9月議会が閉会しました。(一般質問のご報告)

22日に9月議会が閉会しました。今回の一般質問では、令和3年度に発覚した未集金となっている介護報酬過払い金について質問をしました。この事件は、市内の介護事業所(1社)に対し下関市が3億円にのぼる介護報酬の過払いをしており、その返金について、40年以上にもわたる分割納付が認められたものです。数十年になる返済計画は過去になく、同業者の方々からも疑問の声が上がっています。今回、過払い金が発生した経緯や、なぜ40年以上にもわたる返還計画が認められたのか、判断基準の根拠としたものはあるのか、政治家の介入はなかったのかについて質問をしました。以下、質問と答弁の要旨を報告させていただきます。

未集金となっている介護事業者への介護報酬過払い金について 

 本池 ちょうど1年前、令和2年度決算の下関市介護保険特別会計介護保険事業勘定歳入歳出決算書において、突如2億2361万2973円が返納金の収入未済額として計上された。今議会に提出されている令和3年度決算でも返納金の収入未済額は2億1775万5825円となっている。ちなみに令和元年度の決算における収入未済額は207万円だった。巨額の収入未済額は令和2年度中に調定されたものだ。まず、令和3年度決算の収入未済額のうち事業者への過払い金で未収金となっているものは何件で、それぞれいくらあるか。

冨本福祉部長 令和3年度の下関市介護保険会計歳入決算、款諸収入の収入未済額は2億1775万5825円の決算額ででご指摘の通り。内訳は2件で、1件は2億1739万9467円で、質問の対象となっている行政指導に基づく返還金だ。もう1件は、35万6358円で行政処分として返還を求めていたものになる。

本池 大半が1件の返還金だ。このような過払い金がどうして発生したのか、対応及び回収は適切になされているのか質問する。発生の経緯だが、当該事業所の件については、平成25年度に実施した監査において、人員基準を満たしていないことが判明したため、改善勧告をおこなうとともに、介護給付費の請求の是正について文書指導をおこない、平成27年4月から、国民健康保険団体連合会のシステムを通じた過誤調整による返還が始まったということだ。当初は10年で完了する計画であったが、その後、相手方法人の経営状況から10年以上を要することが確実となったとのことだ。令和2年度に改めて相手方法人と今後の対応について協議をおこない、毎月50万円づつ、約40年かけて返済していく計画になったということだ。経緯については間違いないか。

福祉部長 間違いない。

本池 この決定にいたるまでの公文書にも目を通しているが、3億円に迫るほどの巨額な案件に対し、過誤調整で対応したのはなぜか。

福祉部長 行政処分ではなく行政指導で対応させていただいた。基本的に行政指導で対応した案件については、過誤調整ということで、誤った金額を毎月支給される介護給付金から差し引く手続きをとるようになっている。今回の案件も行政指導であったということで、過誤調整で対応している。

本池 過払い金が非常に巨額だが違反の内容はなにか。「人員基準を満たしていなかった」としかないが、違反の内容について述べてほしい。

福祉部長 配置が必要な専門職が人員の基準に達していなかった。

本池 介護報酬の算定については、複雑であるがゆえに過誤は少なくないと聞いている。入所者の介護度や人数、施設の人員、提供しているサービスなど、複合的な要素で計算されるため過誤が起きやすい。しかし、今回の場合は「人員配置」だ。しかも専門職。老人福祉施設における人員基準はそれぞれ明確に定められており、勘違いが起こるのかという問題がある。同業者にもお話を聞いたところ、毎年法人の状況や人員配置等について報告する「自己点検表」があるとのことだ。手元にあるのは介護老人保健施設の自己点検表だが、施設の種類によって、チェック項目があり、それぞれの専門職が何人いるか、それに対して「はい」「いいえ」の2択で答えるようになっている。過払いがあった期間について、法人側が「満たしていない人員」について、「いる」としていたのか、逆に「いない」と記載しているのに市が支払いを続けていたのか、この二つが考えられまるが、どちらか。

福祉部長 人員基準を満たしているという報告になっていた。

本池 事業者のほうが、いないにもかかわらず「いる」と書いていたということか。

福祉部長 丸をつける欄があり、そちらに「満たしている」と丸をつけていた。

本池 開業時から人員欠如が生じた状態だったのか、それとも途中で人員欠如が生じたのか。

福祉部長 この人員配置については平成22年6月からと把握している。

本池 平成22年6月から今までいた人員がいなくなったということだ。途中で人員欠如が生じたにもかかわらず、いないものを「いる」と報告していたのであれば明らかに虚偽報告にあたると思うがどうか。

福祉部長 基準については明確に文書化されているところでまずは判断するが、それぞれいろんな施設なり事業所なりで状況が違うため、解釈というものが国から示されている。その解釈について、こちらの事業所の方が誤った認識をしていたことが原因だ。

本池 誤った認識ということだが、先ほど自己点検票では「いる・いない」で答えるようになっている。それに対して解釈という余地があるのか。「いる・いない」しかないのにどのような解釈をされていて、誤った認識だったのか。

福祉部長 こちらの事業所の判断として、事業所の中の体制でカバーできるという判断をされていたという解釈の誤りだった。

本池 体制でカバーできるという相手方の主張があるから、市は勘違いだったという主張を認めたのか。市が、虚偽報告ではなく誤った解釈をしていたという主張を認める理由はなにか。

福祉部長 自己点検票だけで判断するのではない。聞き取りに行って、向こうの状況もお聞きをして、いろんな書類を調べて判断していく。そのなかで、詳細は申し上げられないが、解釈基準の判断のなかで、事業所としての全体的にフォローができる体制について、解釈自体は誤っていたがその範囲のなかでそこの事業者さんはそのように判断された。あとはいろんな報告とか説明をしてもらっているなかで、通常処分になる場合は、その職員がいないにもかかわらずいたかのような虚偽報告されたりということがあるが、こちらの事業所はそういった虚偽報告というかたちの悪質性はなかったので、指導という対応で処理させていただいた。

本池 公文書を見ていると、当初は月々350万円の支払いを約束したにもかかわらず、翌年には返済が滞っている。そして令和2年1月27日付で、事業者から「介護給付費返還の方法に関する上申書」が届いており、「月額100万円ずつの返済」を希望する内容となっている。その理由の一つとして“当時の福祉部長が「現在実施中の毎月の返還は、※※(黒塗り)、法人全体の運営状況、資金繰り等から返還が困難であるときは、猶予・延滞しても致し方ない」との判断がなされました経緯がございます”と書いてある。面会要約も添付されているようだがこの発言自体は事実か。市はこの事業者のこの主張を認めたのか。

福祉部長 私どもの記録も確認したが同じような記録はなかった。相手方にも確認したが、相手方についても把握と認識とがあやふやの状況だった。私どもとしては、それ以外の場面では、減額は認めることはできないと、どの場面でお話する場合でも一貫してそのように説明している。

本池 発言は事実ではなく、事業者がいっている主張については認めていないという理解でよいか。

福祉部長 認めていないと言い切れるかどうかはわからないが、こちらとしては記録がないし、こちらが一貫して説明しているとこと説明内容が異なるということで、そういう意味では、私どもとしてはそういう発言ではないという認識だ。

本池 この上申書に関していえば、コロナの影響をうける前の話だ。(福祉部長の発言については)記録がないし、事業者の認識と違うということだが、結局その後、コロナによる経営難を理由に100万円どころか50万円の分割納付を認めている。その経緯についてだが、返済が滞り始めてから月50万円の返済を認める方針が決裁された令和3年2月までの4年あまりの間、放置したわけではなく協議をしてきたといわれたが、いつ、どこで、だれと、どのような協議をしてきたのか。

福祉部長 対面で協議をしてきたのが14件ある。基本的に福祉部長、次長、介護保険課長、担当職員で対応している。

本池 市長が面会されたケースはあるか。

福祉部長 市長は3回面会している。私どもと同様に指導が適正になされたものと説明してもらっている。

本池 対面で14回、それとは別に市長は3回、計17回以上は協議されてきたことになるが、その内容は?

福祉部長 50万円の返還額になったのは最終的な協議の結果で、その間、その間相手方の経営状況であったり、保険料を預かっている立場としてというところで、こちらも顧問弁護士に相談しながら、相手方も顧問弁護士や税理士と相談しながら協議を重ねていったというところだ。

本池 最終的に50万円を認めたというのは、市長が対面されて判断されたということか。

福祉部長 当然協議のなかで福祉部で責任を持って話をお聞きしている場面もある。最終的に50万円でもやむなしというのが適切かどうかはわからないが、結論を出して、方針伺いを出して、市長まで決裁いただいて出した結論だ。

本池 先ほどの福祉部長の発言についても認めていなのに、結局、事業者のほうに譲歩に譲歩を重ねているようで、きわめて不可解に感じる。政治家の関与を問う声もあがっているがそのような事実はなかったのか。

福祉部長 責任をもって、行政としての判断をさせていただいている。

本池 電話や問い合わせもなかったか。

福祉部長 福祉関係の事業所については、おおむねどこも県議や市議とのかかわりはあるが、議員さんのほうからもそういった形で私どもにお話されることはなかったし、あくまでも行政として判断をさせていただいている。

本池 福祉施設については、いろんな政治家から連絡があると。全般の話としてではなく、この件について、100万円でも認めなかったところを最終的に50万円での支払いを認めているが、そのことに関して政治家の介入はなかったかと聞いている。

福祉部長 50万円の金額に関しては相手方の弁護士、税理士、私どもの顧問弁護士とも相談して、地域的に経営がもともと難しい状況にある事業所ではあるが、新型コロナの影響を大きく受けている事業所であったので、あわせて決算書なども確認している。そうした総合的な確認のなかで50万円と結論を出させていただいた。

本池 50万円の支払いを承認するうえで経営状況の確認をしていると思うが、それはどのようにおこなったのか。

福祉部長 決算書のほうは毎年いただいている。毎年いただいたものをすべて表にして、とくに前後の3カ年を踏まえた確認が十分できるようにして、事業収入や負債などがどういう変化をしているのかについて確認している。

本池 事業者が市に提出したものだけなのか、業者のほうに出向いて他の書類も確認されたのか。

福祉部長 基本的には提出をいただいているものになるが、私どものほうが決算書の中身で疑問に思うところなどは相手方のほうに連絡をいれて確認するなどしながら確認作業をおこなっている。

本池 2億の過払い金を40年かけて返済するという計画を市が認めたことについては業界の方々みなさん驚いている。介護事業者の方々にお話を聞いたところ、過誤はありうることですが、「人員配置に関しては勘違いということはありえない」とみんないわれる。同じように市の監督を受けている事業者の実感としては、「指定取り消しの案件」という受け止めです。100歩譲って、それが勘違いで起こったものであったとしても、「自分だったら借り入れをしてでも、まずは公費の返済をする」「それがが当たり前」とか、「これまでいた人員が減った時点で、市に相談して対応を考えるのが普通ではないか」と指摘されていた。それが行政から指定を受けて事業をおこなっていく、もっといえば地域の介護を守っていく者の責任だと。みんながルールを守ってやっているのだから当然の話だ。どうしてこのようなことが認められるのかというと、すべて行政処分をしていないからなのだが、行政処分をしないとした判断基準、根拠はなにか。

福祉部長 行政処分については、組織性であったり悪質性であったり、被害の大きさであったりを総合的に判断する。今まででも行政処分をした案件があるが、いない人をいるかのように装った報告であったり、計画であればつくっていないのにつくったような虚偽の報告をしたり、悪質な内容のものになるが、今回のことは、適切とはいえないが、そうした悪質性はなかったというところで行政指導という最終的判断をさせていただいている。

本池 部長が今述べたなかで、「いないものをいるとしたり」といったが、点検表においてはいないものをいるとしている。事実として。今、手元に監査後の平成26年3月に下関市が事業者に対して出した改善勧告がありますが、人員配置基準の違反だけでなく、「現況」の欄を見てもひどい内容が見受けられる。4人の部屋に5・6人いるとか。これは悪質とはいわないのか。

福祉部長 人員基準以外でお話された内容については、当然自己点検票と現地に行って確認をしたときに事業所のほうには適正な対応をするようにという指導を必ずする。合わせて文書で送って、それが改善されたかどうかの報告ももらうシステムで対応をしている。

本池 対応するのはいいが、こうした内容が悪質というものには当たらないのかと質問している。

福祉部長 例えば、職員の方が利用者に虐待的な行為をしていたということであれば当然、不適切な対応になろうかと思うが、部屋の利用されている方の人数であったりは、それをもって悪質とは判断していない。あくまでも現地に行って、それが利用者にとって不適切な内容であればそこは指導する。そういうところでご理解をいただきたい。

本池 行政処分をしていない場合、債券回収の規程はあるか?

福祉部長 規程と申しますか、厚生労働省のほうでマニュアルがあり、まずは事業所のほうが自主的に点検をおこない、適切な介護給付費の調整をするというマニュアルは示されている。

本池 今いわれたのは過誤調整をするときのことだ。行政処分をした場合は、「下関市債権管理条例施行規則」に則って回収をおこなっていくと思う。しかし、今回の場合「行政処分をしていない」ことによりこの条例施行規則の対象となる債券ではなく、回収に関して業者のいい分を認めざるをえなかったり、情報公開資料も黒塗りということになっている。こうなれば、なぜ行政処分をしないのかという説明責任が求められる。施設にいない人員を「いる」としていたことは先ほどからやりとりしているが、「悪質」「悪質でない」の判断基準はなにか。

福祉部長 ご説明が難しいが、当然適切な人員配置ではなかった。ただ、事業所のほうが主張する解釈にもとづいてというところは、本当に誤った解釈をしていたということで今回のような判断をしている。          

本池 続いて回収状況について質問する。まず、今年の予算議会で、回収が確実である未収金については収入として記載するべきだと指摘させていただいた。これは市の回収意志があるかどうかという重要な問題だ。その後どうなったのか。

福祉部長 昨年度お話をいただき、関係部署とも協議し、あらかじめ計画的に返していただく金額は見込まれるので、令和5年度予算には計上する方向で調整している。

本池 今後も毎月50万円づつ40年かけて回収していくつもりなのか。

福祉部長 先ほどから決算書の確認をさせていただいているということを説明したが、今回の事案については長い年月の回収作業になるので、相手方と公正証書を作成している。そのなかで、もし決算書を確認して経営状況が改善をして、今以上に返還が可能になった場合はその金額で返していただけるという趣旨の規定を設けているので、その場合は今よりも多い金額で返還してもらうようにさせていただくつもりだ。

本池 40年もたてば当然経営者も変わると思うが、返納中に業者が廃業・倒産したり、事業譲渡などをした場合はどうなるのか。

福祉部長 当然事業を廃止された場合については、原則、可能な限り債券回収ができるような交渉をする。事業譲渡された場合にはあたらしい事業所のほうに債券も引き継がれているか確認をして、最終的に判断をするときは、市の顧問弁護士とも相談して適切な債権回収の対処ができるようにしたいと考えている。

本池 令和3年度に発覚した介護報酬の過払い金は何件あるか。また、このうち、現段階で未収金となっており、今後返還を受けなければならない案件があれば教えてほしい。

福祉部長 明確になっているのは、ご指摘の事案とあわせて報告した案件になる。

本池 協議中のものも含めて教えていただきたい。

福祉部長 資料をもちあわせていない。(後に2件と回答あり)

本池 今後、同じように変換をうけなければならないケースが発覚したときに、同じように何十年にもわたる分割払いを認めていくのかどうかの確認をしたい。

福祉部長 単純に“はい、そうですか”と決めるものではないので、相手方の財政状況なども確認をしながら可能な限り短期間で返していただきという処理になる。顧問弁護士とも相談しながら適切な対応がはかれるようにしていきたい。

本池 基本的には認めないが、経営状況にもよるのだろう。ずっと確認してきたが、なにもはっきり答えられる部分がない。全部協議のなかでの、“感触”のような話になっている。他の事業者からみて、これはどうなのか、と思われるものになっている。この規定にもとづいてこうしたというきちんと説明できるものがいるのではないか。40年もの案件などは今まで一度もないということも前回答えていただいているが、これを認めてしまったことが、今後の介護事業に大きな影響を与えかねないと感じている。すでに事業者の不信は募っている。介護保険制度は被保険者の保険料や税金でなりたっている制度だ。(事業者にとって)財源が十分ではないことは承知しているが、だからといってルール違反をしても「返済は数十年かけて少しずつでいい」というような運用がされれば、介護保険制度そのものが崩れてしまうが、認識を聞かせてほしい。

福祉部長 そうしたご意見は理解できるが、今回の案件についてはもともと地域的に経営が難しいということもあり、新型コロナ感染症の影響を大きく受けたこともある。その辺を考えたときには、決して結果としていいことにはなっていないが、今の金額で、確実に返していただくということで対応したいと思っている。そういった面では、現場の事業所の方に、今お話されたような意見があったかと思うが、ただ、あとでそんな判断だったのかといわれるような判断はしていないので、ご理解はいただきたい。

本池 部長はそういうが、明確なものがないではないか。行政は、根拠規定があってやっているという信頼がある。それがないようになってしまって、なんとなく“これは悪質ではない”“悪質だ”という感触だけで判断していいのか。この質問を取り上げるにあたり、事業者から意見も、介護現場の実態もお聞きした。これまで「人員配置基準を満たしていなかったのは勘違いだ」とか、「地域の介護を守るためにつぶすわけにはいかない」という説明を半年間うけてきた。しかし多くの事業者がルールを守り、まじめに事業をしている。そうしなければ指定も取り消されてしまい、介護報酬も入らなくなる。結果として地域の介護を守ることができなくなるからだ。そうした多くの事業者に対し、胸を張って説明できないことはするべきではない。このことについて今後考えて対応していただきたい。

経済委員会の視察に行ってきました

8月3日~4日、経済委員会の視察で京丹後市と豊橋市に行ってきましたので、視察内容をご報告します。

京丹後市の環境保全型農業のとりくみ

京丹後市での視察のテーマは「生物多様性を育む農業推進計画」。

京丹後市には隣接する兵庫県豊岡市から国の天然記念物であるコウノトリが飛来することから、環境保全型農業のとりくみをはじめられ、平成22年に「生物多様性を育む農業推進計画」を策定しています。「生物多様性を育む農業」とは、「農業の持つ物質循環機能を活かし、環境への負荷をできるかぎり低減して、多様な生物を育み、消費者の求めるより安全・安心な農産物を生産する農業」と定義しており、有機農業等そうした農業をとりくむ農家の育成に力を入れています。

京丹後市農業振興課のお話では、有機農業をとりくむのはハードルが高いため、特別栽培米(化学肥料・農薬の使用を府の慣行レベルの2分の1に抑える)の生産を推進していますが、化学肥料・農薬を減らせば収量が減ったり病気が増えたりするため、進みにくい現状があるといいます。

これを進めていくために欠かせないのが慣行農業からの転換と、消費者の理解の醸成です。京丹後市では特別栽培米への転換を進めるために市単独で予算を組み、特別栽培米の団地化を進めれば一反当り約1万円の補助金を出すようにしたそうです。これは、化学肥料・農薬を減らすことで収量が減るのではないかという不安を持つ農家に対してまずは特別栽培を「体験」してもらうことを重視したものです。実際に収量が減ったのかについては、1割ほど減った農家もあったそうですが、多くの農家が苦もなく現在も特別栽培米の生産ができているそうです。

京丹後市の地産地消のとりくみ

もう一つ、興味深かったのが同市の地産地消のとりくみです。具体的には①地域商社、②学校給食の二つがあります。

地域商社については、3年間の予算を組み(令和2年2400万円、3年2600万円、4年2600万円)、道の駅を運営している企業に事業を委託しています。京丹後市は小さな農家が多く小ロットの野菜が多いため、消費地への輸送コストが高くなっている現状があり、これを解決するためにはじめられたそうです。5台の輸送車で農家に出向いて野菜を集荷し消費地である京阪神に運ぶと同時に、途中には学校給食、病院、宿泊施設などに野菜等を配送する役割も果たしています。

今年度で事業期間は終了しますが、この3年のあいだに補助金がなくても自走できる仕組みを市が深くかかわってつくりあげており、「思い描いていた絵に向かいつつある」と手ごたえを感じておられました。

学校給食については、「子どもたちに地域のものを食べさせたい」という農家の思いから出発し、京丹後市内産の特別栽培米をはじめ、野菜、魚なども提供しています。

平成22年度から認定農業者で組織する京丹後市農業経営者会議のなかに「給食小委員会」が設置され、地元産の食材を学校給食に利用するとりくみを開始。この委員会は農家が主体となっており、学校とのつなぎ役として栄養教諭も入っておられるそうです。献立は市内統一献立で、毎月特別栽培米を使った食育週間、月1回の「たんご食の日」、年1回の「まるごと京丹後食育の日」をおこない、子どもたちに安心・安全な地元食材を食べてもらい、食の大切さや生物多様性を育む農業の重要性を伝えているそうです。また、生産者が学校に出向いて生物多様性を育む農業の理解を深めたり、地産地消を推進する「出前講座」もおこなっているそうです。

そのほか後継者育成のとりくみとしては、廃園となった園舎を活用した「丹後農業実践型学舎」のとりくみや、農地付き研修制度についてお聞きしてきました。

以上簡単ですが、京丹後市のとりくみを紹介させていただきました。

環境を守りながら地産地消をどのように進めていくのか。具体的なプランをもって進めておられる市の姿勢に感銘を受けました。近年、下関市でも学校給食の問題等をめぐって、地場産野菜の活用や、より安心・安全な食材の生産の必要性が各所で語られるようになっています。抽象的ではなく京丹後市のように、課題を明らかにし、それを解決しながらよりよい農業現場、学校給食、地産地消につなげていくことが下関にも必要だと感じる視察でした。

京丹後市で学んだことを下関市でどのように生かすのかについては、今後、市民のみなさまとも意見を交わしながら考えていきたいと思います。もっと深く知りたいことやご意見があればお寄せください。

議員の一般質問時間の削減について。

下関市議会議会運営委員会は、5月6日の議会運営委員会(以下、議運)で議員の一般質問の時間を現行の60分から50分に削減することを決定しました。

「わずか10分」。そう思われる方もいるかもしれません。まず、一般質問とは、議員が日頃から市民のなかを歩き、自身が見つけた課題や、広く共有すべきテーマについて執行部に質問できる唯一の場です。議員一人一人に平等に与えられた時間のなかで、市民の代表という立場からしっかりと議論を交わし、よりよい下関市にしていくための大切な場です。その時間を議会自らの手で削ること自体、議員の口を封じることに等しいものです。

まず、一般質問時間削減の経緯についてですが、下関市議会では昨年6月に議員定数を見直すための下関市議員定数等調査特別委員会が立ち上げられ、①議員の定数、②報酬、政務活動費、③議会改革について協議されてきました。この委員会自体が会派からの代表で構成されており無所属議員は参加できないものです。特別委員会は1年間かけて協議をおこない、議員定数については「削減すべき」でありその削減数は2議席とする結果にいたっています。そして、この特別委員会のなかの「議会改革」の一つとして出てきたのが一般質問の時間削減です。削減理由は「議会事務局や執行部の負担軽減」で、一般質問が60分あることで終了時間が就業時間をこえることもあるため、職員の負担軽減の観点から削減をおこなうとのことです。そもそも就業時間をこえること事態がそれほどあったかとも思いますが、職員の負担軽減というのであれば、一日あたりの質問者の数を減らすなど他の方法もあったのではないでしょうか。

先にも述べたとおり、議会は多様な市民の意見を言論によって反映させる場です。それを削ることは市民の不利益になると考えます。私は定例会では毎回一般質問をおこないますが、一度に2つの問題をとりあげようとした場合、それぞれの問題を掘り下げて質問に挑めば30分では正直短いです。目の前に起きている問題は1つでも、その背景に複合的な原因があり、それらが解決されなければ目の前の問題も解決しない。執行部とやりとりをしながら深めていけば60分などあっという間です。現場に足を運ばない議員や、数字だけ確認したり、執行部のいうことを全て「わかりました」と聞き入れている議員にはわからないと思います。質問時間を50分にすることで一日あたり一時間の短縮になるといわれてますが、それだけ市民の抱える問題や深い思いについてぶつける場が失われてしまうということです。一般質問の時間削減は議員にとっては自殺行為であり、市民の代表としてとても賛同できるものではありません。

しかしながら、一般質問の時間を削減することに対しては無所属議員はなにも意見をいえないのが実態です。特別委員会に加われないこともあるのですが、そもそも議会の運営の根幹である議運にも無所属議員は参加できないのが下関市議会です。そのことについて、昨年山下隆夫議員と濵岡歳生議員と本池の3名の連名で亀田議長に対して要望書を提出しました。大会派に属するか否かによって生じる格差についての是正を求めるものです。議長はその要望書を特別委員会に回し、特別委員会は会派要件については議員定数が決まってからということになりましたが、無所属議員が議運に出席できないことは是正すべきだとの意見も出ており、検討課題となっているところです。一般質問の時間及び議員定数を決定する前に、無所属議員が議運へ参加できる体制を考えることが先ではないでしょうか。

しかし、現体制のまま次々と決まっていくので、少なくとも一人の議員として意見をきちんといっておきたいと思い、4月26日に議会事務局に連絡し、一般質問時間の削減に対しての意見があることをどのように伝えればよいのかを相談してみました。そのさい、意見書や要望書を出すことで議運等で取り扱われる可能性もあることから、それがよいのではないかと教えていただき、すぐに議長あてに意見書を作成しました。するとその直後に事務局から、28日に議長・副議長・議会運営委員会委員長に相談してみるのでその結果が出るまで提出は待ってくれと連絡がありました。そして28日の夕方に議長との協議結果として、5月6日の議会運営員会で委員外議員として意見をいわないかという連絡がありました。そのため書面の提出は一旦置いて、意見を述べる準備をしていましたが、6日の議運では委員外議員としての発言は認めないことを委員会として決しました。無所属議員の発言を認めるべきだと発言したのは一人だけでした。濵﨑議員は「意見を聞くことに関してはやぶさかではないが、議運、常任委員会、本会議の仕組みを考えると自分で会派をつくって、会派から議運へ送り出す努力をするべき」とのべ、他の議員もそれに賛同するかたちで委員外議員としての出席は許可されませんでした。

少なくとも4月26日の時点で議長宛ての意見書は準備できており、議長に提出しておけば無所属議員の意見としてとり扱われていた可能性もあるものです。それには待ったをかけておいて委員外議員としての発言も認めないということは、初めからそのようにことを運ぶつもりだったかとも受けとれるもので、非常に憤りを感じます。発言することが許されなかったので用意していた意見書を提出してきましたが、結果として協議の過程で無所属議員の意見はなにも扱われることはなく、一般質問の時間削減が決まりました。質問時間削減がどのようなことを意味するのかという議会の本質としての議論もないうえに、無所属の意見は聞く必要がない。これが今の下関市議会の姿です。

また、会派に属するか否かで生じる格差の是正を求めているのに、会派をつくってから議運で発言するべきだとの指摘も的外れなように感じます。選挙で選ばれた議員は平等なはずです。みなが平等な立場でに意見を言いあい、市民のために切磋琢磨する。そのような議会の仕組みに変えていけるよう、一人であってもしっかりと意見を言っていきたいと思います。