今年の夏、下関市が運営する大谷斎場の空調設備が故障し、多くの市民の方、ご遺族の方から苦情が相次ぎました。故障自体はどの施設でも起きるものではありますが、故障が起きたときの対応の在り方に加え、適正な維持管理を確認するために一般質問しました。以下、要旨をご紹介し報告といたします。
本池 今年の7月17日から8月8日までの23日間にわたり、下関市の火葬の約85%を担っている大谷斎場の空調設備が故障した。故人との最期のお別れをするために訪れた方々が猛暑のなか待機しなければならなくなり、車内で待つよういわれたり、館内で働くみなさんも大変暑いなかでお仕事をしなければならなかった。そのうえ、復旧まで時間を要したことから、「下関市はなにをしているのか」との苦情が多く寄せられた。すでに復旧はしているが、斎場の役割から考えたさいの施設の維持管理のあり方、緊急時の対応について考えなければならない。そこで、今回の故障の原因についてお聞きする。
山田市民部長 まず、大谷斎場の空調の故障により、長期間にわたり多くの斎場利用者のみなさまにご迷惑をおかけしたことをこの場をお借りしてお詫び申し上げる。この度の大谷斎場の空調設備故障の原因は、冷却ポンプモーターの異常により、館内に冷却水を送ることができなくなったことによるものだ。この冷却水ポンプモーターの故障は、施設の雨漏りにより配電盤のなかに雨水が侵入し、電気回路上の制御機器が故障したことで、過電流が生じ、冷却水ポンプモーターに過度な負荷がかかったことにより発生したものだ。
本池 8月8日の復旧までの流れを確認する。7月17日の故障を受けてから、いつ、どこに工事を依頼したのか、修繕の金額はいくらになったのか、契約方法についてお尋ねする。
山田市民部長 空調機能の障害が発生したのが、令和6年7月17日、午前9時15分頃で、ただちに空調設備の点検業務を委託している事業者に対して現況確認と原因の特定を依頼した。この事業者により、この日の午後1時ごろに故障の原因が特定されたのでただちに故障の解消のための修繕を発注した。修繕の契約相手方は山口合同ガス株式会社。契約方法は、競争入札により選定する時間的余裕がなかったことから一社随意契約とし、契約額は148万5000円。契約期間は7月17日~8月9日までの24日間。修繕が完了したのが8月8日の夜間で8月9日から正常に稼働している。
本池 復旧まで23日間という日にちを要した理由は。
山田市民部長 冷却水ポンプモーターを取り換える必要があった。このモーターが受注生産であったため納品までに時間がかかった。
本池 故障の間の利用者への対応について聞く。斎場は営業していたので、利用者に対してどのような対応をとったのか。
山田市民部長 ただちにスポットクーラーなどを手配し、この日の午後にはスポットクーラーを9台、大型扇風機を10台設置し、斎場利用者のみなさまがお過ごしになる環境の改善を試みた。また、葬祭事業者に対しても大谷斎場の空調設備の故障について周知し、利用者のみなさまには葬祭事業者を通じて、必要に応じてマイカーやバスなどの空調の効いた環境でお過ごしいただくようご協力をお願いした。
本池 利用者が暑い思いをしないよう、一応そうした対応がなされたのはわかった。利用者のみなさんに必要に応じてマイカーで待機してほしいといわれていることについて、扇風機やスポットクーラーを設置してもなお暑いという事実があったから、車で待ってもらうよう案内したということか。
山田市民部長 そのとおりだ。
本池 確認したところ、故障期間の火葬件数は216件ということだった。1件に対し遺族・親族がどれだけ訪れているかはわからないということだが、仮に5人であったとして、1000人以上の方々が1時間半~2時間も外の車で待たされたことになるし、火葬を終えるまでの間に親族で集まって故人を忍ぶこともできなかったということだ。一人の方が人生を終えること、悲しみとともに厳粛に故人を送る方々の立場にたったとき、「故障していたから仕方なかった」では済まない。利用を受け入れるのであれば、お金がかかってでも館内を遺族・親族が過ごせるようにするまでが「対応」だ。扇風機やクーラーを置きました、でも冷えませんでした、ということではない。今回は雨漏りによる故障ということだったが、これまでこのようにエアコンが使えず利用者に迷惑をかけてしまったことがあったか。
山田市民部長 近年の故障については、昨年度、吸収式冷温水器のファンモーターの故障により、令和5年9月16日から22日までの7日間空調設備が故障していた。このときはモーターの経年劣化が原因で、経年劣化箇所については、令和5年度において改修する予定としていたところ、改修工事請負契約締結の直前に故障が発生した。このさいにも今回と同様スポットクーラーや大型扇風機を設置し、斎場利用者のみなさまがお過ごしになる環境の改善に努めたほか、葬祭事業者に対しては空調設備が故障していることを周知するとともに、利用者のみなさまには葬祭事業者を通じて必要に応じて空調の効いた環境でお過ごしいただくように協力をお願いした。
本池 それでも、みなさん暑いとか寒いとかいろんな経験をされたので、苦情がたくさん届いたし、対応というのは考えていただきたい。今後の計画について聞くが、今回の事態を受け、斎場の建屋の工事が必要となると思うが、今後の計画を示してほしい。
山田市民部長 屋根の改修計画だが、令和9年度~11年度にかけて継続して実施することを計画していた。しかし今回の件をうけ、これを前倒しして実施するために所要の予算の確保に努めていきたい。設備改修についても計画的に進めていく。
その他の斎場の状況について
本池 その他の斎場の状況を確認するが、空調が故障している斎場はあるでしょうか。あれば何か所か。
山田市民部長 現時点で不調をきたしているものはない。
本池 6月の定例会に豊北町の自治会のみなさんから要望書が提出されていて、主にトイレの早期改修に関するものだったが、このなかに「冷暖房の効きが悪いため、冬季は寒くて困っている」との記述があった。今は「ない」とのことだが、何度も修繕を重ねていたり、経年劣化が進んでいるのが実態であると思っている。
先日の一般質問では墓地のことが出された。斎場も墓地も目立たないものだ。しかし、先ほどからのべているように、一度きり最期のお別れの場である重みに加え、遺体の適切な処理や伝染病予防など公衆衛生や、福祉の増進の観点からも必要不可欠であり、収益性だけではかれない。必要なお金をかけて設備を維持・管理することはもちろん、遺族・親族が不快な思いをしないようトイレや空調なども改修を進めなければならない。また、豊浦、豊田の斎場については集約化の方向性になっているが、もしも火葬炉や胞衣炉(えなろ)が故障したとき、困るのは市民だ。利用数や老朽化だけで安易に集約化していいものではない。非営利性のものだからこそ公共で運営されているのであって、今回の事態を教訓にして、再度、斎場の役割についてもしっかりと議論し、その重みにたって再検討することを求める。