【視察報告2】愛知県常滑市の「ボートレースとこなめ」を視察して。

先般、今治市の視察の報告をさせていただきましたが、愛知県常滑市の視察内容についても聞きたいとのご意見をいただきましたので、常滑市での視察内容と、委員会視察に関して市民のみなさまにお伝えしたいことを記そうと思います。

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愛知県常滑市での視察内容ですが視察場所はボートレース場でした。ご存じのとおり下関市にもボートレース場「ボートレース下関」があり、毎年1000億円以上を売り上げ、その一部を一般会計に繰り入れて市政運営に充てるなど、大きな財源となっています。

ただ、売上は増えているものの、それがいつまで続くかわからないというのがこの業界の抱えている問題でもあります。そこで、いかにして利用者を維持・増加させ、売上を伸ばしていくか、自治体事情では市の財源をいかに確保するか、これがボートレース下関を含めた全国の24 競艇場とそれをかかえている自治体でとりくまれています。

そこで24 競艇場をまとめるボートレース振興会が進めているのがボートレース場のパーク化構想です。効率よく運営するための観覧席のコンパクト化と、女性やファミリー層も楽しめるようにと場内はもちろん、付帯施設として遊び場や交流拠点などをもうけて人を呼び込もうとするものです。

常滑市の「ボートレースとこなめ」は、令和3年にリニューアルし全国に先駆けてボートレースパークとなりました。下関市も昨年度からこの「パーク化」を進めており、その先進地を視察する、というのが内容です。

私はこれまでボートレース企業会計の当初予算には賛成していません。理由は、公営といってもギャンブルであり、いくら財源面で市に貢献しているとはいえ、人の不幸の上に成り立っている事業であるということに抵抗があるからです。

ギャンブルへの依存度の高まりにより、横領や窃盗、家庭内トラブルも少なくなく、下関市内でも依存状態になってしまっている方のご家族やご友人からの悲痛な声が届いています。教員が700万円を横領しその多くをボートに使っていたということがニュースになったこともありましたが、いくら個人の倫理観の問題だとはいえ、こうした不幸を生んでしまうのがギャンブルであり、売上増に力を入れれば入れるほど、こうした不幸も増えてしまうことについてどのように考えたらいいのか。ボートレース事業をするのであれば、こうした依存症への対策が最低でも必要でありますし、事業そのものについても賛成していいのだろうか、なにか違うのではないかと思っています。視察については、今後下関でも進んでいく「パーク化」について、きちんと意見を持ちたいと思い、先進地の状況を見てきました。

利用促進の取組と依存症

常滑市は人口5万8000人、面積55・90平方㌔㍍の小さな市です。

「ボートレースとこなめ」はリニューアルしたばかりのきれいな外観で、観覧席も新しく屋外・屋内に整備されています。私たちが説明を受けたのは屋内の特別観覧施設でしたが、場内にはホールやフードコートも整備されており、キッズパーク「Mooovi(モービィ)」や、地域コミュニティ拠点の「Gruun(グルーン)」もありました。こうした子どもたちが遊べる場所には平日ながら親子連れの姿も多かったです。

常滑での売上は令和4年度が約695億円で一般会計への繰出金は、常滑市に4億円、半田市に403万円の計4億403万円となっています。下関市の令和4年度の売上が約1364億円、一般会計への繰り出し額が134億円ですので、下関と比較すると規模は小さいようです。一般会計へ繰り出すために、職員さんたちも頑張っておられます。

依存症に関してのとりくみは、場内やホームページでの普及・啓発をおこなっているほか相談窓口の設置がなされています。ただこれは全場に義務付けられているもので、独自の取り組みについてはおこなっていないとのことでした。ただ、愛知県はギャンブル等依存症対策基本法に基づいたギャンブル等依存症対策推進計画を策定しており、計画に基づき、医療機関との連携等がおこなわれています。その点、山口県はまだ計画策定をしていません。今年度動き始めたとの報告も受けていますが、直近のお話では「動いていない」とのことです。ボートレース事業をやる以上、最低限必要なこととしてきちんと策定し、少しでも依存症による不幸を減らすとりくみをおこなっていくように働きかけたいと思います。

説明を受け、施設内見学をしたのち、「せっかく来たのだから」とみなさんが賭けているあいだ、一人で再度場内を回らせていただきました。年金暮らしだから毎日は来られない、とややいらだった様子の高齢の男性、明らかにお酒を飲んで酔っている様子の20代の男性たちが「これでウン十万円!」と騒いでいる姿もあれば、映画を見るように静かに観ておられる方、友人と楽しみながら観ておられる女性たち等々、さまざまな方がいるのだと思いながら回りました。 続きを読む

【視察報告】「住みたい田舎ランキング」1位の今治市に経済委員会の視察で行ってきました。

7月3~5日の日程で、経済委員会の視察で愛媛県今治市と愛知県常滑市に行ってきました。大雨の時期と重なったこともあって大変遅くなりましたが、今回、「住みたい田舎」ベストランキング1位(宝島社『田舎暮らしの本』2023年度版)にもなっている今治市の視察内容を報告します。

今治市の視察のテーマは、「今治市の食と農のまちづくり~地産地消と食育のすすめ~」です。数年前から委員会視察で今治市を希望しており、その理由は今治市が学校給食を中心にした地産地消のとりくみの先進地で全国的注目を集めているからです。下関市では現在、学校給食調理場の老朽化にともない、22校を集約した民設民営型の大型センターの建設が進んでいますが、今治市は真逆で、大型センターから自校式の単独調理場や親子方式の小規模調理場への転換を進めてきた経緯と実績があります。なぜそうなったのか、学校給食を中心にした地産地消の推進がもたらした効果はどうなのか、課題をどのようにクリアしてきたのか。これらのことを知り、下関市の行政に反映できればと思いながら視察に向かいました。

食と農のまちづくり全国に先駆けた取組

今治市では市役所で農林水産課と学校給食課の職員の方々から説明を受けました。

今治市は全国に先駆けて30年以上前から食と農のまちづくりのとりくみをおこなってこられました。その始まりは1982(昭和57)年1月の市長選挙で、老朽化した給食センターをどうするのか、ということが争点になったことに始まります。大型の給食センターの建て替えをかかげる現職と、自校式調理場を推進する新人候補が立候補し、新人候補が当選しました。それから、新市長を支持した今治立花農協の方々が、「自分たちがつくった安全な食べ物を子や孫に食べさせたい」と、学校給食に地場産野菜や有機農産物を導入するよう求める陳情を提出されました。

その後、徐々に自校式調理場への転換が進むなか、1988(昭和63)年3月には、今治市議会が「食糧の安全性と安定供給体勢を確立する都市宣言」を決議します。宣言には、輸入食料に含まれる残留農薬や化学肥料の使用等への懸念から、「市民の健康を守る食生活の実践を強力に推し進める」ことが明記されています。

この宣言を受け、1999(平成11)年からは学校給食米を今治産の特別栽培米(農薬・化学肥料を50%以上削減)に切り替えたり、2001(平成13)年9月には地元産パン用小麦を使ったパン給食を開始。さらに翌2002(平成14)年には学校給食用豆腐の原料大豆の今治産への切り替えが始まります。

2005(平成17)年には12市町村が合併し新たな今治市となりますが、新市議会において「食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」【写真】が決議され、2006(平成18)年には「今治市食と農のまちづくり条例」が制定されます。この条例が今治市の食と農のとりくみの根拠となっており、時代の変化等あるなかで現在も食と農のまちづくりがおこなわれています。

「今治市の食と農のまちづくりのとりくみは、約40年前の消費者運動や農民運動などの市民活動に端を発しており、行政主導ではなく市民のとりくみとして発展してきました」「市民の活動が発展し、議会と連動し、それが流れとなって今に至っています」と、誇りを持って語られる職員さんの姿勢にも大変感銘を受けました。

条例の3本柱 有機農業の推進が特徴

今治市食と農のまちづくり条例の3本柱は「地産地消の推進」「食育の推進」「有機農業の振興」です。食と農に関するまちづくりのビジョンを明確にし、市の責務や、市民、生産者、食品関連従事者の役割を明確化し、具体的なとりくみがおこなわれる根拠となっています。

なかでもこの条例の大きな特徴としては、有機農業の推進と有機農産物の消費拡大を明確に位置付けていることで、「有機農業の推進」の障害となる遺伝子組み換え作物の栽培を事実上規制していることです。

学校給食センターから自校式へ

この3本柱の中心にあるのが学校給食です。先述したとおり24小中学校(2万1000食)分を提供していた大型センターから分離し、現在は21の調理場(自校式や親子方式などの小規模共同調理場)で1万3000食を供給しています。

食材についても地産地消を推進し、単独調理場への切り替えを契機に地元産農産物を優先的に使用するようにしてこられました。現在は今治市産の野菜の使用が約50%(重量ベース)を占めており、遺伝子組み換えとわかる食材の使用はおこなっていません。また立花地区の3つの小学校(鳥生小学校、立花小学校、吹揚小学校)には、有機農産物の導入がおこなわれています。有機農産物の使用の割合は令和3年で36・7%。現在は島しょ部でも、自然農法・有機農法で農業をやりたいという移住者の方々が増えており、こうした方々が生産された野菜等を使った「給食の日」もおこなっています。

給食の食材 コメも小麦も地元産

また市内の小中学校すべてで農薬・化学肥料を50%以上削減した今治産の「特別栽培米」がほぼ100%導入されており、「搗(つ)きたて」「炊きたて」で提供しています。ここで気になるのは価格です。特別栽培米はどうしても通常のお米より高くなってしまいますが、給食食材への導入については差額を公費で補填しています。令和5年度の予算は590万円です。 続きを読む

6月議会の一般質問「新学校給食センターについて」のご報告【文字起こし】

下関市教育委員会は2024年4月から、下関アグリフードサービス株式会社(広島アグリフードサービス会社が設立)が建設・運営する民設民営の新学校給食共同調理場で給食の提供を開始する日程で準備を進めています。しかし、開始まで1年を切った現在、自校式からセンターへ転換する学校の受け入れ体制や、アレルギーのある子どもの把握や管理をだれがするのか、新センターの担当として栄養教諭3人が配置されるのかどうかなど、具体的な体制の多くが未確定のままです。

開業を急ぐ一方、学校現場を後回しにする「業者ファースト」の姿勢が混乱を招いており、学校現場に「このままスタートして大丈夫なのか?」と懸念と憤りの声が広がっているため、この問題を6月議会の一般質問でとりあげました。執行部との質疑の内容(要旨)を以下、お伝えします。みなさんのご意見をお待ちしています。

建設中の新給食センター(新下関市場内)

本池 南部学校給食共同調理場の老朽化にともなう移転・再編計画が持ち上がり現在に至るが、来年4月に供用開始を迎える。これ【写真㊤】は現在建設中の建物だ。順調であるということなので建物については完成していくのだろうと思うが、肝心な中身について、「本当に大丈夫なのか」という心配の声が各方面から寄せられている。そうした声に対し、教育委員会としてはどのように考えているのか、きちんと向き合った対応がなされているのかを聞く。

まず安全な提供を左右する最大の関心事として、栄養教諭の配置がある。

【図①】を見てほしい。受配校22校に栄養教諭は現在9名おられる。うち2人は南部学校給食調理場に所属しており、自校式の学校ではアミ掛けをしている7校に栄養教諭がいる。新学校給食センターには、現在の南部調理場、中部調理場のように、栄養教諭の配置ができないと聞いている。その理由はなにか。

藤田教育部長 新給食センターは民設民営方式のため、算定基準に当てはまらないので配置されない。

本池 国や県に受配校に配置するよう要望をおこなってきたと理解している。要望内容とこれまでにどんな返事が来ているのか示してほしい。

教育部長 共同調理場として算定した人数を配置してほしいと、文部科学省や山口県に対し要望し、協議しているところだ。当初、国等に要望していたのは法律の改正、その後法律の解釈ということで要望を続けてきた。新センターの事業主体は市であるので、同等であるということで理解いただきたいということ、食育の推進のため栄養教諭が必要であるという内容を中心に要望している。

本池 回答はまだということか。

教育部長 ひき続き協議しているところだ。

本池 見通しは。

教育部長 栄養教諭は山口県が配置するので、協議を重ねて決定するものと考えている。

本池 令和3年12月議会で全国学校栄養士協議会下関市支部の元栄養教諭の方々より陳情書が出された。内容は、食習慣の形成に欠かせない「食育」の実施のため、5名の栄養教諭を受配校に配置すること。もう一点は、給食センターと受配校の連絡調整、アレルギー対応、食育対応のための栄養教諭を教育委員会に配置してほしいというものだった。なお、県費負担での配置がかなわない場合には、実現まで市費負担での配置を求めるものだった。

当時の委員会では、この陳情に賛成で一致したように記憶している。先ほどからの答弁では栄養教諭配置がなされるかどうかもいまいちはっきりしないが、もし県費で配置がなされない場合、市費で配置する予定か。

教育部長 今後、協議を踏まえるなかでしっかり考えながら、安全安心な給食が提供できる体制づくりを検討していく。

本池 「はっきりしたことが決まっていない」といってよいのは、少なくとも昨年段階の話だ。来年4月に稼働するという時点でいうことではないと思う。いつ決まり、関係者や議会に明らかにされるのか。

教育部長 栄養教諭の配置は県の人事異動なので、いつはっきりするかは申し上げられない。

本池 県の人事が肝になるということであれば、市費負担での配置はなされないと捉えられるが、確認する。

教育部長 教員の人事権は市が持っていないので、栄養教諭を市で任用することは難しい。ただし、給食を適切におこなうための体制づくりは市としてはしっかり検討していきたい。

本池 栄養教諭ではなく、栄養士なり栄養教諭に準ずる方を市費で雇用することはあり得るということか。

教育部長 しっかり対応するよう体制づくりは検討している。

本池 先ほどからの答弁では、栄養教諭の配置について、安易に考えていると指摘せざるを得ない。栄養教諭は給食に関する業務を一手に担っておられる。給食業務のなかでも、食数報告とアレルギー対応は非常に重要で、これに連なって「安心」を担保する細やかな業務があり、これまでいた栄養教諭がいなくなることで現場は大混乱に陥るのが必至だ。

新センターへの移行にともない、これまで栄養教諭の方々がされていた業務をだれがするのかということは、学校現場で非常に心配されていることでもある。そこでお聞きするが、これまで栄養教諭が中心になってされてきたことを今後だれがおこなっていくのか。

教育部長 自校式の7校については各学校への栄養教諭の配置がなくなるが、調理業務にかかる管理業務がなくなる。また、現在も栄養教諭の配置がない自校式の調理校もある。学校においては、文部科学省の「食に関する指導の手引き」にもとづき、食に関する指導の全体計画を作成し、学校全体で組織を編成し、食育の推進をはかることとなっている。新センターの受配校となる学校も、現在の南部・中部共同調理場の受配校における栄養教諭の未配置校と同様に、巡回指導による対応と学校内での組織体制にもとづいて食育の推進をはかる。

アレルギー対応巡って

本池 もっとも危機感が高いアレルギー対応について具体的に聞く。

【図②】は、アレルギー対応に関する栄養教諭の動きだ。私の聞きとりで作成したものなので足らない部分もあるかもしれないが、アレルギーに関するものだけでも前年度から保護者とのやりとりを重ね、管理職や学級担任と連携して、当日の提供後まで二重・三重のチェックで動いていることがわかる。ちなみにこれは自校式のなかでもレベル3の除去食対応をおこなっているところの例だが、自校式のなかには他にもレベル1~2の「詳細な献立対応」や「弁当対応」をおこなっているところもあり、栄養教諭の配置状況や給食室の設備によって、どのレベルでおこなうかの判断がなされている。

新センターになると、すべての受配校に特定原材料の7品目を除去した「除去食」が届くようになる。しかしすでに除去食対応をおこなっている学校でも、おこなっていない学校でも、7品目だけでなく28品目やそれ以外の食材にも対応している。

つまり、今後どのような問題が生じるかというと、7品目に該当する子はセンターのアレルギー食を食べられるようになるが、7品目以外のアレルギーに対しては、これまでどおり自己除去、弁当対応をしなければならないということだ。

ただ、これは食べるか食べないかの話であり、先ほどの表にあるように保護者と連携を密にとって一人一人の子どもの状況を把握することは、これまでと同じようにしなければならない。南部・中部共同調理場も現在は除去食対応をしていないので、今まで以上に管理は厳重にしなければならない。

除去食対応が始まることで、みんなと一緒に給食が食べられるようになることは前進である反面、これまで以上の体制で注意を払わなければ、間違った給食が別の子のところに配膳されたり、ついおかわりをしてしまったりという、これまではなかったリスクが生じる恐れもある。つまり体制をきちんととるかどうかで前進にも後退にもなるわけだ。

だからとくに子どもたちの命にかかわるアレルギー対応に関し、栄養教諭の配置が必要だとの声がこれほどあるのだと理解している。教育委員会でそこまでの検討はされているのか。先ほどはアレルギー対応について「学校全体で」「中部・南部でやっているように」との答えだったが、これまでのべてきたような具体的なアレルギー対応はだれがするのか。

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