては勤労青少年の福祉の増進を目的として、地方公共団体による勤労青少年ホームの設置に対する努力義務が規定されていた。本市においても勤労青少年の福祉と健全な育成をはかるため、働く青少年が余暇を有意義に活用し、充実した職業生活を送ることのできる施設として昭和48年6月に、下関市勤労青少年ホームを開館した。

本池 当時造船・鉄工業が栄え、若い労働者が非常に多かった彦島地区に建てられたという話も聞いた。現在15~35歳までの登録会員は76名おられ、定期的に施設を利用する登録団体も無料で使用できるようになっているようだ。現在の利用状況を教えてほしい。

山本産業振興部長 平成30年度の年間利用者数は2万189人で、うち市内に住所または勤務先を有する15歳以上35歳未満の勤労青少年の利用者が8409人、全体の約42%であり、一般利用者は1万1780人で全体の約58%となっている。勤労青少年については6団体ある音楽団体の利用が大半を占めている。

本池 ユーパルでの活動を紹介したい。音楽活動では、吹奏楽団2団体と、子育て支援団体の楽団も利用されている。下関のなかでも歴史ある楽団だ。毎年市民会館や生涯学習プラザで大きな演奏会を開いている。子育て支援団体は、子どもを連れたお母さんたちで構成され、子どもたちも自由に、鍵盤ハーモニカなどの楽器やダンス、歌で参加している。卓球は11団体ほどが所属しており、毎年3回、指定管理を受けている管理公社の主催で卓球大会も開かれている。中国料理教室、ピラティスの教室、フラメンコの教室もある。小さな施設で非常に多彩な活動がおこなわれている。このほかロックバンドやヨガ、尺八、パン教室、韓国料理教室などがおこなわれている。今後どこに集約化するつもりだろうか。

山本産業振興部長 集約先等の具体的な内容についてはこれから検討していきたいと考えている。

本池 利用者のみなさんからすれば、「どこで練習するのか」が真っ先に問題になると思うが、集約先が決まってもいないというのは無責任な話だと思う。この間、スポーツ、料理、ダンスを楽しまれている姿に触れ、話をさせていただいた。そのなかでもっとも感じたことは、みなさんが練習の日を楽しみに、生きがいとして足を運ばれていることと、その「場所がある」ことがいかに大事であるかということだ。

吹奏楽のあるお母さんは、「毎日の子育てで大変なことがあっても、ここにくれば誰かがいて、おしゃべりして、子どもを見ながら演奏できる。毎週の練習日を楽しみにしています」といわれていた。子育て世代の方たちにとってはこういった活動にはかなりの制限があると思うが、ここでは子どもたちも大人の演奏に参加し、そばでお弁当を食べたり、みんなで遊んだり、ときにはいろんな大人に注意もされながら、のびやかにすごしている。卓球や料理も同じだ。

私もこうして各地域にある施設が子育て世代や忙しい現役世代、高齢者の方の健康や生きがいを支えていること、それが市民レベルでの元気をつくり、地域の発展に貢献していただいているのだと再認識したところだ。

吹奏楽やバンドなどの音楽活動をされている方たちは、ユーパルには楽器庫があり、毎回重たい楽器を運ばなくてもいいことが活動を続けていくうえで大変ありがたいといわれていた。ドラム、ティンパニー、マリンバなどの大きな打楽器もあるので、楽器を置く場所があることが活動を保障するものになっている。さらに、現役世代ばかりで活動は夜になるが、施設が山の上にあるため、夜に音を出しても周辺住民とのトラブルも起きていない。吹奏楽などの大きな音はNGとなっている施設も多く、「どこか別の場所」を探すのは大変だ。

これほど多くの方々に大事にされ、必要とされている施設だ。このような多彩な活動があることは下関市としても誇れることであり、大変ありがたいことだと思う。集約化はそれほど急ぐことではないし、活動をつぶすことがないよう一旦は存続をお願いしたい。

この一つの事例からも、公共施設の廃止は慎重でなければならないと思う。みなさんのお話を伺ってみて、場所がなくなることで活動をやめざるをえない団体が出てくるのではないかと懸念している。

今後、ユーパルだけでなく市全域で市民の活動の拠点となっている施設が廃止・集約されていくことは、市民の体育・文化活動の弱体化を招き、ひいては下関市の活気を失うことにつながるのではないだろうか。健康寿命の延伸政策も国あげてやられているし、教育委員会でも生涯学習を推進しておられると思う。政策の矛盾を感じるが、行政としてそうしたソフト面からの検討はなされたのか。

今井総務部長 総合管理計画、方向性を策定するに当たっては関係部局と一緒にさまざまな検討をおこなって策定した。実際の実施にあたっては、利用者の方や関係者の方への説明、対話に十分な時間をかけておこなうべきだと考えている。とくに住民のご理解を得ることは重要なことだ。個別の施設の存廃、複合化や集約化、譲渡などの検討にあたっては、数値目標のみにこだわることなく、市民の方々との対話をはかり、ご理解をいただきながら実現に向けてとりくんでいくことを原則として進めていきたい。

本池 公共施設等総合管理計画をめぐっては、自治体によってとりくみはさまざまだ。同じ削減を目的としているところでも、地域に必ずある学校は残して、そのほかの公共的なものを学校に集約し、高齢化が進むなかでとり残される住民がいないようにしている自治体もある。市と地域との話し合いによって施設の管理・運営の方法を考えた自治体もある。そういったなかで下関の計画は一律に耐用年数や数字的な利用状況だけで判断している印象がぬぐえず、どのような街にしたいのかというビジョンが見えてこない。

ここに宇部市の「公共施設等総合管理計画」がある。下関市と同時期に策定されたものだが、その後に下関市のように施設一つ一つについて「廃止」「集約」「存続」など明記している「方向性」は出していない。なぜなのかを政策広報室政策調整課に聞いてみると、「策定段階では個別の施設をどうするのかは決められる状況になかった」との答えだった。「個別の方向性については、その施設を使っている市民の意見を聞く必要がある。今後減らすという方向は出しているので、もしかしたら全員が納得いくような方法にはならないかもしれないが、市民の方とお話したうえで今後の方向性を決めていきたい」といわれていた。市民とともに考えていくことが大前提だ。長野県飯田市では、総合計画そのものを住民と一緒に考えたそうだ。時間はかかるが、そのことによって住民の自治意識の涵養になるとりくみであったそうだ。

公共施設は市民の財産であり、市民生活を支える施設で、市が勝手に決めることはできないものだ。国のインフラ長寿命化計画が公共施設の統廃合のみに切り縮められていること、多くの自治体が翻弄されていることに大変な危機感を覚える。削減計画を出さなければ交付金が下りないということもあるようだが、今の下関市のようなやり方では今後あちこちで住民との衝突になることは明白であり、対象施設の説明員となる職員さんにとっても心が痛むやり方ではないだろうか。

人口減少が進む小さな地域では、まちづくり協議会や自治会役員、民生委員、学校関係者のみなさんが、地域を存続していけるよう、さまざまなとりくみを必死になってやられている。その住民を守る行政が、一番に住民の暮らしを守る立場を投げ捨ててはならないと思う。住民の暮らしや活動に対する思いに目を向け、財政が厳しいなかでも市民の力を借りながら下関の活力を維持し発展させていくことこそ、もっともリーダーシップが問われることだと思う。

下関市の公共施設マネジメント計画は全面的に見直し、住民とともにまちづくりをしていく視点から再考すべきだと思う。総務部長さんいかがだろうか。

今井総務部長 公共施設マネジメントの推進にあたっては全国一律ではなくそれぞれの自治体の実情に応じてとりくんでいくものだと理解している。本市においては公共施設が多く延床面積が非常に多いこと、さらに老朽化している状況にある。他市と比較しても一層迅速なとりくみが求められていることから、本市独自のとりくみとして、公共施設の適正配置にかかる方向性を策定したところだ。これは施設所管課が策定する個別施設計画や各施設マネジメントの指針となるものと考えている。公共施設の適正配置に関する方向性は、決定事項ではなく、市民の方々と議論を深めて行くための、現時点での市の考え方を提示したものであり、今後市民の方々と対話をはかり、ご理解をいただきながら実現にとりくんでいく。

本池 住民の活動にしっかり目を向けていただきたい。最後になるが、今月29日に海峡ゆめ広場でおこなわれるコーズマーケット、そして来月27日には深坂の森「自然の家」で、ユーパルを拠点にしている吹奏楽団のコンサートがおこなわれる。幅広い年齢層の市民や子どもたちがいきいきと演奏される姿を執行部のみなさんにも、議員のみなさんにもぜひとも見ていただきたいと思う。