市議会先例85-1「一般質問等の質問における議会に対する発言通告は、これを受理しない」について。

 先日、長周新聞紙面にも掲載された「公用タクシー券の不正使用を許さない市民の会」の提言を受け、亀田議長及び市議会事務局長に再度見解を伺ってきました。もうじき任期も終わろうかというなかで、この問題について追及してきた一人の市議会議員として、事の是非を曖昧にしたまま1期目の幕を下ろすわけにはいかない、過程で生じた不当な議会ルールをそのままにして終われないという思いで動いています。下関市内を回っていると、市民のみなさんから、「議会の(公用)タクシーチケット問題はどうなったのか?」「誰が考えてもおかしい。うやむやにしないでほしい」と声をかけられることが増えました。したがって、この間公用タクシーチケット問題から始まった一連の出来事について、支持者のみならず、広く市民の皆様にご報告することにしました。

歴代の市議会正副議長が公用車の代用として使っている公用タクシーチケットについて、公務だけでなく飲み会の帰りなどにも使用していた実態が明るみになり、そのことについて一般質問で質問をしようとしたのが令和2(2020)年6月のことでした。そのさい、議会(議会運営委員会。無所属は委員に入れず)で突如「ルール」がつくられました。「一般質問等の質問における議会に対する発言通告は、これを受理しない」(先例85-1)という一文です。

この先例85-1により、タクシーチケットの運用実態や運用規程について、私は「議会」に対して質問することができなくなりました。それだけでなく、この一文をつくったことで、議員が議会費(予算執行)に関して本会議の場で質問をおこなうことができなくなるというおかしな事態になってしまったのでした。

まぎれもなくタクシーチケットに関する一般質問を封じるために、質問通告(議員は事前にどのようなテーマで一般質問するのか通告し、その後執行部の関係部局から質問点について聞き取りがおこなわれる)を受けてにわかにつくられた先例なのですが、大きな問題をはらんでいます。下関市議会で決められた先例85-1を決めるときに「参考」として用いられた衆議院先例427には、「議長に対する質問書はこれを受理しない」となっています。議員の質問先は内閣(執行機関)であるから、議長に対しては質問できないというものです。当然の内容です。しかし下関市議会の先例は、議員が執行機関に質問する権利をも剥奪するもので、これは地方自治法上大きな問題です。

このことを指摘し、早急に廃止を求める意見書を亀田議長に提出したのが今年の8月8日でした。そのさい8月19日までに返事をして頂けるよう求めた(遅れる場合はいつになるかを教えて頂ければいいともお伝えしました)のですが、19日になっても返事がありませんでした。仕方がないので議長室まで出向き、「来週末には返事をする」との回答を頂きました。しかし「来週末」にあたる8月26日になっても音沙汰がなく、再度議長室まで行き、その日の夕方に面会しました。

亀田議長に意見書の件はどうなったのかを聞くと、驚くことに「答えられない」というのでした。先に述べている先例があるからという理由です。先例の内容については指摘させて頂いている通りですが、先例にある「一般質問等」の解釈を拡大し、議会外での議員個人の申し入れに対しても適用するというものでした。その意味を理解するのにしばらく時間がかかりました。「一般質問等」とは一般質問、個人質問、代表質問のことを指しており(当時そのように説明を受けています)、拡大解釈が過ぎるのではないかと指摘しても「同じようなものだ」といって答えを頂けませんでした。しかしその後「みんなと相談する」といわれましたので、再検討をお願いしその日は帰りました。

亀田議長と岡本事務局長の対応

8月26日の議長との対談を経て、10月25日火曜日午前10時より議長室で亀田議長と対面し、先例85-1の廃止を求めた意見書がその後どうなったのかを確認に行きました。議長のお答えは「特段のことはしていない」ということです。議会運営員会にはかることもしていないといわれていましたが、その後、正副議長、議運正副委員長と9月定例会の前に打ち合わせをした結果、現状維持ということになったということが説明されました。そのさい、「先例は今季の議員が決めた先例であり、メンバーも変わっていないし、あえて今変える必要はないのではないか」という意見があったということです。違法性について指摘しているが、そのことは議論になったかどうかを問うと「なっていない」とのことでした。

その後、岡本善隆議会事務局長に先例について確認に行きました。岡本事務局長に関していえば、令和2年当時、提案者として先例追加について議会運営委員会で説明をされており、私も当時、先例についての説明を岡本事務局長から受けています。この間の私の意見書についても亀田議長が事務局に渡しているといわれていましたので、事務局長にきちんと確認をしておきたいと思い、亀田議長と対面ののちに事務局長に質問の申し入れをしました。

まず、事務局長は私のボイスレコーダーをとりあげ、「記者として来るなら対応しません」といわれますので、議員として来ているというと、「議員として来ているなら切ってください」といい、ボイスレコーダーをご自身の手元に置き、「触らんか見させてください」といわれました。私が、この件については裁判で争うつもりであることと、そのために一言一句正確に記録しておきたい旨を伝えたのですが、頑なに拒否されるため、メモで対応することにしました。

思い返しますと、8月26日に亀田議長と対談したさい、事務局長も同席されたのですが、ボイスレコーダーにご自身の声が入らないようにするためか、一言も言葉を発せられず、うなずくだけでした。ご自身の声が入るのがよほど嫌なのでしょうか。言質をとられまいとする対応のように感じました。みずからの発言に関してやましいことがないのであれば、正確に記録することは身を守ることにもなるのですが、どうしてそのように身構えられるのか不思議でなりません。

事務局長に対しておこなった質問と回答ですが、以下のとおりです。 続きを読む

9月議会が閉会しました。(一般質問のご報告)

22日に9月議会が閉会しました。今回の一般質問では、令和3年度に発覚した未集金となっている介護報酬過払い金について質問をしました。この事件は、市内の介護事業所(1社)に対し下関市が3億円にのぼる介護報酬の過払いをしており、その返金について、40年以上にもわたる分割納付が認められたものです。数十年になる返済計画は過去になく、同業者の方々からも疑問の声が上がっています。今回、過払い金が発生した経緯や、なぜ40年以上にもわたる返還計画が認められたのか、判断基準の根拠としたものはあるのか、政治家の介入はなかったのかについて質問をしました。以下、質問と答弁の要旨を報告させていただきます。

未集金となっている介護事業者への介護報酬過払い金について 

 本池 ちょうど1年前、令和2年度決算の下関市介護保険特別会計介護保険事業勘定歳入歳出決算書において、突如2億2361万2973円が返納金の収入未済額として計上された。今議会に提出されている令和3年度決算でも返納金の収入未済額は2億1775万5825円となっている。ちなみに令和元年度の決算における収入未済額は207万円だった。巨額の収入未済額は令和2年度中に調定されたものだ。まず、令和3年度決算の収入未済額のうち事業者への過払い金で未収金となっているものは何件で、それぞれいくらあるか。

冨本福祉部長 令和3年度の下関市介護保険会計歳入決算、款諸収入の収入未済額は2億1775万5825円の決算額ででご指摘の通り。内訳は2件で、1件は2億1739万9467円で、質問の対象となっている行政指導に基づく返還金だ。もう1件は、35万6358円で行政処分として返還を求めていたものになる。

本池 大半が1件の返還金だ。このような過払い金がどうして発生したのか、対応及び回収は適切になされているのか質問する。発生の経緯だが、当該事業所の件については、平成25年度に実施した監査において、人員基準を満たしていないことが判明したため、改善勧告をおこなうとともに、介護給付費の請求の是正について文書指導をおこない、平成27年4月から、国民健康保険団体連合会のシステムを通じた過誤調整による返還が始まったということだ。当初は10年で完了する計画であったが、その後、相手方法人の経営状況から10年以上を要することが確実となったとのことだ。令和2年度に改めて相手方法人と今後の対応について協議をおこない、毎月50万円づつ、約40年かけて返済していく計画になったということだ。経緯については間違いないか。

福祉部長 間違いない。

本池 この決定にいたるまでの公文書にも目を通しているが、3億円に迫るほどの巨額な案件に対し、過誤調整で対応したのはなぜか。

福祉部長 行政処分ではなく行政指導で対応させていただいた。基本的に行政指導で対応した案件については、過誤調整ということで、誤った金額を毎月支給される介護給付金から差し引く手続きをとるようになっている。今回の案件も行政指導であったということで、過誤調整で対応している。

本池 過払い金が非常に巨額だが違反の内容はなにか。「人員基準を満たしていなかった」としかないが、違反の内容について述べてほしい。

福祉部長 配置が必要な専門職が人員の基準に達していなかった。

本池 介護報酬の算定については、複雑であるがゆえに過誤は少なくないと聞いている。入所者の介護度や人数、施設の人員、提供しているサービスなど、複合的な要素で計算されるため過誤が起きやすい。しかし、今回の場合は「人員配置」だ。しかも専門職。老人福祉施設における人員基準はそれぞれ明確に定められており、勘違いが起こるのかという問題がある。同業者にもお話を聞いたところ、毎年法人の状況や人員配置等について報告する「自己点検表」があるとのことだ。手元にあるのは介護老人保健施設の自己点検表だが、施設の種類によって、チェック項目があり、それぞれの専門職が何人いるか、それに対して「はい」「いいえ」の2択で答えるようになっている。過払いがあった期間について、法人側が「満たしていない人員」について、「いる」としていたのか、逆に「いない」と記載しているのに市が支払いを続けていたのか、この二つが考えられまるが、どちらか。

福祉部長 人員基準を満たしているという報告になっていた。

本池 事業者のほうが、いないにもかかわらず「いる」と書いていたということか。

福祉部長 丸をつける欄があり、そちらに「満たしている」と丸をつけていた。

本池 開業時から人員欠如が生じた状態だったのか、それとも途中で人員欠如が生じたのか。

福祉部長 この人員配置については平成22年6月からと把握している。

本池 平成22年6月から今までいた人員がいなくなったということだ。途中で人員欠如が生じたにもかかわらず、いないものを「いる」と報告していたのであれば明らかに虚偽報告にあたると思うがどうか。

福祉部長 基準については明確に文書化されているところでまずは判断するが、それぞれいろんな施設なり事業所なりで状況が違うため、解釈というものが国から示されている。その解釈について、こちらの事業所の方が誤った認識をしていたことが原因だ。

本池 誤った認識ということだが、先ほど自己点検票では「いる・いない」で答えるようになっている。それに対して解釈という余地があるのか。「いる・いない」しかないのにどのような解釈をされていて、誤った認識だったのか。

福祉部長 こちらの事業所の判断として、事業所の中の体制でカバーできるという判断をされていたという解釈の誤りだった。

本池 体制でカバーできるという相手方の主張があるから、市は勘違いだったという主張を認めたのか。市が、虚偽報告ではなく誤った解釈をしていたという主張を認める理由はなにか。

福祉部長 自己点検票だけで判断するのではない。聞き取りに行って、向こうの状況もお聞きをして、いろんな書類を調べて判断していく。そのなかで、詳細は申し上げられないが、解釈基準の判断のなかで、事業所としての全体的にフォローができる体制について、解釈自体は誤っていたがその範囲のなかでそこの事業者さんはそのように判断された。あとはいろんな報告とか説明をしてもらっているなかで、通常処分になる場合は、その職員がいないにもかかわらずいたかのような虚偽報告されたりということがあるが、こちらの事業所はそういった虚偽報告というかたちの悪質性はなかったので、指導という対応で処理させていただいた。

本池 公文書を見ていると、当初は月々350万円の支払いを約束したにもかかわらず、翌年には返済が滞っている。そして令和2年1月27日付で、事業者から「介護給付費返還の方法に関する上申書」が届いており、「月額100万円ずつの返済」を希望する内容となっている。その理由の一つとして“当時の福祉部長が「現在実施中の毎月の返還は、※※(黒塗り)、法人全体の運営状況、資金繰り等から返還が困難であるときは、猶予・延滞しても致し方ない」との判断がなされました経緯がございます”と書いてある。面会要約も添付されているようだがこの発言自体は事実か。市はこの事業者のこの主張を認めたのか。

福祉部長 私どもの記録も確認したが同じような記録はなかった。相手方にも確認したが、相手方についても把握と認識とがあやふやの状況だった。私どもとしては、それ以外の場面では、減額は認めることはできないと、どの場面でお話する場合でも一貫してそのように説明している。

本池 発言は事実ではなく、事業者がいっている主張については認めていないという理解でよいか。

福祉部長 認めていないと言い切れるかどうかはわからないが、こちらとしては記録がないし、こちらが一貫して説明しているとこと説明内容が異なるということで、そういう意味では、私どもとしてはそういう発言ではないという認識だ。

本池 この上申書に関していえば、コロナの影響をうける前の話だ。(福祉部長の発言については)記録がないし、事業者の認識と違うということだが、結局その後、コロナによる経営難を理由に100万円どころか50万円の分割納付を認めている。その経緯についてだが、返済が滞り始めてから月50万円の返済を認める方針が決裁された令和3年2月までの4年あまりの間、放置したわけではなく協議をしてきたといわれたが、いつ、どこで、だれと、どのような協議をしてきたのか。

福祉部長 対面で協議をしてきたのが14件ある。基本的に福祉部長、次長、介護保険課長、担当職員で対応している。

本池 市長が面会されたケースはあるか。

福祉部長 市長は3回面会している。私どもと同様に指導が適正になされたものと説明してもらっている。

本池 対面で14回、それとは別に市長は3回、計17回以上は協議されてきたことになるが、その内容は?

福祉部長 50万円の返還額になったのは最終的な協議の結果で、その間、その間相手方の経営状況であったり、保険料を預かっている立場としてというところで、こちらも顧問弁護士に相談しながら、相手方も顧問弁護士や税理士と相談しながら協議を重ねていったというところだ。

本池 最終的に50万円を認めたというのは、市長が対面されて判断されたということか。

福祉部長 当然協議のなかで福祉部で責任を持って話をお聞きしている場面もある。最終的に50万円でもやむなしというのが適切かどうかはわからないが、結論を出して、方針伺いを出して、市長まで決裁いただいて出した結論だ。

本池 先ほどの福祉部長の発言についても認めていなのに、結局、事業者のほうに譲歩に譲歩を重ねているようで、きわめて不可解に感じる。政治家の関与を問う声もあがっているがそのような事実はなかったのか。

福祉部長 責任をもって、行政としての判断をさせていただいている。

本池 電話や問い合わせもなかったか。

福祉部長 福祉関係の事業所については、おおむねどこも県議や市議とのかかわりはあるが、議員さんのほうからもそういった形で私どもにお話されることはなかったし、あくまでも行政として判断をさせていただいている。

本池 福祉施設については、いろんな政治家から連絡があると。全般の話としてではなく、この件について、100万円でも認めなかったところを最終的に50万円での支払いを認めているが、そのことに関して政治家の介入はなかったかと聞いている。

福祉部長 50万円の金額に関しては相手方の弁護士、税理士、私どもの顧問弁護士とも相談して、地域的に経営がもともと難しい状況にある事業所ではあるが、新型コロナの影響を大きく受けている事業所であったので、あわせて決算書なども確認している。そうした総合的な確認のなかで50万円と結論を出させていただいた。

本池 50万円の支払いを承認するうえで経営状況の確認をしていると思うが、それはどのようにおこなったのか。

福祉部長 決算書のほうは毎年いただいている。毎年いただいたものをすべて表にして、とくに前後の3カ年を踏まえた確認が十分できるようにして、事業収入や負債などがどういう変化をしているのかについて確認している。

本池 事業者が市に提出したものだけなのか、業者のほうに出向いて他の書類も確認されたのか。

福祉部長 基本的には提出をいただいているものになるが、私どものほうが決算書の中身で疑問に思うところなどは相手方のほうに連絡をいれて確認するなどしながら確認作業をおこなっている。

本池 2億の過払い金を40年かけて返済するという計画を市が認めたことについては業界の方々みなさん驚いている。介護事業者の方々にお話を聞いたところ、過誤はありうることですが、「人員配置に関しては勘違いということはありえない」とみんないわれる。同じように市の監督を受けている事業者の実感としては、「指定取り消しの案件」という受け止めです。100歩譲って、それが勘違いで起こったものであったとしても、「自分だったら借り入れをしてでも、まずは公費の返済をする」「それがが当たり前」とか、「これまでいた人員が減った時点で、市に相談して対応を考えるのが普通ではないか」と指摘されていた。それが行政から指定を受けて事業をおこなっていく、もっといえば地域の介護を守っていく者の責任だと。みんながルールを守ってやっているのだから当然の話だ。どうしてこのようなことが認められるのかというと、すべて行政処分をしていないからなのだが、行政処分をしないとした判断基準、根拠はなにか。

福祉部長 行政処分については、組織性であったり悪質性であったり、被害の大きさであったりを総合的に判断する。今まででも行政処分をした案件があるが、いない人をいるかのように装った報告であったり、計画であればつくっていないのにつくったような虚偽の報告をしたり、悪質な内容のものになるが、今回のことは、適切とはいえないが、そうした悪質性はなかったというところで行政指導という最終的判断をさせていただいている。

本池 部長が今述べたなかで、「いないものをいるとしたり」といったが、点検表においてはいないものをいるとしている。事実として。今、手元に監査後の平成26年3月に下関市が事業者に対して出した改善勧告がありますが、人員配置基準の違反だけでなく、「現況」の欄を見てもひどい内容が見受けられる。4人の部屋に5・6人いるとか。これは悪質とはいわないのか。

福祉部長 人員基準以外でお話された内容については、当然自己点検票と現地に行って確認をしたときに事業所のほうには適正な対応をするようにという指導を必ずする。合わせて文書で送って、それが改善されたかどうかの報告ももらうシステムで対応をしている。

本池 対応するのはいいが、こうした内容が悪質というものには当たらないのかと質問している。

福祉部長 例えば、職員の方が利用者に虐待的な行為をしていたということであれば当然、不適切な対応になろうかと思うが、部屋の利用されている方の人数であったりは、それをもって悪質とは判断していない。あくまでも現地に行って、それが利用者にとって不適切な内容であればそこは指導する。そういうところでご理解をいただきたい。

本池 行政処分をしていない場合、債券回収の規程はあるか?

福祉部長 規程と申しますか、厚生労働省のほうでマニュアルがあり、まずは事業所のほうが自主的に点検をおこない、適切な介護給付費の調整をするというマニュアルは示されている。

本池 今いわれたのは過誤調整をするときのことだ。行政処分をした場合は、「下関市債権管理条例施行規則」に則って回収をおこなっていくと思う。しかし、今回の場合「行政処分をしていない」ことによりこの条例施行規則の対象となる債券ではなく、回収に関して業者のいい分を認めざるをえなかったり、情報公開資料も黒塗りということになっている。こうなれば、なぜ行政処分をしないのかという説明責任が求められる。施設にいない人員を「いる」としていたことは先ほどからやりとりしているが、「悪質」「悪質でない」の判断基準はなにか。

福祉部長 ご説明が難しいが、当然適切な人員配置ではなかった。ただ、事業所のほうが主張する解釈にもとづいてというところは、本当に誤った解釈をしていたということで今回のような判断をしている。          

本池 続いて回収状況について質問する。まず、今年の予算議会で、回収が確実である未収金については収入として記載するべきだと指摘させていただいた。これは市の回収意志があるかどうかという重要な問題だ。その後どうなったのか。

福祉部長 昨年度お話をいただき、関係部署とも協議し、あらかじめ計画的に返していただく金額は見込まれるので、令和5年度予算には計上する方向で調整している。

本池 今後も毎月50万円づつ40年かけて回収していくつもりなのか。

福祉部長 先ほどから決算書の確認をさせていただいているということを説明したが、今回の事案については長い年月の回収作業になるので、相手方と公正証書を作成している。そのなかで、もし決算書を確認して経営状況が改善をして、今以上に返還が可能になった場合はその金額で返していただけるという趣旨の規定を設けているので、その場合は今よりも多い金額で返還してもらうようにさせていただくつもりだ。

本池 40年もたてば当然経営者も変わると思うが、返納中に業者が廃業・倒産したり、事業譲渡などをした場合はどうなるのか。

福祉部長 当然事業を廃止された場合については、原則、可能な限り債券回収ができるような交渉をする。事業譲渡された場合にはあたらしい事業所のほうに債券も引き継がれているか確認をして、最終的に判断をするときは、市の顧問弁護士とも相談して適切な債権回収の対処ができるようにしたいと考えている。

本池 令和3年度に発覚した介護報酬の過払い金は何件あるか。また、このうち、現段階で未収金となっており、今後返還を受けなければならない案件があれば教えてほしい。

福祉部長 明確になっているのは、ご指摘の事案とあわせて報告した案件になる。

本池 協議中のものも含めて教えていただきたい。

福祉部長 資料をもちあわせていない。(後に2件と回答あり)

本池 今後、同じように変換をうけなければならないケースが発覚したときに、同じように何十年にもわたる分割払いを認めていくのかどうかの確認をしたい。

福祉部長 単純に“はい、そうですか”と決めるものではないので、相手方の財政状況なども確認をしながら可能な限り短期間で返していただきという処理になる。顧問弁護士とも相談しながら適切な対応がはかれるようにしていきたい。

本池 基本的には認めないが、経営状況にもよるのだろう。ずっと確認してきたが、なにもはっきり答えられる部分がない。全部協議のなかでの、“感触”のような話になっている。他の事業者からみて、これはどうなのか、と思われるものになっている。この規定にもとづいてこうしたというきちんと説明できるものがいるのではないか。40年もの案件などは今まで一度もないということも前回答えていただいているが、これを認めてしまったことが、今後の介護事業に大きな影響を与えかねないと感じている。すでに事業者の不信は募っている。介護保険制度は被保険者の保険料や税金でなりたっている制度だ。(事業者にとって)財源が十分ではないことは承知しているが、だからといってルール違反をしても「返済は数十年かけて少しずつでいい」というような運用がされれば、介護保険制度そのものが崩れてしまうが、認識を聞かせてほしい。

福祉部長 そうしたご意見は理解できるが、今回の案件についてはもともと地域的に経営が難しいということもあり、新型コロナ感染症の影響を大きく受けたこともある。その辺を考えたときには、決して結果としていいことにはなっていないが、今の金額で、確実に返していただくということで対応したいと思っている。そういった面では、現場の事業所の方に、今お話されたような意見があったかと思うが、ただ、あとでそんな判断だったのかといわれるような判断はしていないので、ご理解はいただきたい。

本池 部長はそういうが、明確なものがないではないか。行政は、根拠規定があってやっているという信頼がある。それがないようになってしまって、なんとなく“これは悪質ではない”“悪質だ”という感触だけで判断していいのか。この質問を取り上げるにあたり、事業者から意見も、介護現場の実態もお聞きした。これまで「人員配置基準を満たしていなかったのは勘違いだ」とか、「地域の介護を守るためにつぶすわけにはいかない」という説明を半年間うけてきた。しかし多くの事業者がルールを守り、まじめに事業をしている。そうしなければ指定も取り消されてしまい、介護報酬も入らなくなる。結果として地域の介護を守ることができなくなるからだ。そうした多くの事業者に対し、胸を張って説明できないことはするべきではない。このことについて今後考えて対応していただきたい。

【ご報告】6月議会で一般質問をおこないました。

6月30日に6月議会が終わりました。25日に一般質問をおこない、混乱し日てきた下関市のワクチン接種について質問をしました。以下、質問と答弁の要旨をご紹介します。少し長いですが、ご覧いただけますと幸いです。ワクチン接種について声を寄せていただいたみなさま、傍聴していただいたみなさま、ありがとうございました。

本池 新型コロナワクチン接種業務について質問する。下関市のワクチン接種体制を見ると、県内他市と比べあまりにも混乱をきたしており、多くの市民のみなさんから「下関はどうなっているのか」と怒りの声が寄せられている。「災害時に命を守ってもらえる自治体ではない」というお叱りの声もいただいた。これから64歳以下の接種も続く。これまでの教訓を踏まえて今後のとりくみを進めていかなければならない。下関市のワクチン接種の進捗状況だが、65歳以上の高齢者で、1回目の接種を終えた人の人数と接種率、2回目の接種を終えた人の人数と接種率を示してほしい。

九十九保健部長 6月25日朝9時現在の情報だが、1回目を終えた人が3万7479人、2回目を終えた人が4392人、接種率は1回目が39・1%、2回目が4・6%となっている。

本池 6月に入って医療機関での接種も始まり、少しずつ進み始めたところかと思う。予約の方も6月21日現在で、65歳以上の高齢者約9万5000人のうち7万3836人が1回目の接種または予約を終えているとのことで、残りは約2万1000人ほどになると思う。6月に入って集団接種会場が増設されて予約枠が広がり、予約をめぐる混乱も少し解消されてきたと推察される。一方、個別接種の場合、8月以降に接種を予定している高齢者の方が大勢おられる。そうした人たちが医療機関で安心して受けることができた方がいいとも思うが、市が「7月末までに希望する高齢者の接種が完了する」とくり返しいわれることに不安を感じる医療機関や市民の方もおられる。市がいわれる「7月末までに希望する高齢者の接種が完了する」の真意を今一度お願いする。

九十九保健部長 あくまで7月末までに希望される場合に、その方をしっかり打つように体制を整備しているが、ご自身の判断でそれ以降に打つ人もいると思うので、7月末までに打ちたいという人が打てる体制を整備するのが行政の役割だと思っている。

繋がらないコールセンターの運営について

本池 次にコールセンター等の運営について質問する。この1カ月半、混乱をきたしていたのは高齢者の優先接種だ。混乱の主な内容は「コールセンターに電話がつながらない」「医療機関でも予約ができない」ということ、集団接種会場が遠すぎることだったと思う。まずコールセンターの運営についてお聞きする。

5月10日に集団接種の予約受付が始まり、月曜日ごとに6回の受付日があった。6月15日、16日からは県の広域接種とボートレース下関での予約が加わり、21日に7回目の月曜日を迎えたところだ。15日以降は予約枠が広がったため、インターネット予約が可能になったものの、それまで電話・インターネットのいずれも、予約がとれる方が奇跡的といわれるような状況が続いてきた。65歳以上の方は、電話で予約される方が圧倒的に多いのが実際だ。しかし、「電話がまったくつながらない」と、みなさん本当に苦労しておられ、それは直近の6月21日の予約日も同様だった。

とくに14日の週までは、毎週月曜日は買い物にも病院にもいかず一日中電話をかけ続けているといったお話や、子どもさんが親のWeb予約のために仕事を休んだお話、携帯ショップに機種変更をしに行かれたお話、予約開始初日に2時間足らずで受付が終了したことを知らず午後5時まで電話をかけ続けたお話、5月の電話代が高額な請求が来たというお話、あまりにも予約ができないため接種をあきらめたというお話等々……あげればきりがない。このたび下関市はワクチン接種のためのさまざまな業務を業務委託されている。委員会でコールセンター業務の委託先は、凸版印刷とJTBのJV(共同企業体)と聞いたが、それぞれどんな内容をどこに、いくらで契約したのか、わかりやすく示してほしい。

九十九保健部長 令和2年度に凸版印刷・JTB共同企業体に対して委託した内容だが、高齢者用の接種券の印刷業務とコールセンターの設置・運営に関する業務で、金額は接種券の印刷が894万9976円、コールセンターの設置・運営に関する業務が3314万7773円。令和3年度に凸版印刷・JTB共同企業体に委託した内容は、今後状況により内容が変更となる可能性もあるが、現時点のもので、高齢者以外の方の接種券の印刷業務、コールセンターの運営、予診票データの作成に関する業務と、集団接種会場の設置・運営に関する業務となる。金額は接種券の印刷が1490万2633円、コールセンターの運営、予診票データの作成に関する業務が2億8581万228円、集団接種会場の設置運営に関する業務が2億2318万6407円となっている。

本池 非常に高額な委託となっている。今回の接種にかかる費用は全額国の負担とはいえ税金だ。委託した業務が遂行されているのかはきちんと見なければならないし、接種予約がうまく機能せず、市民に大変な迷惑をかけてきた責任についてはっきりさせなければならない。電話がつながらない要因は電話の台数が少ないことだった。3月の接種券発送時点では17台で対応されていた。3月末に全高齢者のもとに届けられた接種券とチラシは、予約開始時期、接種時期などがなにもわからないものだったので、多くの方が問い合わせの電話をしており、この時点でも「電話がつながらない」という状況が発生した。このときコールセンター側の答えが「ワクチンがいつ届くかわからない」「いつから予約できるのかわからない」というものだったので、「なにも決まっていない」ということを聞くためだけに料金が発生することに、怒りの声が寄せられた。せめて、なにか説明できる状況でコールセンターを開設すべきだったと思うが、開設時期については市側が決めたのか。

九十九保健部長 市の方で判断した。

本池 つながらない状態でみなさんが電話して、時間だけかかって料金がとられるということに、料金をとるために電話を開設したのではないかという声も聞かれた。もう少し開設時期についても市が考えられてもよかったのではないか。ようやく集団接種の日程と予約開始の日が決まり、受付が5月10日から始まったが、電話の台数を3台増やして20台で対応されていたと聞いている。約8万8000人を対象にしたコールセンターとしては、圧倒的に不足していることは一目瞭然だが、17日の個別接種の予約開始でも電話の台数は増えず、6月1日に3台増やして23台になり、そのまま3回目の受付日をへて今日まで来ている。初めの「17台」は市が指定したとのことだが間違いないか。また、17台にした根拠を示してほしい。

九十九保健部長 人員は市の方で判断した。3月の状況では17名の状況で、あまり問い合わせも多くなかったが、4月に接種券が届いてからかなり問い合わせが増えてきた。3月の状況を踏まえて3名追加することとしたが、結果的には想定以上に問い合わせが多くなってしまった。問い合わせについてはもう少し厳しく見積もって人数を増やす必要があったかと思うが、結果的に見込みよりも多いコールがあったという状況だ。

本池 追加の台数「3台」についても市が決めたということだが、コールセンターに電話がつながらないため、保健部内の電話も鳴りっぱなし、保健部にもつながらないので市役所内のほかの課所室にも市民から電話がたくさん入っていたと聞いている。窓口に直接足を運ばれる市民も多くおられたし、こうした状況が発生しているなかで、「30台」ならまだしも「3台」で足りると思ったのはなぜなのかを知りたい。

九十九保健部長 コールセンターを立ち上げた3月の時点ではあまり問い合わせがなかった。接種券を配ることで問い合わせが増えるということで3台追加したが、結果的にそれよりも多い問い合わせが4月以降増えてきたということだ。

本池 接種券を発送された時点で電話がつながらない状況は私も何人もから聞いていたが、それが何日ほど続いたのか。3月の段階ではそこまでつながりにくい状況ではなかったと部長はいわれた。しかし私は市民からつながらなかったと聞いている。つながらない時期はあったが解消されたのか、もともと混雑していなかったのか。

九十九保健部長 手元に3月の詳しい状況がないが、私が聞いているのは3月に立ち上げた段階では問い合わせはあまりなく、当然接種券を配る段階になって問い合わせも増えてくると思う。なかなか委託先スペースの問題や人員の問題もあり、各自治体で同じようなことが起きているので、下関が例えば“思ったよりも多かったので10人増やしてくれ”といっても迅速に対応できるものではなかった。

本池 体制の増員について発注をかけたのはどの段階だったのか。

九十九保健部長 こちらは担当と先方の担当者が随時状況をやりとりしているので、そのなかで打診をしているものと認識しているが、なかなかすぐにはというふうな状況で回答が返ってきた。

本池 やりとりのなかで3台ずつになったということか。

九十九保健部長 先ほどの答弁と重なるが、3月の時点ではそれほど混雑をしていなかったが、3人増員というのは早い段階で、つまり、混みあう前から3台増やすことをお願いしていた。そのあと混雑がわかっても、先方としても増やすことが難しいという状況だったと認識している。

本池 6月21日の受付時点で予約できていない高齢者は約2万1000人だが、それでも電話につながらない状態だ。ましてや対象者が9万人近くいて、その半数が電話してくると考えても、20台では対応できないのは明らかだ。65歳以上をさらに年齢ごとに細かく区切るのであれば20台でも納得いくが、9万人の全対象者の受付を一斉にスタートさせ、まして下関の場合1週間ごとの予約受付にしたのであれば、それに対応する体制をとらなければならなかったと思う。保健部内で体制を大幅に増やしたほうがいいといった意見は出されたのか。

九十九保健部長 答える前に、先ほどのコールセンターの状況についての資料が来たので答える。3月、4月の状況だが、コールセンターの応答率が、3月20日まではおおむね100%で応答していたという状況だ。ご指摘の3月30日、31日あたりは応答率を見ると、30日が76%、31日が57%となっている。4月の時点ではおおむね9割ぐらいが応答できていて、実際に予約が始まった段階からが一番つながらなくなったと認識している。

実際に予約が始まって、かなり電話がつながりにくくなった状況が発生したことについて、事前にもう少し大量に人を増やすべきだというのは私自身なかなかそこまで見込めていなかったところもある。振り返ってみればそこは改善ができたのかなと考えている。

本池 5月10日からの月曜日ごとの応答率を教えてほしい。

九十九保健部長 入電応答率は5月10日が10・1%、17日が11・9%、24日が13・7%、31日が2・0%、6月7日が3・4%、14日が4・3%、21日が5・1%と推移している。月曜日が一番集中する状況だが、例えば直近の6月22日が12%、23日が23・6%、24日が63・3%とかなり曜日によって応答率の差がある状況だ。

本池 とくに5月がほぼとれていない状況だ。これはコールセンターにつながったうえで対応できた数であり、NTTの段階で「込みあっております」ではじき出された数は反映していないと思うが。

九十九保健部長 ご指摘のとおり、NTTの制限にかからなかった数と認識している。

本池 ということはもっとたくさんの市民が電話がつながらない状況だった可能性が高い。これほど電話がつながっていない状況を市が認識されたのはいつごろなのか。

九十九保健部長 このような数字は毎日モニタリングしているので、そういった意味では、モニタリングしながら対応をとってきたが、実際に一気につながらなくなってから人員を増やすように検討をしてきたが、なかなか直ちには増員ができなかったという状況だ。

本池 県内の自治体も当初は下関市と同じような混乱が起きているが、周南市のようにオペレーターを倍増させたような自治体もある。業者との関係はよくわかったが、市民がこれでは混乱する、この混乱をどうするのか、という検討があまりにも遅すぎたのではないか。予約すらとれない状況で「安心してくれ」というのはあまりにも無責任といわざるをえない。

少なすぎる集団接種会場について

本池 次に、集団接種会場についてだが、下関市は当初、集団接種会場が下関市体育館の1カ所しか設置されていなかった。旧四町の場合、かりに予約できても1時間以上かけて来なければならない地域もある。対象は高齢者なので、運転免許を返納して移動手段のない人も多くおられる。旧下関市内ですら足が悪くて体育館まで行けないという高齢者はたくさんおられるが、どのように考えて1カ所にしたのか。

九十九保健部長 基本的に身近なところで接種していただくのが、ご高齢の方の利便性を考えるとよろしいかと思う。現時点で接種できる個別の医療機関が市内に150あるなかで、集団接種会場を分散して設置するという考え方と一つ置く考え方があるが、下関はご高齢の方の人数が他市に比べてすごく多いので、効率よくどんどん打っていかなければならない。集団接種会場は下関の場合は土日だけではなく常設で、規模としては大きな会場になる。それを1回1回場所を移動すると設置・撤去に丸1日かかってしまい効率性が落ちるということで、本市の考え方として、撤去・設置の時間もかからず効率よく迅速に打っていけるというメリットを勘案して集約型の集合接種会場とした。

本池 常設を考えられたということだが、例えば旧郡部や離島などは大規模なものはいらず、公民館などでもできる人数だ。医療機関も公表されているのは39で、今は150までになっている。これが公表されていないから混乱してしまったわけで、個人個人の責任で問い合わせるよりも、常設ではなく1日で終わる人数のところもあるし、例えば離島などでは集団接種を考えられてもよかったのではないか。

先日、高齢者の優先接種についての予約状況をのべられたさい、集団接種が約1万5000人、個別接種が約5万1000人という数字を公表された。この割合でいくと基本的には医療機関での個別接種で実施し、集団接種は補助的なものという位置づけに思えたが、これは当初から想定されていた割合なのか。

九十九保健部長 あくまで個別医療機関で接種していただくというのは協力ベースのものだ。コロナの業務が加わっているなかにワクチン接種業務が加わることで非常に医療現場は戦々恐々としていたのが事実だ。実際150の医療機関に賛同いただいたが、そこに電話が殺到して、通常の診療が厳しいという切実な声が届いた。市民のみなさまにとってすべての情報を公表できることが利便性がいいというのは私もよくわかるが、私も1年半医療現場と一緒にやってきて、そういう声もなかなか無視することはできなかったので、現在こういった状況になっている。不便をおかけしているが、ご理解いただきたい。

本池 市としては大規模な集団接種会場を1カ所しか設置しなかったということは、個別接種をメインにやっていくつもりだったのか? ということを聞いている。

九十九保健部長 個別の医療機関がどの程度参加されるのかということ自体はアンケート等で把握したが、医療機関自身もファイザーワクチンというものが、当初はかなり特殊な扱いをしなければならないものだった。報道のさいに廃棄するとそこがピックアップされるため、少しでも廃棄することを怖がっていた。そのなかで実際どこまで伸びるかという予想が立ちにくかった。結果的に5万人ほど打っていただくようになった要因は、ワクチンの扱いが緩和されたこと、接種に慣れてきたこと、あとは国の措置で接種を促進させるような補助が出たことも影響したかと思う。

本池 結果的にこういう数字にはなったけれども、そこには大変な医療機関のご協力があるということだ。そして医療機関だが、医療機関の一覧を載せたチラシが配布されたが、掲載されているのは当初、137医療機関のうち39カ所だった。さらに電話番号が記載されているのは25カ所だ。市民はこの25カ所に17日の前から電話をされているし、通常診療ができないという状況にまでなっていた。このチラシ自体は、職員の方がゴールデンウィークを返上してつくってくださったとお聞きしているが、39医療機関の位置付けはどのようなものだったのか。

九十九保健部長 医療機関の公表に関しては、ワクチンの接種に関する説明会を市内の医療機関を集めておこなった。とくに医療機関にとっての懸念としては公表することによって問い合わせが殺到して診療に影響を及ぼすことについても説明し、公表して大丈夫だというところが掲載している。

本池 掲載した医療機関のなかには、かかりつけの患者だけに打つという認識でチラシに掲載したところが多かったようで、市民からの電話が殺到して病院側も困惑されていた。説明会で説明されたということだが、そのあたりの連携がどうなっていたのかとも思うが、結局それによって職員の方が苦労してつくられたチラシが数日で意味をなさないものになってしまった。そのあたりの綿密な連携が必要だったのではないか。集団接種も個別接種も目詰まりした状態が1カ月以上放置されてきて、6月8日にコールセンターの増設、同14日にボートレース下関に集団接種会場を設置することが発表された。それに加え、旧四町の医療機関の予約枠拡大、菊川・豊北の住民を対象にしたバスの運行も発表された。その直前まで「集団接種会場の増設は考えていない」とおっしゃっていたかと思うが、急きょ増設の方向に方針転換された理由は何だったのか。

九十九保健部長 増設はしない予定というふうに答弁したような記憶はないが、会場に行かれたらわかると思うが、かなり大規模な医療スタッフ、委託をしているJTBのスタッフも入っている。常設というのは言葉では簡単だが、気軽にもう一つ増やすということをいえる状況ではなかった。医療機関にくり返しワクチンの接種速度を加速させる必要性を説明し、ご協力いただける医療機関が増え、目途がたったので、今回そういった方針をうち出すことができた。

本池 県の接種スケジュールも発表され、一気に流れが変わり、6月15日、16日の県の広域接種(海峡メッセ会場)とボートレース場での予約開始日には、インターネット予約に限り「予約できた」という声をいただいている。体制強化がなされたこと自体は大変喜ばしいが、逆に今できるのであれば、なぜこれまで動かなかったのかとも思う。5月10日の予約受付前から、もっといえば接種券の発送直後から、電話の体制の脆弱さについては露呈していたはずだ。

しかしなにも体制をとられないまま受付開始を迎え、そのことによる混乱はみなさんご承知の通りだ。しかしその後も状況は改善されず、1カ月半脆弱な体制のまま走り続けてきたというのが下関の現状だ。なぜそのような事態になってしまったのかというのは市民の大変な関心事だが、初動の遅れが起きた原因はどこにあるのか、初動の遅れはなかったとお考えなのであれば、その認識も含めて聞かせてほしい。

九十九保健部長 当初、医療従事者の優先接種が始まった時期があったが、3月中に医療従事者をすべて終わらせると医師会も含めて総出で体制を組んでいた時期があり、本市は医療従事者の接種をおそらく全国でもかなり早い段階で集合接種会場で実施したところでもあるが、そんななかでワクチンが実際に来なかった。想定よりもほんとうにわずかしか来ず現場が大混乱をきたしたという経緯があった。そういったことも踏まえ、ワクチンについては慎重に、ワクチンが来ることがわかってから体制を組もうということになり、医師会とも協議して6月7日から慎重に始めようということになった。結果的にその後7月末までの方針が示されるなどして、その後で国全体の命題になってきたので加速しなければならないという機運も高まってきてそれに対応してきた。

前田市長の見解は?

本池 6月3日現在の山口県内13市のワクチン接種の進捗状況の表を見ていただきたいが、ご覧のとおり、予約率、接種率において下関市は県内他市よりも非常に遅れをとっていることがわかる【表参照】。その後、先ほどからのべているとおり突然次々に加速化対策がうち出され、現在の状況はこのときよりも変わっているが、今も県内で遅れている事実は変わらない。

国のワクチン供給がなかなかはっきりせず、先ほどいわれたように医療従事者のときは来なかったり、遅れた挙げ句に「7月中に高齢者の接種を終える」と発言したり、地方自治体を追い立ててきたことについては国の責任だと思う。ただ、その条件は県内他市も同じだ。少なくとも、ワクチン供給が確実になった時点で、一気に進めることができるよう、十分な予約・接種体制が組まれなければならなかったと思う。国からの連絡を待っているあいだに、近隣自治体は地域の実情に即して能動的に体制を組んでいたことがこの進行状況の差となってあらわれているのではないか。先ほど高齢者が多いといわれたが、高齢者が多い分、医療人材や職員数も多く、そうした人たちをいかに束ねて事業を進めるか、そのリーダーシップが問われたのがワクチン接種だったように思う。

全国的にも、市民の混乱を目の当たりにして急遽予約方法を変更するなどし、全国で注目を集めた自治体もあった。岐阜県美濃市では、当初、下関市と同じようにインターネットと電話での予約を進めていた。しかし市民が混乱するとの見通しから急遽予約方法を変更し、地域ごとの日時指定方式に変更されたそうだ。そのさい再度65歳以上の全対象者に変更についてお詫びの手紙と日時指定のチラシ、それに送迎バスの時刻表を郵送している。「これでは市民が困る」と判断したときに速やかに変更し対応できる、変更によりいくらかの混乱はあると思うが、すでに生じている混乱をいつまでも長引かせるよりは、変更して分かりやすくする方がいい。市民が困ると分かった段階での速やかな変更が必要だが、それができなかったのはなぜなのかと考えると、そうしたことを考える人的・時間的余裕もなかったのではないか。質問だが、新型コロナ感染症への対応はどのような体制で何人でやっておられ、そのうちワクチン接種対応班は何人でやっておられるのか。

九十九保健部長 新型コロナウイルス感染症対策推進室全体の145名に対し、ワクチン接種対応班は班長以下24名で組織され保健部の職員が12名、保健部以外の職員が10名、会計年度任用職員が2名となっている。

本池 ワクチン接種だけで見ても、個別接種をする医療機関との連絡も、場合によってはご無理をいわなければならない場面も多いなかで相当な苦労があると思うし、集団接種の会場運営は大変な作業だと思う。これに加え市民からの電話にも対応しなければならないと思うが、どのような業務を何人ずつでやられているのか。

九十九保健部長 「総務広報グループ」が周知や広報に関すること、コールセンター及び予約システムに関すること、接種券送付や再発行に関することなどで6名。「専門対応グループ」が、集団接種会場の医療体制や医療専門職の確保に関することなどで7名。「接種対応グループ」が集団接種会場の運営や設置に関すること、ワクチンの要求や配送に関することなどで6名。「被接種者グループ」が高齢者施設の入所者及び従事者の接種の調整に関することなどで3名。その他に班長1名と専門対応グループと兼務の副班長が1名、その他1名を置いている。

本池 コールセンターがつながらないために市民から電話が殺到しており、日中は本来の業務に手がつかない時期が長期にわたってあったことは容易に想像できる。苦情対応で手いっぱいではワクチン接種受付の変更などできるわけがない。その合間に数人で業務をしていれば職員のみなさんは疲弊してしまう。ワクチン接種対応班24人にすべてを任せるのではなく、初めから全庁的にかかわるべきではなかったのか。先日関係部局の連絡会議が立ち上がったと保健部長がいわれたが、初めから、もしくは「これでは進まない」と判断した段階で、下関市として蓄積してきたノウハウを生かすべく、そうした組織を立ち上げ、ワクチン接種関連の事務にあたるべきではなかったかと思うが、その点についてどう考えているか。

九十九保健部長 各部局から多くの人員をワクチン接種対応にいただきながら業務を進めてきたが、少しフェーズが変わってきて、職域接種が始まるとか、64歳以下の接種になるとさまざまな接種のやり方がなされるようになり、優先順位の考え方を自治体独自に考えていく必要性が出てきた。庁内の連絡会議を立ち上げたほうがいいというフェーズになりその時点で立ち上げた。

本池 全庁的というのは人を集めるだけでなく、各部署が持つノウハウや把握している地域の実情などが集約されるような組織でなければならなかったと思う。今、手元にあるのは、豊北町の方からいただいた「令和三年度市・県民税申告相談日程」と「投票所無料運行バスの運行表」のチラシだ。こうしたものからもわかるように、例えば巡回型の集団接種会場の設置や、それが無理なら接種会場までの移動手段を用意するなど、市役所として市民を動員するノウハウを持っている。

今回、下関市がつくったワクチン接種予約体制があまりにも脆弱であったため、コミュニティの強いところでは医療機関と住民が直接連携をとり、独自に接種の体制を整えている。その典型が蓋井島や角島だが、蓋井では市内の医療機関が島に来られ小学校を会場にして希望者全員の接種をおこなったと聞いているし、角島では診療所と振興協議会が連携し、自治会長が自力で接種に行くことが困難な高齢者を募りリストを作成し、診療所が接種体制を組み、6月14日から順次接種が進んでいる。こうした地域では「接種ができる環境さえ整えてくれれば、そこへの動員は地元でいくらでもできる」といわれており、住民一人一人の情報を一番よくわかっている地元のみなさんの英知を集めれば、一人一人が自己責任で予約をとるよりもはるかに効率的なことが明らかになっている。医療機関とのやりとりは保健部でなければできないかもしれないが、旧四町の接種体制については総合支所で知恵を借りるなどしておけば、まだ違った対応ができていたのではないか。

「保健部は頑張っている」「大変だ」という言葉をよく聞く。頑張っていないとはだれもいっていないし、中核市の下関市は陽性者の対応なども独自にされているので、日夜奮闘されている職員のみなさんには本当に感謝しているところだ。しかし、いくら頑張っても結果的に市民が大混乱に陥り、ストレスをためている現実には向きあわなければならない。「頑張っているから文句をいわないでほしい」と耳をふさいでいたのでは、ますます混乱に拍車をかけてしまう。災害対応ともかかわるが、現実を把握し問題があれば実態に即して変化させることが必要だ。保健部に任せきり、職員のみなさんが体を壊すまで負担させるのではなく、市長が統率して市民が安心できる体制を整えなければならなかったと思う。これほど混乱が長引いたことについて、市長はどのようにお考えか。教訓とされたこともあるかと思うので見解をお願いする。

前田市長 本池議員がこの質問の冒頭から、市民のこれまでの混乱、大変苦しんだ声、さまざま聞かせていただいたが、私の方にも早くから当然届いているし、それを解決するためにこれまで全庁挙げて努力してきた。結果的にはいわれるように、大変遅れと混乱をきたす結果になった。それは大変申し訳なく思っているし、今回すべての責任は責任者である私にあると、そしてその厳しい批判もすべて、甘んじて受けなくてはいけないという気持ちでいる。そしてただ謝るだけではなくて、この先まだまだワクチン体制が続くわけだから、今回の教訓を生かして巻き返していかなくてはいけないと、県内どこよりも早く、要求する全市民に接種ができるようしっかりと統率していきたいと思う。

そのなかで少しお話したいが、九十九部長が自分の言葉で話されたが、今回のワクチン接種体制は市役所だけではできないということだ。さまざまな人の力を借りながら、うまく組み上げて対応していくということになる。ちらっと出たが、なぜ下関が接種のスタートが遅れたかというのは、さかのぼること2月、3月に医療従事者の先行接種のときに、ものすごくいい体制で医師会と組んでスタートを切った。しかしここにワクチンが届かなかった。大空振りしてしまって大混乱。私も選挙の真っただ中に知事と電話でやりとりしたくらい。そういう過去があって、みなさんちょっと萎縮してしまったことがある。ワクチンが確実に届いてから一歩一歩やっていこうという慎重な考え方が基本になってしまったところがある。

それを医師会のみなさんに、いやいや巻き返してくださいということもなかなかできず。というのが、下関は中核市であるがゆえにコロナの感染対策をしながらワクチンをやっていかなくてはいけないという、非常に厳しい、もう連日戦場ですよ。みなさん満身創痍の状態。それは医師会もそうだ。発熱外来もずっとお願いしてきているし、ホテル療養の方も人が足りない。あまり県に頼ることもできないからということで、自分たちで全部やってきて、それを同時並行でやっていくなかで、ものすごく支障がいろんなところに出た。電話がつながらないのもわかっていた。30回線増やしてくれ、40回線にしようって、ずっといっていくけど、なかなか向こうの会社さんも一気には増やせない。お金積めばいいって問題じゃなくて。そういったことでいろいろ理由はあるが、すべて結果的に私の責任だと、申し訳ないと思っているし、すごいメールも届いている。読むのがつらいが。それは私の仕事だと思っている。しっかりとみなさんの心を整えながら、市民のためにやっていくことだろうと思っている。引き続きどうぞご理解よろしくお願いいたします。

本池 保健部は感染対応もしながらやらなければいけないというのは本当に大変だったと思う。だからなおさら全庁的にノウハウを生かしてやる方法をやっていただきたい。今月5日に市長はワクチン接種をされているが、それが悪いとはいわない。ただ、やることをやっているリーダーとそうでないリーダーとでは市民の受け止めはまったく違ってくるし、後者の場合は批判が高まるのは当然だ。6月半ばより事態が改善されたことは大変評価するが、このたびのワクチン接種をめぐる混乱を痛い教訓にして今後の市政運営をおこなっていただきたいと要望し、質問を終える。