下関市議会6月定例会が閉会しました。私は今回、全国的問題となっている中学校部活動の地域移行について質問しました。今とくに中学校教師の長時間労働の原因のように扱われている部活動ですが、教師と生徒の信頼関係や、生徒の心身の成長にとって非常に大切なものです。少子化が進む学校現場では、部活動の地域(民間)移行が行政主導で進められていますが、現場や父母からは「このままでいいのか?」「子どもの成長にとってどうあるべきなのか」という意見や疑問の声が上がっています。執行部との質疑の文字起こしをご覧いただき、忌憚のないご意見をお願いいたします。
1.部活動の地域移行について
本池 一言で「部活の地域移行」といってもここにいたるまでこの数年間、勝利至上主義の指導、体罰問題、教員の超過勤務と働き方改革、少子化などが問題となり、たびたびとりあげられてきた。それらの結論として部活の地域移行ということが出てきているが、今の流れを見ていると、少なくとも子どもたちのためというよりも産業化、市場化の側面が大きいように感じている。国の方向性に振りまわされるのではなく、「下関の子どもたちをどうするのか」を据えた議論をしなければ本当の方向性は見えてこないのではないかと思っているし、その視点から質問する。
まず、下関市のこれまでのとりくみを簡単にのべてほしい。
田中観光スポーツ文化部長 令和4年1月から地域移行に関する意見交換を複数回実施。中学校校長会と課題共有・情報交換を重ね、地域移行に向けた実証事業を令和5年度から実施している。
磯部教育長 令和5年3月にはとりくみ状況や方針について学校及び保護者にリーフレットを配布し周知をおこなうとともに、令和5年度には下関市部活動地域移行推進委員会を3回開催し、市の方針やとりくみについて有識者、関係団体等からの意見聴取をおこなうなど、移行に向けた準備を進めてきた。
本池 このうち実証事業のDスポーツについて聞く。どのような経緯でDスポーツをすることになったのか。関係者の意見をどのように反映されているのか。
田中部長 国の運動部活動の地域移行に関する検討会議においてスポーツ団体等の整備充実などの地域移行における検討課題が令和4年6月に示された。関係団体と議論を重ねてきたが、今後の方向性を見出すことができなかったので、本市から実証事業の検証を提案した。
本池 それで令和5年度はとりくまれたが、活動の効果と課題は?
田中部長 令和5年度の実証事業は多様なスポーツをコンセプトとして、4つの団体へ業務を委託してきた。多くの参加者を得ることができなかったが、アンケートや生徒及び保護者から貴重なデータやご意見をいただくことができた。
本池 「多くの参加者を得ることができなかった」といわれたが、その参加者数から見えてくることとして、ニーズにあっていたのか。
田中部長 あっていないこともあったということだと思う。昨年度の反省を踏まえてやるので、参加人数も増えていくと思う。
本池 学校関係者やスポーツクラブの関係者のみなさんが、「下関市はなぜDスポーツなんかしたのか」といわれる。決める過程で関係者に了解を得たというが、決定事項を伝えただけで相談するものではなかったとの指摘もあり、その結果として参加者数なり厳しい評価に繋がっているのだと思う。それでも日頃スポーツをしておらず身体を動かしたいという子どもたちにとってのニーズはあったのだといわれるとそうなのかもしれないが、今は細かい部分ではなく大局の話をしている。学校関係者、生徒たち、保護者が今なにを望んでいるのかの把握が必要ではないかと思うが、そのとりくみはどうなっているか。
磯部教育長 今後のとりくみの参考とするため、市立小学校5・6年、中学生、及び保護者と教職員を対象にアンケート調査を実施している。保護者には部活動の地域移行への理解や地域クラブへの期待等について、教職員には地域移行後の地域クラブへの参加希望等について尋ねている。7月を目途に集計・分析し、当事者の声に寄り添ったとりくみを進めていきたい。
本池 保護者に対しては「地域移行への理解や地域クラブへの期待」について聞いたといわれるので聞くが、保護者アンケートの問9を示してほしい。
磯部教育長 「中学校にお子様が希望する部活動がない状況で、その競技や種目・分野の地域クラブ活動ができることになった場合、地域クラブ活動に参加させることを検討しますか?」という問だ。「検討する」「検討しない」の回答を求めている。
本池 これでは「検討する」が多くなるのは容易に想像がつくが、この設問は誰が考えたのか。
磯部教育長 教育委員会と観光スポーツ文化部での協議を踏まえて作成している。
本池 内容が実証事業に関するアンケートにしか見えず、教育委員会がやるのであればもっとみなさんがどんなことを思っているのかを拾うアンケートにする必要がある。これでは実証事業にとって都合のいい数字をとろうとしているといわれても仕方ない。教職員用のアンケートに関しても、地域クラブに参加するかしないかのようなもので、もっと先生方の思いを集約するもの、子どもたちへの影響・効果について深めるものでなければ意味がないと指摘されている。設問に関し検証と改善を求める。この事業の実施に関してスポーツ振興課は「部活がいつまで継続できるかわからないなかでのとりあえず受け皿を」という思いでおこなわれたと確認している。そうした思いや、実証団体として必死に受け皿づくりをしてくださっている方々にはありがたく思っている。ただ、「ゆる部活」のようなかたちでは子どもたちはついていけないし、保護者や学校関係者からも酷評される事態になっている。方針決定には現場の意見の反映が必須であることを申し上げておく。
中学校の部活の現状
本池 そうした不安定な事業がどのような影響を与えてきたのか。具体例として紹介させていただくのは男子バスケットボールだ【図1】。黒い囲みが現在男子バスケットボール部がある学校で、学校が終わり、部活の子は部活に、クラブチームに所属している子どもたちはクラブチームの練習に行く。そして部活だが、平日の練習時間は2時間になっているし、平日、土日に1日ずつ休みをいれなければならなくなっている。部活が終わり帰る時間は夏場で6時、冬場は暗くなるので5時ごろだ。学校が終わるのが4時ごろなので、冬場は練習時間が1時間もない。部活が終われば基本的には帰宅だが、さらに練習したいという子どもたちがクラブチームで練習をしている。
クラブチームのなかには、もともとあるクラブチームのほか、地域移行の流れのなかで新たにできたものがある。それらのなかでも市内全域から子どもたちを受け入れるところもあり、基本的に特定の地域の子どもだけを受け入れ、部活動をそのまま引き継ぐかたちで練習をしているところもある。会場は学校のまま運営と指導者が変わるというスタイルだ。
共通しているのは、もっと練習したい、強くなりたいという子どもたちの要求があり、鍛えてあげたい、伸ばしてあげたいという指導者の思いがあった。逆にいうと、今の学校の部活動がそうした要求に非常に応えにくくなっているし、市の方向性がこうしたニーズと乖離しているということがうかがえる。そしてクラブチームに行くには、会費、保護者の送迎が必要で、プロ傘下のチームともなればトライアウトもあって実力がなければ入れない。こうしたなかで練習機会に格差が生じている。状況を見かねた保護者が休みの日に体育館を借りて部員を引き連れて練習をさせているといったお話もある。またクラブチームに入部予定者が流れ、部活の人数が少なくなり、継続が困難になっているところもあるそうだ。部活の地域移行がすべてではないが、ここ数年で生じてきた混乱状況について教育委員会としてはどのように考えているか。
磯部教育長 自分にあった活動を求め、地域のクラブ等を選択している生徒も多く存在してきている。生徒数が減少する学校部活動が維持困難になるなかでは、自分の目的にあった活動の選択ができることは望ましいことだと考えている。
本池 練習したくてもできない、参加したくてもできないという格差が生まれてきている状況についてどう思われるか。 続きを読む