3月議会の個人質問で「急性期総合病院の再編・統合問題」について質問しました。

3月議会で、下関市で予定されている急性期総合病院の再編・統合問題について質問しました。下関市では、市内にある4つの総合病院の再編計画が進んでおり、市民病院と下関医療センター(下写真)を統合し、3病院体制にする再編計画がもちあがっています。すでに基本構想(案)ができ上がる段階まで進んでおり、来年度は基本計画を策定する予算が計上されています。

しかし、病院統合に関しては多くの市民が知らないままで、関係者のなかでももっと議論する必要性が指摘されています。質問では、医療関係者や市民がもっとかかわった基本構想にすること、そのうえで計画策定に着手するよう求めました。以下、質問と執行部の答弁(要旨)を掲載し報告とさせていただきます。

統合計画が持ち上がっている下関市立市民病院㊤と下関医療センター(旧厚生病院)

本池 平成28年に山口県が地域医療構想を策定し、それに沿った病床機能の検討が本市でもおこなわれてきた。とくに急性期においては、平成29年4月に中間報告として4病院の統合の話が出てきた。市民にとっての関心度も高くその行方が見守られてきたが、コロナを経た昨年3月に「第2次中間報告」が出された。

平成29年4月の中間報告は「公立・公的4病院は2025年までに段階的に再編する」「そのさいは500床以上の規模が複数あることが望ましい」といったものだった。それが、第2次中間報告では「4病院を3病院体制にすることを検討する」「建て替え時期が近い、下関医療センターと市民病院の統合の可能性を検討する」「急性期医療機能は3病院で担いつつ、段階的な再編の必要性について今後も協議を続ける」といった、より具体性をともなったものになっている。この背景には、コロナ感染症を経た病院側の経営的事情や病床稼働率の低下などがあるのだと理解している。来年度予算には基本計画策定のための予算として委託料3400万円を含む3650万円が計上されている。いよいよ基本計画の策定に進むことが見てとれるが、今後の事業の進め方は?

八角保健部長 新下関市立病院に関する基本構想案は、令和5年3月の下関医療圏地域医療構想調整会議の第2次中間報告をうけ、新病院の概要や3病院の大まかな方向性を規定するために令和5年12月と令和6年1月に検討委員会を開催し、医療関係者や市民団体の代表者の方々などの意見を聞いて策定した。今後の予定は、今議会の文教厚生委員会で報告したのち、3~4月にかけてパブリックコメントを実施する。その後ご意見を反映した最終的な基本構想を文教厚生委員会で報告し公表する。また、令和6年度には新病院の基本計画を策定する予定。スムーズにいった場合の標準的なスケジュールとして、令和6年度に基本計画を策定し、その後4年間で設計・施工をおこない、令和11年度に新病院の運営を開始することになる。

本池 この間、4病院の意見まとめや第2次中間報告があったとはいえ、基本構想は市がつくったものだ。第2次中間報告が出たときの地域医療構想調整会議や、基本構想素案が出た検討委員会などで部分的に傍聴させてもらったり、参加できなかったものは議事録や質問を確認させてもらっている。昨年12月13日の検討委員会の場では、「示された基本構想(素案)には病床数や新病院が持つ診療機能について記載がない。病床数や新病院が持つ診療機能が決まる時期、スケジュールを明確にすべき」「新型コロナの影響で患者数が減っている。コロナ前のデータを用いた推計は現状を捉えられておらず、それをもとに検討した基本構想は見直すべき」といった意見が2病院から出た。基本構想案に示されているよりももっと急速に人口減少が進んでいるということだ。

指摘されている内容についてなるほどと思ったが、それ以上に驚いたのは当事者である4病院の意見がまとまっていない事実だ。さらに、検討委員会では「(会議が)広く市民のみなさまに対してのアナウンスをしていくという役割もあると思うが(略)本当に出せる範囲の中でわれわれも入って議論できれば」との意見が委員から出ていた。つまり今のやり方では議論が不足していることが指摘されているのではないか。

2回の検討委員会は、基本構想の素案について出席した委員から意見を聞き、素案から案になるまでに2回ほど訂正がなされていて、そのような「仕組み」になっているようだが、第2次中間報告から基本構想案ができるまでの議論のあり方がこのようなことでいいのか。

今議会で文教厚生委員会に報告がなされるが報告であって議決はない。そして案として固まり、パブコメを経て構想が確定すると、専門的立場、当事者的立場からの議論も終わりになってしまう。議会も議会でこれを追認したかたちになると責任もともなうもので、議論不足のままの状態ではいけないのではないか。そこで質問だが、第2次中間報告をうけて基本構想案ができるまでに医療関係者が直接協議する場はどれほどあったか。

八角保健部長 昨年7月、公立・公的等4病院院長、下関市医師会長、山口大学、九州大学の医療関係者により協議をおこなった。また昨年12月から今年1月にかけて2回の検討委員会を開催し、4病院の院長にも出席いただいている。

本池 検討委員会を除くと7月の1回ということになる。検討委員会以外に4病院間での会議があったということだが、その会議ではどのような意見が出たのか、具体的に示してほしい。

八角保健部長 議題については診療科の内容とか、医師の編成等ということで基本構想以降に決まっていくことについて意見交換がなされた。

本池 基本構想以降に決まっていくものであるというなら、基本構想には4病院会議の内容は反映されているのか。

八角保健部長 基本構想の内容について、方向性については四病院間の意見のとりまとめられたものをベースにおこなっている。

本池 当事者である4病院の熟議の場がいると思う。この間、聞きとりも含めて保健部と話してきたが、“検討委員会は公開を目的とした会議”といわれた。では議論・熟議が目的の会議はどこにあるか。熟議の記録が見たく、4病院の会議の議事録を見せてほしいといったところ断られた。2回の検討委員会だけで、会議をしたことにして、それをもって議会に報告して「はい、そうですか」となるか。私たちは市民の代表であって専門家ではない。だからこそ、関係者での熟議がおこなわれているという事実が見えなければ認めることはできないはずだ。今一度要望だが、これまで検討委員会以外の会議で、なにが議論され、なにが問題になっているのか、議会なり、文教厚生委員会なりに概要だけでも示してほしいがどうか。

八角保健部長 4病院の院長などでおこなう協議は、すべて公表するということは自由な意見交換、率直な意見交換が難しくなるため難しい。意見交換の内容をそのまま公表するのではなく、そこでとりまとまったことを基本構想や今後の基本計画に盛り込んだかたちで議会に報告するかたちをとりたい。

本池 4病院間の協議では診療科の内容とか、医師の確保が問題になったということだが、今時点で各病院の経営側としての切実さがあると思う。統合する病院、残される病院としての意見はそれぞれの実情からも違っているし、経営の「今」を任されている院長たちの意見がぶつかるのも当然だ。

そして、その声も経営陣レベルのことであって、働くスタッフのみなさんや、病院にかかわる各種団体、取引先事業者のみなさん、こうした方々の声がどれほどこの素案に盛り込まれているか。例えば、職員の処遇について素案には「在籍する職員の理解を得ながら検討を進め、雇用について職員の希望にそえるよう十分に配慮しつつ統合に向けた検討を進めます」と一文が入っているが、この一文を入れるためにどれだけの職員の方々の実情や思いを聞いたのか。

八角保健部長 文章については想定される内容として記載しているので、職員の意見にもとづいてその文章になったわけではない。

本池 新病院が担うべき医療機能の「5疾病6事業」のところでは、「精神疾患に関しては新病院で担いません」「周産期及び小児医療については新病院では担いません」となっているが、ここに今の下関市の実情や課題がどれほど検討され、この言葉になったのか。単純に市民目線で考えるとなぜやらないのかと思うからだ。

検討委員会の設置要綱によると、「任期は基本構想策定まで」と規定されている。今のままだと、基本構想策定に向けた素案のたたき台は市がつくりました、選任した委員からの意見をもって若干の文言修正や文言追加をしました、ということで検討委員会は終わりになってしまう。これでは、検討委員会とはただの手続きに過ぎないということを見せつけられているようなものだが、保健部長の見解を聞かせてほしい。

八角保健部長 新病院の基本構想については、市が整備する新病院の大まかな方向性を規定するものだ。それにあたって市が素案を示し、検討委員会のみなさまにご意見をいただいて修正を加えていっている。大まかな方向性としては基本構想の策定で終了するので委員会のほうもそこまでで閉じると考えている。

市民の中で熟議はおこなわれたか?

本池 大まかな構想を決めることに、より多くの方の意見なり熟議が大事ではないかといっている。ここからは市民のなかで熟議がなされているかについて質問する。

市民の実感としては、第2次中間報告が出るまでほとんどの市民が知らなかったし、第1回検討委員会で基本構想素案として建設予定地(幡生操車場跡地)が報道等で出てからようやく全市的に知られていった。そこで質問だが、第2次中間報告が出された昨年3月以降、市民がこの4病院の再編・統合に関し熟議する場はあったか。

八角保健部長 市民に病院の再編・統合についてご理解いただくことは大変重要であるので、昨年3月に第2次中間報告とその解説を公表し、3~4月にかけてパブリックコメントを実施。4月には公立・公的等4病院の院長などにパネリストとして参加してもらいシンポジウムを開催。また、市内すべての自治連合会に住民説明会の案内をし、ご希望いただいた地域には9月に住民説明会をおこなった。

本池 パブリックコメント実施はどのようにされたか。

八角保健部長 本庁舎1階ロビー、保健部地域医療課、各総合支所、各支所、ホームページで意見募集をおこなった。

本池 その結果意見は7件だった。でもこの7件というのも最近のパブコメの動向を見ているとまだ多いほうでそれ自体が異常だ。7件という数字については、もっと市民からの意見を寄せてほしいか、7件で十分と考えているか。

八角保健部長 意見が少ないということについては、より多い意見をいただいたほうが、計画等を策定するうえでは重要だと思う。

本池 では基本構想案のパブコメのやり方はどのように考えているか。

八角保健部長 第2次中間報告のパブリックコメントと同様。

本池 より多いほうがいいといいながら前回と同じやり方というのは、結局市民からの意見が少なくてもいいのだということにならないか。市民は情報を得て意見を出すことをしなければならないし、それらの意見を吸い上げ、今市民がなにを求めているかを的確に把握するのは行政の役目だ。パブコメのやり方も考えてほしいが、パブコメ以外に市民に知らせるためにどのようなやり方を考えているか。

八角保健部長 市民への周知については、シンポジウムの開催、シンポジウムの内容のSNSによる動画配信、希望するすべての自治連合会を対象にした住民説明会の開催、市報の特集ページの掲載、希望する団体への出前講座などを検討。

本池 シンポジウムに来れなかった人に対して発信されることは大事だと思う。ただ、シンポジウムそのものが方向性の決定に加われたり、市民と行政、医療関係者が議論・対話できる場であるかどうかは考えてみてほしい。

今後予定されている基本計画は、基本構想を踏まえ、新病院の医療機能(診療科数、人員配置、診療部門)、病床数、概算整備事業費、経営収支の見通しなど、具体的な数が決まっていくものになるかと思うので、ここに一般の市民が加わることは難しくなってくる。基本構想こそ、病院関係者はもちろん、幅広い市民が参加して議論すべきだ。下関市市民協働参画条例には、市の責務として、「市は、基本理念にのっとり、市民参画が図られるよう努めるものとする」となっている。市民が自分たちの市の実情を知ったり考えたりすることは、今の下関市にとってもっとも必要なことではないか。

今でき上がっている「基本構想案」を「構想」として確定する前に、できるかぎり市民が参加し、議論ができるようなことを全力でやっていただきたい。そして、一部の人、もしくは市が勝手に決めたというものではなく、市民の構想に練り上げることをしていただきたい。時間はかかるかもしれないが、そうした作業を住民とともにおこなっている自治体はたくさんある。スケジュールありきではなく、「下関の医療をどうするか」を一人一人が考え、関係者も市民も一致して進める構想、計画になることを求める。

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