9月議会での一般質問【新下関学校給食センターについて】のご報告。(文字起こし)

20日に一般質問をおこないました。今年4月から稼働している新下関学校給食センターについて、質問と答弁の要旨を紹介させていただきます。長いですが、ぜひご覧いただけますと幸いです。傍聴していただいたみなさま、ありがとうございました。

今年4月から稼働を始めた新下関学校給食センター

稼働後からの状況

本池 まず、稼働後の状況について確認する。6月議会で文教厚生委員会に報告された資料の一部を表示しているが、ここにあるように、センターの稼働にともなうトラブルがたくさんあった。とくに4月~5月のトラブルに関してはこの表の内容にとどまらずたくさんの苦言があった。現在はそうした状況もおちついており、味がしないとか、給食が一部未提供だとか、食器が足りないなどのトラブルはほぼ起きてはいないようだ。初期の混乱状態から現在まで、必死に現場で子どもたちのために力を注いでいただいた学校の先生方、給食センターの関係者のみなさまにまず感謝する。

ただ、今回の新センターは稼働して終わりではない。むしろ、計画段階では学校関係者や給食に携わるみなさんの不安に応えないまま強行してきた経緯もあるので、行政主導の民設民営のセンターの検証になるものだと思っている。今後もしっかり見ていくし、安全・安心・安定的に給食を提供していくために必要なことは現場の実情に応じてきちんと対応しなければならない。6月議会と今回、文教厚生委員会において教育委員会から説明がされているが、かなり不十分さを感じているので改めて質問する。まず、この5月23日以降の発生事案について示してほしい。

藤田教育部長 4月9日から5月23日まで7件あり、文教厚生委員会で報告した。その後は6月に異物の混入が発生しており、このたびの文教厚生委員会にて報告させていただいた。

本池 異物混入はどこの学校であったか。

教育部長 垢田小学校と西山小学校だ。

本池 この表の「未提供」分について聞く。4月9日の玄洋中学校では「豚丼」、4月12日勝山中学校では「生揚げのみそがらめ」、5月23日の長成中学校では「もやしのソテー」が未提供となっている。この未提供への対応として、玄洋中学校、勝山中学校に対しては4月22日に「追加提供」としてからあげが提供された。長成中学校に対しては当日に代替え品の「レトルトカレー」が提供されたとの報告があっている。この「からあげ」と「レトルトカレー」の提供については誰が判断をしたのか、また、教育委員会として目視で実物を確認されているか。

藤田教育部長 日々の対応については市の組織である新下関学校給食センター運営管理室にておこなっている。4月22日に玄洋中と勝山中に追加で提供した食材、からあげについては、運営管理室が受配校の栄養教諭、アグリフードサービスと協議のうえ決定し提供したものだ。まだ5月23日に長成中に提供したレトルトカレーは非常時の代替食品として、市の承諾のもと、アグリフードサービスがあらかじめ準備していたものである。提供するかどうかの判断は、運営管理室をはじめ教育委員会内でおこない提供したものだ。

本池 長成中学校のカレーに関してだが、委員会では「レトルトカレー」と紹介されていましたが、タブレットには実際に提供されたものと同じものを表示させていただいている【下の写真】。これは「レトルトカレー」なのか。これは非常食だ。この日未提供となったのは副菜の「もやしのソテー」であって、ご飯も温食もあった。そこにご飯とカレーが混ざったものが出てきて、これはメニュー的にも疑問を感じるが、この非常食はどういったときに使うものか。

藤田教育部長 これはまさに非常時のために備えているものであり、非常時において提供するためにアグリフードサービスがあらかじめ運営業務マニュアルによって備蓄しているものだ。

本池 非常時のとらえ方だが、以前中部調理場が水道管が凍って給食がつくれないというときにもこれ(非常食のカレー)がそのまま出せるということだと聞いた。一部の副菜が足りないときに出すものではない。それと、教育委員会に対して苦言を呈したいのは、委員会での報告のありかただ。写真を見て「レトルトカレー」だと思われるだろうか。学校保健給食課は「初期の段階だからこそミスが起こる」と委員会でいわれていたが、ミスがないとは思っていない。ただ、起きたことやそれへの対応は正直に報告しなければいけないのではないか。

給食とは、その日一日の栄養バランスだとか、カロリー摂取量が大事であって、一食一食がその子の成長や、将来の生き方、命に直結するものだ。あるときには足りず、あるときには多いというものではないし、ないからといって何でもいいから食べさせておけみたいな対応もまた違うと私は思う。トラブルがあってはいけないと思いますが、あったときに、その日なにが提供できるかを考え、対応する必要がある。ここで今後の対応について聞きますが、一部未提供がもし発生したとき、今後も「後日追加提供」になったり、この非常食が提供されていくのか。

藤田教育部長 まずそういったことがないよう万全な体制を整えていくことが第一だ。また一部未提供の内容、それがどういう学校のどういう規模で起こったかにもよるので、一概にどう対応すると申し上げられないが、毎日の給食が安全安心だということで、その場その場で時間のなかで最善の判断をしていくことになると思う。そのときの状況によって判断していくことが基本だと思っている。

本池 給食の基本に立って、あるときは多いとか少ないとか、こういった物が出されることがないよう細やかな対応を求める。次に、苦言の多かったうどん類に関して聞きますが、当初から「汁がない」といわれていた。少ないどころの話ではなく「ほぼない」状態であったようだ。水分を吸ってすごく膨らんで、短く切れて、ふにゃふにゃで、後でメニューがうどんと知って驚いたというお声もありました。うどんに関してその後の提供はどうなっているか。

藤田教育部長 麺類については初回の状況を踏まえてアグリフードサービスが受配校の栄養教諭とも相談しながら、作業時間や作業工程、また食材の量を調整するようにして、よりよい状態で提供できるよう努めているところだ。

本池 素材の量を少なくするというのは、麺の量を減らして汁を増やすという意味か。

藤田 麺が増えると煮込み時間も増えるという関係もあったので、若干麺を少なくするであるとか、その分出汁を増やして全体量としては十分な栄養がとれるよう検討しながら対応しているところだ。

本池 もっとも早く給食が到着する学校はどこで、食缶の到着時間は何時何分ごろか。

藤田教育部長 まず配送の関係で説明する。新下関学校給食センターでは7台のトラックを使用し、食器や食缶を学校別にコンテナ収納し、22校の各受配校へ配送をおこなっている。そのトラックについては小中学校合わせて3~4校を受け持っている。通常の給食開始時間や短縮授業による給食時間の繰り上げなど、各学校から提出された予定にもとづき、日々の配送計画を作成し、配送しているところだ。そのなかでその日の計画によって違ってくるが、食缶がもっとも早く到着する学校は、通常の給食開始時間を基準にして、10時24分到着予定の文関小学校が1番早い学校となる。

本池 麺類の「汁がない」という件に関しては、学校に到着してから食べるまでの時間が長すぎることが原因として上げられています。到着が10時24分ごろであるならば、でき上がり時間は何時か。

藤田教育部長 その日の献立および調理計画によって違うが、文関小学校の例でいうと10時10分に調理が完了し食缶をコンテナに収納・配送している状況だ。

本池 準備過程で、食缶の保温機能の高さについては何度もいわれてきた。今指摘している問題は、温かいけれども美味しくない、麺が麺とわからないほどだという問題だ。普通に自分のことで考えてみてほしいのですが、自分がお昼に食べるラーメンやうどんを10時10分に完成させ保温しておく人はなかなかいないと思うが、麺類に関してはとくにそんな状況だ。給食の質を落とさず解決する方法としては、すばらしい保温機能よりも、作り上げる時間を遅くしてセンターを出発する時間を遅らせること、つまりトラックも増やして対応するしかないとの指摘もお聞きしています。その体制を整えることは検討できるか。

藤田教育部長 一つの方法であろうと考えている。今年、新しいセンターができ、課題も含めて検証しているなかであるので、そういった状況も踏まえ、将来的には検討の課題の一つだろうと思っている。

本池 今発生している問題をどう解決するかという方向からしっかり考えていただきたい。ちなみに自校式の学校の場合だが、最終の調理(炒めたり、和えたり)というのは11時ごろから始まって、完成は4時間目の授業が終わる3分前だった。子どもたちにできたての美味しい給食を提供したい、それが子どもたちにとって必要だという思いからだ。それと比較して、新センターの建設・稼働によってこれまで起きてきた状況、またそれへの対応が誰の立場からの対応になっているか、よく考えてみていただきたい。とくに昨年一年間、学校現場の心配に対して教育委員会は、さまざまな場で「大丈夫だ」といってきた。学校現場の側からの動きでこれまで準備はされてきましたが、いざ稼働をしてみて、「これほど準備してきたのにそれでもいろいろ起きていて、恐ろしくなった」と学校現場もいわれている。

(2)現在の提供体制

本池 そこで聞くのは人員面での提供体制だ。6月議会の報告では、社員13人、調理員47人、特定技能実習生16人、配送業務19人(下関通運)、受取従事者35人の計約130人(常時約100人体制)でおこなわれていると聞いた。これが最新の数字でどう変化しているか。 続きを読む

6月議会一般質問「部活動の地域移行について」のご報告【文字起こし】

下関市議会6月定例会が閉会しました。私は今回、全国的問題となっている中学校部活動の地域移行について質問しました。今とくに中学校教師の長時間労働の原因のように扱われている部活動ですが、教師と生徒の信頼関係や、生徒の心身の成長にとって非常に大切なものです。少子化が進む学校現場では、部活動の地域(民間)移行が行政主導で進められていますが、現場や父母からは「このままでいいのか?」「子どもの成長にとってどうあるべきなのか」という意見や疑問の声が上がっています。執行部との質疑の文字起こしをご覧いただき、忌憚のないご意見をお願いいたします。

1.部活動の地域移行について

本池 一言で「部活の地域移行」といってもここにいたるまでこの数年間、勝利至上主義の指導、体罰問題、教員の超過勤務と働き方改革、少子化などが問題となり、たびたびとりあげられてきた。それらの結論として部活の地域移行ということが出てきているが、今の流れを見ていると、少なくとも子どもたちのためというよりも産業化、市場化の側面が大きいように感じている。国の方向性に振りまわされるのではなく、「下関の子どもたちをどうするのか」を据えた議論をしなければ本当の方向性は見えてこないのではないかと思っているし、その視点から質問する。

まず、下関市のこれまでのとりくみを簡単にのべてほしい。

田中観光スポーツ文化部長 令和4年1月から地域移行に関する意見交換を複数回実施。中学校校長会と課題共有・情報交換を重ね、地域移行に向けた実証事業を令和5年度から実施している。

磯部教育長 令和5年3月にはとりくみ状況や方針について学校及び保護者にリーフレットを配布し周知をおこなうとともに、令和5年度には下関市部活動地域移行推進委員会を3回開催し、市の方針やとりくみについて有識者、関係団体等からの意見聴取をおこなうなど、移行に向けた準備を進めてきた。

本池 このうち実証事業のDスポーツについて聞く。どのような経緯でDスポーツをすることになったのか。関係者の意見をどのように反映されているのか。

田中部長 国の運動部活動の地域移行に関する検討会議においてスポーツ団体等の整備充実などの地域移行における検討課題が令和4年6月に示された。関係団体と議論を重ねてきたが、今後の方向性を見出すことができなかったので、本市から実証事業の検証を提案した。

本池 それで令和5年度はとりくまれたが、活動の効果と課題は?

田中部長 令和5年度の実証事業は多様なスポーツをコンセプトとして、4つの団体へ業務を委託してきた。多くの参加者を得ることができなかったが、アンケートや生徒及び保護者から貴重なデータやご意見をいただくことができた。

本池 「多くの参加者を得ることができなかった」といわれたが、その参加者数から見えてくることとして、ニーズにあっていたのか。

田中部長 あっていないこともあったということだと思う。昨年度の反省を踏まえてやるので、参加人数も増えていくと思う。

本池 学校関係者やスポーツクラブの関係者のみなさんが、「下関市はなぜDスポーツなんかしたのか」といわれる。決める過程で関係者に了解を得たというが、決定事項を伝えただけで相談するものではなかったとの指摘もあり、その結果として参加者数なり厳しい評価に繋がっているのだと思う。それでも日頃スポーツをしておらず身体を動かしたいという子どもたちにとってのニーズはあったのだといわれるとそうなのかもしれないが、今は細かい部分ではなく大局の話をしている。学校関係者、生徒たち、保護者が今なにを望んでいるのかの把握が必要ではないかと思うが、そのとりくみはどうなっているか。

磯部教育長 今後のとりくみの参考とするため、市立小学校5・6年、中学生、及び保護者と教職員を対象にアンケート調査を実施している。保護者には部活動の地域移行への理解や地域クラブへの期待等について、教職員には地域移行後の地域クラブへの参加希望等について尋ねている。7月を目途に集計・分析し、当事者の声に寄り添ったとりくみを進めていきたい。

本池 保護者に対しては「地域移行への理解や地域クラブへの期待」について聞いたといわれるので聞くが、保護者アンケートの問9を示してほしい。

磯部教育長 「中学校にお子様が希望する部活動がない状況で、その競技や種目・分野の地域クラブ活動ができることになった場合、地域クラブ活動に参加させることを検討しますか?」という問だ。「検討する」「検討しない」の回答を求めている。

本池 これでは「検討する」が多くなるのは容易に想像がつくが、この設問は誰が考えたのか。

磯部教育長 教育委員会と観光スポーツ文化部での協議を踏まえて作成している。

本池 内容が実証事業に関するアンケートにしか見えず、教育委員会がやるのであればもっとみなさんがどんなことを思っているのかを拾うアンケートにする必要がある。これでは実証事業にとって都合のいい数字をとろうとしているといわれても仕方ない。教職員用のアンケートに関しても、地域クラブに参加するかしないかのようなもので、もっと先生方の思いを集約するもの、子どもたちへの影響・効果について深めるものでなければ意味がないと指摘されている。設問に関し検証と改善を求める。この事業の実施に関してスポーツ振興課は「部活がいつまで継続できるかわからないなかでのとりあえず受け皿を」という思いでおこなわれたと確認している。そうした思いや、実証団体として必死に受け皿づくりをしてくださっている方々にはありがたく思っている。ただ、「ゆる部活」のようなかたちでは子どもたちはついていけないし、保護者や学校関係者からも酷評される事態になっている。方針決定には現場の意見の反映が必須であることを申し上げておく。

中学校の部活の現状

本池 そうした不安定な事業がどのような影響を与えてきたのか。具体例として紹介させていただくのは男子バスケットボールだ【図1】。黒い囲みが現在男子バスケットボール部がある学校で、学校が終わり、部活の子は部活に、クラブチームに所属している子どもたちはクラブチームの練習に行く。そして部活だが、平日の練習時間は2時間になっているし、平日、土日に1日ずつ休みをいれなければならなくなっている。部活が終わり帰る時間は夏場で6時、冬場は暗くなるので5時ごろだ。学校が終わるのが4時ごろなので、冬場は練習時間が1時間もない。部活が終われば基本的には帰宅だが、さらに練習したいという子どもたちがクラブチームで練習をしている。

クラブチームのなかには、もともとあるクラブチームのほか、地域移行の流れのなかで新たにできたものがある。それらのなかでも市内全域から子どもたちを受け入れるところもあり、基本的に特定の地域の子どもだけを受け入れ、部活動をそのまま引き継ぐかたちで練習をしているところもある。会場は学校のまま運営と指導者が変わるというスタイルだ。

共通しているのは、もっと練習したい、強くなりたいという子どもたちの要求があり、鍛えてあげたい、伸ばしてあげたいという指導者の思いがあった。逆にいうと、今の学校の部活動がそうした要求に非常に応えにくくなっているし、市の方向性がこうしたニーズと乖離しているということがうかがえる。そしてクラブチームに行くには、会費、保護者の送迎が必要で、プロ傘下のチームともなればトライアウトもあって実力がなければ入れない。こうしたなかで練習機会に格差が生じている。状況を見かねた保護者が休みの日に体育館を借りて部員を引き連れて練習をさせているといったお話もある。またクラブチームに入部予定者が流れ、部活の人数が少なくなり、継続が困難になっているところもあるそうだ。部活の地域移行がすべてではないが、ここ数年で生じてきた混乱状況について教育委員会としてはどのように考えているか。

磯部教育長 自分にあった活動を求め、地域のクラブ等を選択している生徒も多く存在してきている。生徒数が減少する学校部活動が維持困難になるなかでは、自分の目的にあった活動の選択ができることは望ましいことだと考えている。

本池 練習したくてもできない、参加したくてもできないという格差が生まれてきている状況についてどう思われるか。 続きを読む

一般質問のご報告「難聴児の教育環境について」【文字起こし】

9月20日におこないました、一般質問「難聴児の教育環境について」について、質問と答弁(要旨)の文字起こしを掲載します。

下関市での療育について

本池 聞こえにくい、聞こえない状態の難聴児にとって、専門的な知見にもとづいた支援がいかに大事であるかはいうまでもなく、とくに先天性難聴の子どもたちには出生直後から多くの専門家がかかわって本人や保護者の支援にあたっている。国も、近年、難聴児の早期発見・早期療育推進に力を入れており、令和4年に作成された難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針にはその目的として、「早期に発見し、適切な支援を受けることにより、自立した生活を送るために必要な言語・コミュニケーション手段の獲得につなげることが望ましい」と必要性を強調している。難聴児やその家族への支援について下関市はどのような考えを持ってかかわっているのか。

冨本福祉部長 本市は下関市障害者計画において、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもと、障害のあるなしにかかわらず、誰もが地域から必要な支援を受けながら、地域とのかかわりのなかで自分らしく暮らすことのできる街を基本理念としている。難聴のお子さんやその家族についてもこの基本理念のもとに支援をおこなっていく。

本池 難聴といっても程度はそれぞれで、その子一人一人にあった支援や教育が重要だ。そのため難聴確定後も検査をくり返し、その子の難聴の度合いや性格にあった指導・支援がおこなわれ、成長段階にあわせて言語の取得、今後社会で生きていくために必要な力をつけていく教育がおこなわれる。その難聴児の家族や支援者からの相談に応じたりアドバイスをする役割を中心的に担っているのが、下関南総合支援学校に山口県が設置している「聴覚障害教育センター」だ。ここが0歳~成人までの相談を受け付けており、とくに未就学児に関しては定期的な療育を担っている。

しかし昨年度末、療育を担っていた先生が定年退職となり、その後任がいないとの理由で療育が途絶える事態になった。こんなことは通常ありえないことで、3月末の保護者への説明会では不安の声が相当に出たという。なぜこんな事態になったのかセンターを設置している県の特別支援教育推進室に尋ねたところ、推進室も3月15日に学校から「教育相談を担当する教員がいない」との連絡を受けて事実を把握したというが、「学校のことなので」「個人に頼りすぎていたのでしょう」という対応で、来年度の体制についても「学校のほうで検討中」という答えだった。質問だが、下関市のさまざまな部局がこちらのセンターとかかわりがあると思うが、療育の「縮小」の件について連絡はあったのか。

磯部教育長 令和5年3月22日付で「聞こえに関する教育相談の運営について」の文書を教育委員会で受けとっている。令和5年度の乳幼児等の相談及び支援の実施について、運営体制が整っていない状態であり、今後の運営については関係機関と業務の見直しを含め協議している旨の通知だ。

冨本福祉部長 福祉部においても同じ内容の通知を受けとっている。

本池 この連絡を受け、なぜこのような事態になったのかを確認はされたのか。
磯部教育長 通知文書を受けとる前に山口県立下関南総合支援学校から3月末で言語聴覚士の資格がある方が退職するため相談体制の維持が難しいと情報提供を受けていたことから改めての問い合わせはしていない。

冨本福祉部長 福祉部も同じような説明を受けている。そのため確認はしていない。

本池 今の「なぜ」の部分なのだが、「退職したから」ではなく、なぜ後任がいないのかという確認をしていただきたかったのだがそれはしていないということか。

冨本福祉部長 その後の体制を協議中と聞いていたのでこちらからは聞いていない。

磯部教育長 通知のなかで聞こえに関する教育相談については中断し、実施方法等が決定次第改めて知らせるとあるため確認はしていない。

本池 このときにもっと確認をしていればその後の対応も変わっていたのではないか。人事については山口県の問題だ。しかし今、実際に困っているのは下関の子どもたちとその保護者だ。これまで療育を受けていた未就学の子どもたちに関しては、一時的に療育が受けられなくなっていたが、定年退職された先生が非常勤で来てくださったことで5月から再開した。ただ勤務時間が週2日の10時間となったことで、これまで月2回だった療育は月1回になり療育の機会は半減した。また新規の受付ができていないため、令和4年度の後半~令和5年度の最初にかけて生まれ、難聴と診断された子どもはセンターで療育を受けられていない。乳幼児健診を担当している保健部ではこうした事態の把握はされているのか。

八角保健部長 把握していない。

本池 この度の件に関しては、下関市として山口県に対して抗議してもいい内容だ。しかし、この間センターとかかわりがある部局に聞きに行ったところ、「その件についてはうちではわからない」という言葉を何度も聞いた。この問題を通じて、市のなかに難聴児やその家族が相談をしたり、案内を受けるところがないのだと感じている。そしてこれまで難聴に関する情報提供や幅広い相談に乗っていたのがセンターであり、そこにいた先生だったということだ。保護者からすればまさか自分の子どもが難聴など思いもせず、まず受け止めることから大きな山を越えなければならない。たくさん涙も流されたと思う。そんななかで相談に乗ってくれていた先生がいなくなり、療育も満足に受けることができない。「早期療育ができないのなら、なんのための早期発見なのか」と涙ながらにいわれるお母さんにも会った。

今、考えなければならないことは主に3つある。1つは、半減している未就学児の療育の機会の確保を県と市で一緒に考えること。2つ目は、来年度から後任の先生が来ない場合、教育は学校で、補聴器のメンテナンス等の医療については宇部医大でおこなう可能性が高まっているが、これまで療育は一カ所で済んでいたのに別々に行かなければならなくなり、その分保護者が仕事を休んだりする必要が出る。この負担の軽減を考えていただきたい。当然1カ所での療育が必要なのだが、それまでの対応としてこの2点について考えていただけるだろうか。

冨本福祉部長 この事業については山口県の責任をもとにおこなわれるべきと考えているが、状況によっては本市の既存の事業などでカバーできるものも含めて対応を検討したい。

本池 そして3つ目が専門的な教員の確保と育成だ。これを山口県に対して問題提起をしていただきたい。なぜこのような事態が起きたのかを関係機関に聞いて回ったが、一番大事な部分についてが曖昧で、原因に目を向けることを避けているようにも見えた。県の推進室は「退職された先生のようなスキルを持った先生が他にいない」と定年退職された先生がいかに優れていたのかということを強調されていたが、スキルを持った先生がなぜいなくなったのか。調べていくと、平成20年に聾学校・盲学校・養護学校を統合し、5障害に対応した「総合支援学校」に移行したことにより、障害種別に精通した教員が育たなくなっている問題が見えてきた。例えば、聴覚障害専門の先生が知的障害児を担当することもあるし、異動もある。障害を持つ子どもたちにとってもプロがかかわることで獲得できるものがもっとあるかもしれないのに、その機会を摘んでしまうことにならないだろうか。専門性を持った教員の育成ができなくなっている実情に目を向けなければ根本的な解決にはならず、保護者が必要としている1カ所での療育も実現はできない。現場を抱える自治体の責任として県に実情をあげるなど能動的に動いていただきたい。

冨本福祉部長 まずは下関南総合支援学校に現状を確認したい。そのうえで山口県に対しても確認をおこない、難聴のお子さんや家族の支援に関して必要な場合には総合支援学校と山口県に対し何らかの働きかけを考えていきたい。

新生児聴覚スクリーニング検査について

本池 次に早期発見に欠かせない新生児聴覚スクリーニング検査について質問する。この新生児検査だが、出産後3日ごろにおこなわれるもので、産院によって違いはあるものの3000~1万円ほどの範囲で全額自己負担となっている。負担感は大きいが、生まれたばかりの赤ちゃんの健康の状態はみんな不安であり、ほとんどの方が検査を受けている。一方で負担の大きさから検査を受けられない方もいる。 続きを読む