川中支所移転の住民説明会に参加して

7月28日、川中公民館分館の講堂で川中支所移転に関する説明会がおこなわれました。下関市が2018年12月に策定した「公共施設の適正配置に関する方向性」のなかで、綾羅木本町の川中公民館分館と併設されている川中支所は川中公民館本館に移転し、建物は解体・撤去する計画になっています。

2月におこなわれた説明会にも参加しましたが、綾羅木地区の住民のみなさんのなかでは、公民館分館の撤去によって避難所が失われること、コミュニティ施設が失われることへの不安と、住民になんの相談もなく移転を一方的に進める行政への強い怒りが出されました。今回、市は改めて説明会を開いたのですが、前回の住民の思いに答えるものではなく、このたびの説明会も反対の声が相次ぎました。

もっとも意見が出されたのは避難所についてです。

川中公民館分館は災害が起きたとき最初に開設される避難所で、なにかあったら住民のみなさんが集まったり、支援物資なども届く場所です。移転によりそれが失われれば、綾羅木の住民のみなさんはどこに避難すればいいのか。今回、市はその代替場所として川中公民館(伊倉町)、川中西小学校を示しました。しかし、川中西小学校は土砂災害警戒区域に指定されています。その点についての意見が前回から何度も出ましたが、市が用意した回答は、土砂災害警戒時には「川中西小学校の体育館」を指定するということです。さらに綾羅木会館も新たに指定すると述べましたが、遠すぎるうえ狭いので、多くの人を受け入れることは不可能だといわれています。

「移転ありきの説明会ではないか。バス路線については綾羅木地区を通らないと意味がない。高齢者はこれから運転できなくなるので駐車場は問題ではない。あまりにも住民軽視ではないか。あなた方は下関市民の奉仕者として公共の利益のために勤務し、職務においては全力をあげて専念しなくてはいけない。綾羅木地区の住民を見捨てるのか。われわれの生活の拠点はこの支所だ。その回答がまったくない」

「以前から支所の移転の話はあった。別の場所に移転の話があり、どうなることかと様子を見ていたら、最近になって移転ではなくこの地域から支所そのものがなくなるということを聞いた。昨今、地震による津波が心配されるが、支所周辺に住んでいる人たちは支所をよりどころにしている。自治連合会の定期総会や敬老会もやってきた。役所の人たちはここに住んでいないから他人事だ。もう少しきちんと対応してほしい」

「川中支所周辺に暮らす高齢者が川中西小学校まで歩いていけると思うのか。たどり着く前にみんな倒れてしまう。一度でいいから自分の親を連れて歩いてみたらいい」

「以前は分館の一階にも和室や料理教室があったが、支所が狭いということだったのでみんな我慢して支所の改修に賛同した。人が集ってなにかをやる施設がないと地域は発展しないし、まちづくりを推進しているのは市ではないか。にもかかわらず、住民の交流の拠点をなくされるのか」

「平成4年に建てた川中公民館に詰め込むという考え方が信じられない。お金がないという話はあったが、ないのなら旧郡部の庁舎や勝山支所も建て、耐震対策を約束した本庁舎も違約金を払ってまで建て替える。綾羅木には一銭も落とさないのか」

「2年前にハザードマップをつくったとき、協議の結果ここに決めたのは市ではないか。なのに昨年末にここを閉鎖するという。決めておきながらやめるというのか。ハザードマップは印刷して26万人に配布したものではないか。どれだけお金がかかっていると思うのか。1年たたずに廃止などよくいえたものだ。私たちが勝手に決めたのではなく、市役所の人が来てが決めた。変更するなら代替場所を決めるはあたりまえではないか。地図の上で決めるのは簡単だがそこには血の通った人間が住んでいる。あなた方はなにもわかっていない」

このように、ひとりひとりが切実な思いを述べられていましたが、それに対して市の回答はあまりにも機械的なもので、そのことが余計に住民の怒りを買っていたように思います。下関市は今後20年間のあいだに公共施設を3割削減する計画を出しています。川中公民館分館だけでなく、体育施設、トイレ、公民館、学校などが集約や廃止となることへの反対の声を各地で聞いています。「お金がない」といって、これまで住民がよりどころにし、いきいきと活動していた施設を乱暴になくしていいのか。それは逆に地域の力を削いでいくことになるのではないでしょうか。そもそも市民の生命の安全がそろばん勘定で計られていいものでしょうか。住民の切実な声をもっと行政は重く考えるべきです。川中支所の移転計画は一旦白紙にし、住民と一緒に考え、答えを出し直すしかないと思います。