市議会先例85-1「一般質問等の質問における議会に対する発言通告は、これを受理しない」について。

 先日、長周新聞紙面にも掲載された「公用タクシー券の不正使用を許さない市民の会」の提言を受け、亀田議長及び市議会事務局長に再度見解を伺ってきました。もうじき任期も終わろうかというなかで、この問題について追及してきた一人の市議会議員として、事の是非を曖昧にしたまま1期目の幕を下ろすわけにはいかない、過程で生じた不当な議会ルールをそのままにして終われないという思いで動いています。下関市内を回っていると、市民のみなさんから、「議会の(公用)タクシーチケット問題はどうなったのか?」「誰が考えてもおかしい。うやむやにしないでほしい」と声をかけられることが増えました。したがって、この間公用タクシーチケット問題から始まった一連の出来事について、支持者のみならず、広く市民の皆様にご報告することにしました。

歴代の市議会正副議長が公用車の代用として使っている公用タクシーチケットについて、公務だけでなく飲み会の帰りなどにも使用していた実態が明るみになり、そのことについて一般質問で質問をしようとしたのが令和2(2020)年6月のことでした。そのさい、議会(議会運営委員会。無所属は委員に入れず)で突如「ルール」がつくられました。「一般質問等の質問における議会に対する発言通告は、これを受理しない」(先例85-1)という一文です。

この先例85-1により、タクシーチケットの運用実態や運用規程について、私は「議会」に対して質問することができなくなりました。それだけでなく、この一文をつくったことで、議員が議会費(予算執行)に関して本会議の場で質問をおこなうことができなくなるというおかしな事態になってしまったのでした。

まぎれもなくタクシーチケットに関する一般質問を封じるために、質問通告(議員は事前にどのようなテーマで一般質問するのか通告し、その後執行部の関係部局から質問点について聞き取りがおこなわれる)を受けてにわかにつくられた先例なのですが、大きな問題をはらんでいます。下関市議会で決められた先例85-1を決めるときに「参考」として用いられた衆議院先例427には、「議長に対する質問書はこれを受理しない」となっています。議員の質問先は内閣(執行機関)であるから、議長に対しては質問できないというものです。当然の内容です。しかし下関市議会の先例は、議員が執行機関に質問する権利をも剥奪するもので、これは地方自治法上大きな問題です。

このことを指摘し、早急に廃止を求める意見書を亀田議長に提出したのが今年の8月8日でした。そのさい8月19日までに返事をして頂けるよう求めた(遅れる場合はいつになるかを教えて頂ければいいともお伝えしました)のですが、19日になっても返事がありませんでした。仕方がないので議長室まで出向き、「来週末には返事をする」との回答を頂きました。しかし「来週末」にあたる8月26日になっても音沙汰がなく、再度議長室まで行き、その日の夕方に面会しました。

亀田議長に意見書の件はどうなったのかを聞くと、驚くことに「答えられない」というのでした。先に述べている先例があるからという理由です。先例の内容については指摘させて頂いている通りですが、先例にある「一般質問等」の解釈を拡大し、議会外での議員個人の申し入れに対しても適用するというものでした。その意味を理解するのにしばらく時間がかかりました。「一般質問等」とは一般質問、個人質問、代表質問のことを指しており(当時そのように説明を受けています)、拡大解釈が過ぎるのではないかと指摘しても「同じようなものだ」といって答えを頂けませんでした。しかしその後「みんなと相談する」といわれましたので、再検討をお願いしその日は帰りました。

亀田議長と岡本事務局長の対応

8月26日の議長との対談を経て、10月25日火曜日午前10時より議長室で亀田議長と対面し、先例85-1の廃止を求めた意見書がその後どうなったのかを確認に行きました。議長のお答えは「特段のことはしていない」ということです。議会運営員会にはかることもしていないといわれていましたが、その後、正副議長、議運正副委員長と9月定例会の前に打ち合わせをした結果、現状維持ということになったということが説明されました。そのさい、「先例は今季の議員が決めた先例であり、メンバーも変わっていないし、あえて今変える必要はないのではないか」という意見があったということです。違法性について指摘しているが、そのことは議論になったかどうかを問うと「なっていない」とのことでした。

その後、岡本善隆議会事務局長に先例について確認に行きました。岡本事務局長に関していえば、令和2年当時、提案者として先例追加について議会運営委員会で説明をされており、私も当時、先例についての説明を岡本事務局長から受けています。この間の私の意見書についても亀田議長が事務局に渡しているといわれていましたので、事務局長にきちんと確認をしておきたいと思い、亀田議長と対面ののちに事務局長に質問の申し入れをしました。

まず、事務局長は私のボイスレコーダーをとりあげ、「記者として来るなら対応しません」といわれますので、議員として来ているというと、「議員として来ているなら切ってください」といい、ボイスレコーダーをご自身の手元に置き、「触らんか見させてください」といわれました。私が、この件については裁判で争うつもりであることと、そのために一言一句正確に記録しておきたい旨を伝えたのですが、頑なに拒否されるため、メモで対応することにしました。

思い返しますと、8月26日に亀田議長と対談したさい、事務局長も同席されたのですが、ボイスレコーダーにご自身の声が入らないようにするためか、一言も言葉を発せられず、うなずくだけでした。ご自身の声が入るのがよほど嫌なのでしょうか。言質をとられまいとする対応のように感じました。みずからの発言に関してやましいことがないのであれば、正確に記録することは身を守ることにもなるのですが、どうしてそのように身構えられるのか不思議でなりません。

事務局長に対しておこなった質問と回答ですが、以下のとおりです。 続きを読む

12月定例会での一般質問『1、公用車と公用タクシーの使用基準について』のご報告です。【文字おこし】

遅くなりましたが、12月11日の一般質問の文字起こし『1、公用車及び公用タクシーの使用基準について』(要約)を掲載します。長いですが読んでいただけますと幸いです。なお、『2、下関市の学校給食』につきましては、次のページで紹介いたします。傍聴していただいたみなさま、ありがとうございました。

1、『下関市の市長・副市長・教育長・正副議長の公用車と公用タクシーの使用基準について』 

本池 下関市では、市長・副市長・教育長・市議会正副議長に公用車が用意されているが、公用車やそれにかわる公用タクシー券の利用について、とくに正副議長分について疑問や不信の声が多くの市民の方々から出て住民監査請求があったことはご存じのとおりだ。ただ、疑問や不信を持たれる利用についてだが、そこには使用基準や取扱要領があり、それにもとづいて使用され公金が支出されている。市長・副市長分については今年四月に、正副議長分については七月一日にそれぞれ公用車とタクシーの取扱要領を定めたということなので、その内容等について質問する。また教育長分については、平成29年12月1日から公用車利用基準が定められているので、これについても質問する。

公用車、タクシーの取扱要領だが、公用車やタクシーの使用は即公金の支出につながるものであり、これは市長や議長等が公金を使うことができる範囲を定める極めて重要なものである。したがって、取扱要領は公金の支払いが無制限に広がらないよう、限定的で歯止めが効く規定でなければならない。市民から「おかしい」「公私混同だ」という不信感や疑問を少しでも持たれるような取扱要領であってはならない。しかし、この取扱要領を読んでみると、とくに正副議長分についてはいくらでも拡大解釈ができるような極めてあいまいな定めになっているように思う。これでは正副議長分の公用タクシー代に多くの市民が疑念を抱くのは当然だ。市長も議長も市民のお金を預かっている立場であって、市民からお金を預かっている立場の者が、自らお金を使うことは、その使い方について市民にいささかの疑念も持たれてはならない。市民にご理解いただけるよう質問に明確に答えていただきたい。

まず市長、副市長の公用車、タクシーチケットの取扱要領についてだが、公務会合のない飲み事はもちろんのこと、「公務会合後の二次会に出席した場合は使用不可」ということで間違いないか確認する。

竹内総合政策部長 間違いない。

本池 今後、市民から疑念を持たれることのないよう厳正な運用をお願いする。もう一点質問だが、この取扱要領のなかで、「ただし、公務の前後において、その遂行上もっとも効率的な場合は使用可」というのはどのような意味か。

竹内総合政策部長 公務である自治会の互例会と消防出初式の間に公務外用務に移動するような場合などを想定している。公用車で一連の移動をおこなった方がもっとも効率的であり、公務が遂行できるという判断の下で入れている。また、公務外の行事から公務への移動、公務終了後の公務外への移動についても、その時間を活用して常時市長との連絡・伝言等をおこなうこともあるので公用車を使用することもある。いずれにしても市長として公務を円滑にまっとうするため、使用行為の前後の状況、あるいは行く場所等を勘案したうえで総合的に公務遂行上必要と認められるかどうか、取扱基準に照らして判断したいと考えている。

本池 教育長分についても、公務場所への行き帰りで、公務後の飲み会や公務会合後の二次会後の帰りはだめということで理解してよいか?

徳王丸教育部長 最終の移動時間が19時をこえると見込まれる場合はタクシーを利用することとしており、次の移動まで公用車の待機時間が3時間をこえる場合もタクシーを使う。お尋ねの件は基本的にタクシーを使うことになっている。

本池 公務会合後の二次会後はだめということでいいか。

徳王丸教育部長 飲食を伴う会合があった場合に、それが公務であればタクシーでも可である。

本池 次に、議長、副議長の公用車、タクシー取扱要領【下写真参照】についてだ。先に述べたように、この取扱要領は公用車やタクシーの使用、すなわち公金の支出範囲が拡大しないよう、限定的に、また、使用に疑義が生じないよう明確に定めなければならないものだ。しかし、この取扱要領は規定が極めてあいまいで、従来通りいくらでも拡大解釈できるような規定になっているように思う。これでは多くの市民が疑念を抱くのは当然だ。市民の方から寄せられた疑問点を聞くので、その疑問に答え不信を払拭するよう、市民にわかりやすく明確に答えてほしい。

まず、この取扱要領を定めるにあたって、類似都市または県内他市の状況は調査されたのか。

竹内総合政策部長 市長部局としては承知していない。

本池 定めるにあたって、市長車の取扱要領がどのようなものか確認されているか。

竹内総合政策部長 議会事務局が要領を作成するにあたり、参考までに秘書課から市長・副市長公用車タクシーチケット交際費取扱要領を渡している。

 

本池 次に、「使用者について」の(1)―②にある「その他庶務課長が特に認めた者」についてだが、どのようなケースを考えているのか。

 

竹内総合政策部長 「普通地方公共団体の議会の議長は議場の秩序を維持し議事を整理し議会の事務を統理し議会を代表する」、このうち「議会の事務を統理し」という部分に当たるので、市長部局としては予算執行上、つまり正副議長が公務上公用車を使ったりタクシーを使ったりする予算措置はしているが、判断については議会事務局以外にできないと考えている。

本池 これはすでに5カ月間運用されているもので、これにもとづいて公金の支出がされている。公金の支出について執行部として答えられないのはおかしいのではないか。もう一度丁寧に説明をお願いする。

竹内総合政策部長 一定の範囲内での公金の支出については建前上は長の執行となっているが、議会事務局長に委任している。委任している範囲のなかでこの要領をきちんと判断したうえで、適正に判断しているということで、分離している出納室、会計管理者への支出命令という形になる。市長部局としては委任している範囲内できちんと対応していただいているものと考えており、その運用について了知するところではない。

本池 すでにタクシー代として公金が支払われているわけだが、市長部局として答えられないというのであれば、だれが答えるのが適正なのか。
 議会運営の内容などであれば答えられないことは理解できる。だがこれは公金の支出であって、市民に説明しなければならない事項だ。総合政策部長が答弁されているが、聞きとりのさいにも、「一般質問は議員が執行部に対しておこなうものであるから、だれが答えるかについては関与しない」と伝えている。市民に対してはこのたび給付や支援などがあったが、これはダメ、これはいいなど基準があり、市民は納得がいかなくても一定の基準でやられているから仕方がないと受け止めている。説明責任があるので、払われる、払われないの区別があると思う。タクシー代の議会の使用について、税金を支出しておきながら議場で説明できないのはおかしいのではないかと申し上げている。

竹内総合政策部長 教育長の部分は執行にあたる教育部長が答弁した通りだ。基本的に市民の方がお聞きするのであれば、議会事務局長だろうと考えている。

本池 一応、気になるところを聞いていくので答弁をお願いする。使用方法について、(1)―①の例にある、「その他議会活動上で必要とされる場合」とあるが、極めてあいまいで、歯止めが効かないような規定になっていると思うのでお聞きする。まず、これはどのようなケースが考えられるのか、あるいはどのようなケースを想定しているのか。

竹内総合政策部長 ちょっとお答えのしようがない。

本池 (1)―②「正副議長が正副議長と議員の立場を明確に区別できない場合において、市政の発展、公益の増進等に資するために使用する場合。ただし、疑義のあるものについては、事務局庶務課長が、判例等を参考に総合的に判断するものとする」となっているが、市政の発展、公益の増進等に資するか否かは誰が判断するのか。

竹内総合政策部長 要領に書いてある通り事務局庶務課長と考える。

本池 庶務課長が「資するか否か」を決める判断基準は何か?

竹内総合政策部長 ここにあるように判例あるいは市長部局、教育長等、あるいは市全体の部分を含めて、またその次に書いてある社会通念上相当と認められるという、そういった視点が必要だと考えている。

本池 但し書きの「判例等」とあるが、判例等とは具体的にどういうものが想定されるか?

竹内総合政策部長 行政実例などが想定される。

本池 総合的にというのは具体的に何と何とを総合的に判断するのか?

竹内総合政策部長 社会通念とか、公益の増進に資するレベル、距離など先ほど市長のときにお答えしたのと同じようなことかと思う。

本池 (1)―②例「各種団体との協議・意見交換を行う場合」とあるが、各種団体の定義はなにか?

竹内総合政策部長 議長・副議長がどのような団体と議会運営上お会いしているか存じ上げないのでお答えのしようがない。

本池 各種団体との意見交換と飲み会とはどのように違うのか。

竹内総合政策部長 広い意味では飲食を伴うような意見交換の場もあると考えている。

本池 公金を使う各種団体等との意見交換であれば、正式文書をもらうべきだと思うが、その点についていかがか。

竹内総合政策部長 あった方がいいと思うが必ず必要とも考えていない。

本池 これらのことを厳密に決めておかないと、形ばかりで骨抜きの基準になってしまう。市民の多くが何らかの団体・組織に所属しておられ、厳密に決めておかないと、正副議長はすべての「飲みごと」に公用車や公用タクシーを使うことができるということになってしまう。

本池 さらにお聞きするが、「私用の飲み事か」「私用でないか」を区別する判断基準はなにか。公金を使っていいか否かを決める線引き、いわゆる判断基準は明確に定めるべきだと思う

竹内総合政策部長 お答えのしようがない。

本池 具体例で質問したい。まず、17時15分ごろに市役所での公務が終わり、その後、公的な会合があって、その後、二次会に行って帰宅する場合、公用タクシー券は使えるか?

竹内総合政策部長 市長・副市長の場合は使えない。

本池 17時15分まで公務があって、その後公的な会合はないのに、飲みに行って、夜の10時、11時に帰宅する(実例)。その場合も公用タクシー券を使って帰宅してもいいのか?

竹内総合政策部長 あまりに内容に具体性がないのでお答えのしようがない。

本池 今聞いてきた使用基準は、取扱要領を定める前の使用基準と同じか、それとも異なるのか。

竹内総合政策部長 議会事務局がどのような形でつくったのか、その前の基準も了知していないので、変更点等お答えする立場にはない。

本池 タクシーチケットは、正副議長の申し出によって渡しているのか。もしくはあらかじめ渡しているのか。そのときの飲み事の内容を聞いてから渡すのか。

竹内総合政策部長 総合政策部長としてはお答えのしようがないというお答えになると思う。

前田市長 (質問を遮る)あまりにも話が遠すぎませんか。やっぱりたくさんの議員と執行部のみんないるなかでですね…。

本池 今から市長にもお尋ねするので。公金支出について、みなさん気にしておられるのは、これは7月につくられ、曖昧な基準で公金支出がされてきているものだからだ。今まったくお答えいただいていないが、見てわかるように取扱要領を定めても、いくらでも拡大解釈可能な曖昧な規定になっている。これでは今まで指摘されてきたように正副議長が飲み会帰りに自由に、公用車あるいは公用タクシーで帰っていいという基準になっているとしか思えない。コロナ禍で市民生活は大変な状況にあり、そのなかで一生懸命税金を納めておられる。それなのに正副議長は飲み会帰りに1回で1万円近くかかるタクシー代を自由に使ってよいというのであれば市民は納得できない。

今(前田市長が)ふさわしくないといわれたが、市議会は市の公金支出が適法・適正であるかをチェックするのが本来の役割だ。(前田市長「それは違うといっているわけじゃない」といったやじを飛ばす)。その市議会の正副議長がこのような取扱要領のもとに、市民のお金を飲み会帰りのタクシー代に使うことは大きな問題だ。

「市政の発展、公益の増進等に資するために使用する」場合はいいというが、市政発展のための意見交換会をおこなおうというのであれば日中におこなうべきだ。議会・議会事務局では、連日のように夜の10時、11時、12時に豊前田や唐戸などの飲食店で話していることがどのように市政の発展に寄与すると考えているのだろうか。仮にそうだとして、それでまじめな市政運営ができるだろうか。本当にそう考えているとすれば、それに公金が使われるのなら下関市民にとっては悲劇であるし、このような基準は他市から笑われるのではないかと心配している。

最後に市長にお聞きする。今明らかになったような曖昧な基準で、公用車や公用車にかわる公用タクシー代が公費で支払われることについて、どう思われるか。「このような曖昧な基準では使ったタクシー代を公金で支払うことはだめですよ」というべきではないか。

前田市長 市民が本当に苦労して働いて納められた血税の尊さと重さについては本池さんのいわれる通りだ。1円たりとも無駄であってはいけない。有効に町に還元されなければいけない。市政発展のために使われるのは当然のことだ。ただ私が途中で声を入れたのは、あなたの気持ちはよくわかるが、それは議会内でやっていただかなくてはいけない。わかっててあえて聞いてますよね。だからそれはおかしいんじゃないかって私はいっている。あなたのその言葉の使い方、頭の回転、わからないはずはない。わかってわざとやってるから、ここでやるべきことではないんじゃないですかといっている。
 動かしたいけど動かせない大きな岩を動かしたい、もがいているのはよくわかる。だけどそれは動かせないことないと思う。でもここでやることじゃない。ルールを逸脱してるから、みんながそこに乗ってくれないのではないか。やり方が違うのではないかと僕は思うが。いってることは間違ってないと思う。その正義感は非常に大切なことだと思う。

本池 質問に答えていただきたい。「このような曖昧な基準で使ったタクシー代を公金で支払うことはできませんよ」というべきだと思うが、そこについてどうかと今お聞きした。

前田市長 議会側が定めた要領に沿ってこちら側が公金を支出するというルールでやっている。議会側のルールについては議会側のみなさん、庶務課長、議会事務局長、議員のみなさんで決めていただくしかないのではないか。それが間違っている、市民に向けて正しいものでないというのであれば直していただかなくてはいけない。そうでないとわれわれも執行する責任が問われるだろうと思っている。

本池 市長もいわれたように支払いの最終責任者は市長だ。私がここでわざとやっているとおっしゃるが、公金の支出について議会は聞くことができるのだから、それをやっているだけの話だ。支払いの最終責任者である市長として、この問題は曖昧にしてはいけない問題だと思うし、間違っていたら正すのは当然のことだ。それに対する答弁が、議会のことは議会で決めるとおっしゃった。公金支出でない部分ならそれでいいが、公金支出については市長をトップにする執行部がおかしいといわなければならないので、そこはぜひ正していただきたい。

本池 市長は前回の一般質問のときに、この問題について「市民のみなさんに胸を張って説明ができる公金支出、タクシーチケットの利用の内容についてきちんとした基準をつくっていこうということで、私もやったし議会にも求めた」と回答された。それでできた取扱要領がこのような内容で、市民に対して胸を張って説明できる公金支出の基準といえるだろうか。これから運用されるのであれば正せばいいが、すでに運用され公金が支出されている。だから問題にしている。胸を張って適正にやっているといえるかどうか。

前田市長 今まで「これくらいでいいかな」というのでやってきた経緯があるから、今回新しくつくられたこと(基準)も許されないのではないかなといってるわけですよね。でも、そもそも考えてほしいが、公用車を使う立場にあるのはものすごく使いづらい。はっきりいって。私なんかは人間らしい生活はできない。ほんと。朝迎えに来てもらって、ありがたいが、仕事をして、行きたいところにも行けず、行きたいところがあっても、それが2つ続くとだめだ。1個でも次の用事に向かって逆方向とか、それが公務とあまりにも乖離されている。この解釈はルールでは決められない。任意というか良識のもとに政治家として、行政側のコンプライアンスのなかでジャッジしていくしかない。
あなたの場合、性悪説に立ってしまっている。このルールのなかでは絶対悪いことをするだろうと。良識の感覚から必ずはみ出してやってしまうだろうと思ってしまうから、そういうふうにいわれるが、きちんとした感覚でもうやってますから。もう悪いことしませんから。議長もそうだ。これからずっとそうだ。ほんとにマジで。聞いて信じてほしいなって思う(この後、シーモールでの公務後、私用があり自費で移動した話を延々と展開)。これじゃだめですか?

本池 市長がそうされているのはわかる。市長の基準を見る限り「公務以外に使わない」となっている。(議長・副議長のタクシー利用について)これまで住民監査請求の件から質問してきたが、市民の声がなければ、この問題も浮上してこなかった。正さなければいけないことはわかっておられ、基準をつくった。しかし、できた基準がこの内容ではだめではないか、という話を申し上げている。市長の基準、教育長の基準と照らし合わせてどうか。さらに議場で説明できないから、それが市民に伝わらない。きちんと答えていただければ市民にも信用されると思う。

最近、新型コロナの影響で飲食のチェーン店の閉店が連続している。市内のホテルが閉じたことも話題になっているが、市内のあちこちで自分の力ではどうしようもないコロナという事態で、職を失ったり、給料が削減されたりしている方たちが無数におられる。そしてそのような人たちも含めて市民のみなさんが、一生懸命税金を納めておられる。滞納することが許されないから。もしも払えなければ支援も受けられなくなるからだ。課税・納税関係の職員さんも本当に心苦しいと思うが、そうして集めた税金がこのような基準のもとで使われていると知ったら市民はどう思うだろうか。市民に対してこの取扱要領を見せることができるだろうか。

私たち議員全員、市民の代表だ。この議会に所属する議員として、このように、解釈によっては使いたい放題でこれまでと何ら変わらない取扱要領をつくってよしとするのであれば、公金の支出責任を負う市長としての責任が問われるのは必至だ。先ほどもいったが、間違っていたことはきちんと正して、それこそ市民に胸を張って説明できるような取扱要領のもとで公金支出をおこなっていただくよう申し上げる。

9月議会の一般質問についてご報告します。【文字起こし】

遅くなりましたが、9月17日の市議会9月定例会でおこなった一般質問の文字起こしを掲載します。長文になりますが、読んでいただけると幸いです。(動画はこちら

なお後日、「下関の食と農について」の質問で一般品種と登録品種の分類や種の権利者について執行部の答弁が誤っていたことがわかりました。ページ末尾に追記として正誤表を載せております。ご確認ください。

1、公用タクシーチケットの使用について

本池 この問題については前回の一般質問でとり上げたが、公金支出、つまり予算執行についての責任を負う市長の見解を聞き忘れていたので、お聞きするものだ。
前回の一般質問では、4月6日の住民監査請求に対し「すべて適当と判断する」という判断を出されたので、そういった答えを出した根拠を質問させていただいた。そのさいに代表監査は「公務があった日はすべてその一日は公務があった日と議会は判断しているということで、帰りが公用車かタクシーの場合、すべて公務による乗車と判断した」といわれた。さらに公務証明がなく、公用車の使用もない日についても「公務等」、つまり公務と用務があったことが認められたといわれた。ただ用務については、「議長の立場と議員の立場が重なる私用ではないもの」としながら、その内容については確認されていないものもあり、「私用」との線引きも明確には答えられなかった。

あの監査結果は、端的にいうと

○公用車を使った日なら、私的な飲み会の帰りでもタクシー代は税金で支払ってよい。
○公用車を使った日なら私的な飲み会帰りに友人を送って大回りして帰っても、そのタクシー代は税金で支払ってよい。

と解釈できるものだ。

これでは市民の皆様は誰も納得しない。まず下関市議会みずからが公金の使い方について襟を正していくことが必要なのは当然だが、もう一つ、このような使い方が公金の支出として認められるのか、という問題がある。そこで支出命令を出す市長として、公用タクシーチケットの使用について、これまで見てきたような使い方がなされている事について正しいと思っているのか、誤っていると思っているのか、どうするべきと考えているのかお聞きする。来年3月には市長選も控えている。市民の皆様も注目しているところではあるので、市長としての見解を述べていただきたい。

竹内総合政策部長 住民監査請求のあった件については議会事務局庶務課を対象とした監査がおこなわれ、請求人が主張する「公務がないにもかかわらずタクシーチケットが使用された」とする内容は、結果としてすべて公務等があったと認定されており、市長としてもそのように認識している。

また同時に監査委員から市長あてに、議会事務局で使用するタクシーチケットに明文の使用基準がないため混乱が生じる恐れがあり、改善を必要とする旨の意見もいただいている。このことから、お尋ねのあった支出については適正であったということではあるが、使用基準の制定等を含め、疑義や誤解が生じないよう進めていくべきと考えており、議会事務局に対し7月1日付で、下関市議会公用車タクシー取扱要領を制定したことを確認している。

本池 総合政策部長は監査の結果について、すべて公務のあった日と判断されたということで、適正だった、ただ使用基準については明確にすべきだというお話をされた。内容については適正だったと捉えられるが、前田市長はどう思われるか、もう一度お願いする。

前田市長 総合政策部長がお答えさせていただいた通り、一般質問すべてにおいて、答弁の内容は担当所管と一緒に協議を重ねてだれがどう答えるかを決めている。市としての一致した見解だ。

本池 再度確認だが、市としてこのような使い方がされていたことについては「問題ない」といわれるということでよろしいか。

前田市長 私、議員の皆さんは政治家という立場だ。そのなかで市長・議長は組織の長を預かる立場で、ある程度の権限を委ねられている。政治活動について、私どもは公務のなかでそういった政治的な個人的な動きも含めて政務という扱いをしていて、議会の方は用務といっている。公務と政務・用務のとり扱いは線引きが非常に難しいところがある。それは本池議員も日頃の活動のなかで、これは明らかに政務、これは明らかに用務とはっきりわかる部分と微妙だなと思う部分と、けど市民のために動かなくちゃいけないという活動は議員として当然あると思う。そういった活動を続けていった結果、今こういった現実問題が目の前に来ている。私としては議長にも副議長にも話しているが、難しいなかで今回こういった問題をとり上げられて、問題としてはこれからどうするかということと、明確な使用基準が明記されていないので、市長も今回、今まできちんとやってきたつもりだが、よりきちんと、より市民のみなさんに胸を張って説明ができる公金支出、タクシーチケット利用の内容について、きちんきちんとした基準をつくっていこうということで、私もやったし議会の方にも求めた。

本池 用務という言葉が出てきたが、問題なのは、議長としてのものなのか、議員としてのものなのか、私用としてのものなのか、用務の線引きがすごく曖昧なところだ。議長としての場合は案内文があるので公務になるのだろうが、議員の立場と私の立場の線引きがなされておらず、それを前提にして「用務」に対して公金支出してよいとなると話が違うのではないか。線引きについては代表監査もはっきりといわれなかったし、一件一件確認していないといわれた。もし基準がないままの使い方がされていたのだったら、問題と思うのか、それでも正しいと思うのか、はっきり答えていただきたい。

前田市長 われわれは公金を使っている以上、私的に利用することは言語道断、絶対にしてはいけない。ただし今回のチケットの使い方については、今まで用務の線引きが曖昧だったからこういう問題になっているわけであって、その線引きをきちんと定めることが、今回の問題の提起を受けて解決する対応、処置だ。それで次からそういうことがないようにする。それで終わりだと思っている。

本池 この公用タクシーチケットだが、議会だけでなく市長、副市長、教育長にも公用車の代用として用意されている。一応、前田市長のタクシーの使用実態の調査については、公務証明と、公務証明のない日については秘書課よりすべてにおいて公務の内容についての説明がなされている。市長の公用タクシー券の使用については明確な基準があると思うので、それをいつ決めたのかということと、内容について述べてほしい。

竹内総合政策部長 市長・副市長の公用タクシーチケットの取り扱いについては令和2年4月1日に、市長・副市長公用タクシーチケット交際費取扱要領として、今まで慣例でおこなってきたものを明文化して制定している。これまでもタクシーチケットを厳正に使用していたが、改めて使用基準を明文化することによって、とり扱いの解釈に疑義が生じないよう、基準としては、公務使用を基本すること、および使用者は本人に限るとしている。

本池 タクシーチケットの問題が報道された後に一定の基準を設けたことがわかった。やはり公金なので、市民の皆様に納得される形で支出し、また議会としても疑いの目を向けられるような不名誉な状態を解決することこそ、みずからの存在価値とも関わって大切であるように思う。公平・公正な公金の使い方をお願いして、次に質問に移る。

 

2、下関の食と農について

本池 このたび、「下関の食と農」というテーマに目を向けてみた。理由の一つは、前例のない野菜の高騰だ。そしてもう一つ、今年の3月議会で一市民から「下関の農業と学校給食に関する陳情」が出されたことだ。陳情内容は、「農薬多用された遺伝子組み換え・ゲノム編集野菜や食品を学校給食に使わないようにする条例」「ゲノム編集食品の表示を義務づける条例」「農家を守るため、公共品種に関しては、登録品種であっても、農家による自家採種・増殖を認める条例」の制定を求めたものだった。

この陳情にかかわる文教厚生委員会、経済委員会ではそれぞれ陳情事項の内容について審議され、さまざまな意見は出たが、考えられる事態を想定したうえで結論を導き出すのではなく、条例制定は難しいとの結論のもとで、執行部からの説明を聞き、対応は委員長・副委員長に一任するということで終わったように思う。それぞれの委員会では「勉強をしていこう」という話にもなっていたが、一市民が危機感を持って陳情を上げているということは、陳情をとり扱う私たち議員がその内容について市民以上に知ったうえで判断しなければならないと、反省も込めて思った次第だ。

そこで種苗法について調べてきたが、農家の方や農協の方にお会いしても詳しい内容をご存じの方はおられなかった。種苗法の存在すらご存じない農家もあり、当事者が知らないあいだに決まっていく法改定とはどういうものなのか、このままでいいのかと違和感を覚えている。市民の代表である市議会議員として、また市民の命を預かる下関市として内容を理解し、食の根本になる種子・苗とはなにか、種苗法が改定されることで農業や食がどう変わるのか、具体的に考えなければならないと思っている。内容が多岐にわたるため、不十分さはあるかもしれないが、下関の農産物を事例に考えていきたい。

なお、質問のなかでは、改定法案のなかの自家増殖を原則許諾制にすることについて、許諾がなければ禁止になるという意味から「自家増殖禁止」と表現する。

本池 では、「種子法」「種苗法」とはなにか。

種子法(主要農作物種子法)とは、国の責任のもとで都道府県に主要農作物(コメ・麦・大豆)の安定的な供給をおこなうことを義務づけた法律だ。2018年4月に廃止されたが、これまでこの法律のもとで都道府県は主要農作物の種子の生産を公的事業としておこなってきた。一方で種苗法とは、種や苗を開発した種苗育成者の知的所有権(著作権)を保護するための法律で、前身の農産種苗法は1947年制定だが、全面改定による現在の種苗法は1998年にできている。

この種苗法の改定案が今年3月3日に国会に提出された。その中身を農水省の法改定の概要に沿ってみてみる(概要はスライド2枚目)。昨今の国内農産物の海外流出を背景に、それを防ぐため、育成者権者を保護し、育成者権を強めることが内容となっている。育成者権者を保護するというところに、自家増殖の見直しも含まれている。内容について間違いないか。

渡壁農林水産振興部長 基本的には、育成者権者の意志に応じて海外流出の防止をはかるとか、あるいは意図しない地域での栽培を禁止する、制限することができるようにする特例の創設、また自家増殖の見直しによる育成者権者の権利の強化、この育成権を活用するために育成権の侵害が疑われたさいの立証を容易にする制度の創設であると理解している。

本池 では問題になっているいわゆる自家増殖禁止についてだが、この対象となる「登録品種」とはいったいなんなのか。スライド3枚目のページをご覧ください。

登録品種とは、先ほど確認した種苗法にもとづいて品種登録された品種を指す。それ以外が「一般品種」になり、在来種、品種登録されたことのない品種、品種登録期限がきれた品種が一般品種となっている。ちなみに、登録品種の登録有効期間は野菜が25年、果樹などが30年となっていいる。

「登録品種」が今後どう変わるのか(スライド4枚目)。これまで自家増殖をする農家は、一度買った種子や苗を育て、そこから一部を種採りに回して翌年にまた植える、ということをくり返している。そこには、生産コストを抑える目的もありますが、地域の気候や土壌にあった種苗に種苗を開発し、より良質な野菜を栽培するという意味合いが大きいとのことだ。ずっと使っていると種子も劣化するそうなので、何年かに一度買い替えもおこなわれている。もし改定法案が通れば、農家はそれができなくなり、毎年種子や苗を買わなければならなくなる、もしくは、買うに等しい許諾料を払わなくてはならなくなる。ところが生産された野菜に求められるのは安さなので、農家負担が大きくなるというのが懸念されている点だ。

農家にとっては大問題だが、農水省は、「国内の農産物の9割が一般品種で登録品種は一割だから、影響は少ない」と説明している。3月の陳情に戻るが、経済委員会でも同じやりとりがなされている場面があった。このとき例としてコメが出され、下関市では97%が一般品種であると述べられている。「あまり影響はない」という意味かと思うが、改めて下関市内で生産されているコメのうち、一般品種の割合を答えてほしい。

渡壁農林水産振興部長 令和2年第1回定例会の経済委員会における陳情第3号についての協議のなかで市内で生産されている水稲の一般品種の割合について質問を受け、農業振興課の方から説明させていただいた。そのさいに97%が許諾の必要のない一般品種であるとの説明をしたが、その後、再度確認した結果、当時一般品種と認識していた「きぬむすめ」「恋の予感」「西都の雫」については登録品種であることがわかったので、市内で生産される水稲の一般品種の割合は正しくは68%となっている。

本池 委員会の場では、「97%が一般品種で、許諾制の対象になるのは3%」という前提で審議され、あまり問題にされていなかった。しかし、今の答えからすると、「97%が一般品種」という前提が間違いであり、許諾制の対象になるのは、コメに限って見ても30%にのぼる。その後、私が調べたなかでは、登録品種の割合が高い作物もあった。他の野菜について例示せず、コメのみを例示した理由を教えてほしい。

渡壁農林水産振興部長 一般的に広く農家のみなさんが栽培されているということで例示したものと理解している。

本池 わかりました。下関産米だけでも登録品種は30%になる。農水省は「9割が一般品種なので影響は少ない」と説明しているが、品目によって大きな差があり、コメやリンゴ、ミカンなどでは一般品種の割合が多い一方で、サトウキビなどのように9割が登録品種という農産物もある。具体的な農作物でみなければ、その影響はわからない。下関で生産されている農作物のうち、コメ以外の登録品種の割合や、自家増殖をしている農作物について把握されているか。

渡壁農林水産振興部長 野菜などになると様々な品目、品種が生産されているため、詳細な把握はできていない。国の資料によると、全国の資料になるが、コメでは登録品種の割合が17%、ミカンでは3%、リンゴでは5%、ブドウ13%、バレイショ10%、野菜9%と示されている。

本池 下関は県内でも野菜の生産が盛んな地域として知られている。垢田のトマト、吉田のナスなど、農家の長年の努力によってブランド化している野菜も少なくない。行政としても農産物のブランド化を推進してきたと思うが、であれば、それが影響を受けるのかどうか、実情を把握しなければ、下関の農業を守っていくことはできないのではないかと思う。

具体的に下関の代表的な農産物で見てみる。まず、有名な「垢田のトマト」だが、この品種名は「マイロック」というそうだ。これは一般品種か、登録品種か。

渡壁農林水産振興部長 登録品種だ。

本池 権利者は誰か?

渡壁農林水産振興部長 株式会社サカタのタネだ。

本池 次にアスパラガスですがこの品種は「ウェルカム」というそうだ。これは一般品種、登録品種のどちらか。登録の場合は権利者もお願いする。

渡壁農林水産振興部長 登録品種で、権利者は株式会社サカタのタネだ。

本池 次に吉田のナスだが品種は「大成」。これはどうか。

渡壁農林水産振興部長 登録品種で、権利者は株式会社ムサシのタネとなっている。

本池 今の3品目はすべて登録品種ということだ。だが、農家は種採りはしておらず、王司の農協育苗センターで毎年苗を購入して生産しておられる。農産物のなかでも産地型野菜は登録品種が多いそうで、下関もその例外ではない。
 では、横野の枝豆はどうか。品種としては「サッポロミドリ」「福だるま」「湯あがり娘」が使われている。

渡壁農林水産振興部長 一般品種となっている。

本池 では安岡ネギだが、「周次郎」「ダークスリム」「ブラックキング」などの品種だが、これはどうか?

渡壁農林水産振興部長 一般品種を使われている。

本池 農家の方に聞くと、ネギには夏用と冬用があり、周次郎、ダークスリムは冬用だ。そして特徴的なのは夏用の種子だが、「ブラックキング」などの種子を農協から買っている農家もある一方で、複数の農家でその家に代々ひき継がれている「地種」があるそうだ。これがいわゆる「在来種」だ。

安岡ネギといえば極細の「福ネギ」として全国的にも高い評価を得ており、「味、香り、色、日持ちの良さ」すべて兼ね備えた一品だ。安岡ネギならではの深い緑は、育成期間中に極限まで水をやらず「ストレス」を与えることで出てくるものだそうで、しっかりと土壌に根を張る強さと、密状態で植えることによる細さが良質なネギを生産するさいの秘訣だそうだ。出荷までの作業も非常に手がかかっており、とくに収穫したネギの外側を取り除き二股にして一束づつ作っていく作業は本当に手のかかる作業だが、これを家族や部会のみなさんで協力しあってやっておられる。

安岡ネギの場合、トマトやナスのように品種を統一しておらず、育て方を統一することで、同じ規格のネギを生産されている。以上5品目を紹介したが、下関の野菜のなかにも登録品種と一般品種があり、一つの品目の割合だけを見て「大丈夫」と安心はできない。

ここで質問だが、これまで述べてきた品目のなかで種苗法改正によって影響を受けると考えられる品目はどれにあたるか。理由も含めてのべてほしい。

渡壁農林水産振興部長 お話にあった五つの野菜、あるいは水稲について、実際に種子等を提供・販売しているJA山口県の方に確認したが、市内で生産される水稲、野菜について生産者の大半はJAから稲、種子を購入されており、今回の種苗法の改正で大きな影響を受ける品目はないと聞いている。また今、登録品種等においても許諾料的なものを含んだ価格で現に販売されているので、価格の方も種苗法が改正されたからということで、ただちに価格が上がることはないと聞いている。

本池 毎年買われているということと、すでに許諾料も発生しているということで、ただちに影響はないということだ。

一般品種は対象ではなく、登録品種についてもすぐには影響はないのだろううが、他のものはどうなのかという疑問もあるので、それぞれの品種にかかわる影響を見ていきたい。

まず問題になっている登録品種についてだ。登録品種のなかでも下関産のトマト、ナス、アスパラのように自家増殖してないものと、自家増殖によって苗を増やし栽培しているものとがある。代表的なのはサトウキビ、イモ、イチゴなどだが、こうした自家増殖を前提としている品目は、自家増殖が禁止になると毎年許諾料を支払って生産しなければならなくなるため、大きな影響を受ける。今下関ではそういうものはないといわれているが、これまでの何倍という費用がかさむようになり、経営が厳しくなれば倒産もありうるし、後継者不足にもつながる。

自家増殖については「他人が開発した品種を無断で増やすことの方に問題がある」ともいわれており、それ自体はごもっともな指摘だと思う。しかし、そもそもの話だが、自家増殖している農家は何十年とその方法で生産をしている。農家に聞くと、生産自体が自家増殖するシステムになっているため、現時点で購入しようと思っても農家が必要とする種苗は手に入らないという問題があるそうだ。自家増殖していない登録品種に関してはこれまで通りなのかもしれないが、育種権を強めていく法改定の対象ではあるので、今のまま栽培できるかどうかは不明だ。

次に法対象でない在来種を含む一般品種だが、今後、登録品種の許諾料が高くなることを考えると、農家が手を出せなくなる可能性もあり、そのさい一般品種の需要が高まることが想定される。その一般品種のおよそ7割を海外の種苗メーカーが占めているともいわれており、結果、「法改定で誰が得をするのか」、ということが指摘されている。

さらに在来種だ。在来種の多くが、農家が代々引き継いでいるもので、どれだけのものがあるのか農林水産省も実態は把握できていないようだ。この在来種も改正種苗法の対象ではないので、法が改定されても委縮したり制限されることはなく、これまでどおり種採りはできる。

ところが今後登録品種が増えていくことが考えられるなかで懸念されていることがある。その一つが交雑だ。花粉が風にのって交雑し、登録されている品種と混ざってしまった場合はどうなるのだろうか。

登録されている品種と似ている、ということで訴訟になったとき、登録品種を守る法律はあっても在来種を守る法律はない。今回の法改正には「侵害立証を行いやすくする」ことが盛り込まれているので、必然的に登録品種の育成者権を持つ者が優位になる。代々その種子を使い守ってきた農家が裁判によっていとも簡単にその権利を失ってしまう可能性もあるということだ。実際に海外ではそうした訴訟も起き、種苗メーカーに訴えられた農家側が敗訴している。
 下関でいえば安岡の地種のような地域に根付いてきた貴重な種苗がそういったことに巻き込まれてしまうのではないかという不安も感じるが、その点について守る術はあるのか?

渡壁農林水産振興部長 種苗法が改正されて手続きが固まってからということになるが、先ほどいわれた風などによって花粉が飛んで交雑する場合、基本的には特性が異なってくるものだと理解されている。そのもとに登録品種と違いを比べ確認するということで、国の方で対策を講じられるものと理解している。

本池 これまで特性表だけでなく現物で同じ条件の下で栽培して比較することもやられてきたが、それがなくなって特性表だけになることについては、どのように考えたらよいか。

渡壁農林水産振興部長 農水省の方においてそういったものについて、どういった規定の仕方にするのか、具体的に決められるものだろうと理解しているので、ある程度特性表のなかにおいて判断できる形になるのではないかと理解している。

本池 交雑についてはそのようなお答えだったが、種苗法の対象は登録品種ですが、在来種を含む一般品種にも間接的な影響がある可能性が危惧されていることは確認したいと思う。

そして、品種登録についてだが、品種登録するには、「いかにほかの品種と違っているのか」を証明しなければ登録ができないので、登録料などよりもそちらの方に莫大なお金がかかるものだそうだ。種苗育成者としては、その費用を回収しなければ赤字になるため、使う農家がいなければ種を増産できない。

実は先ほどお話した安岡ネギの地種からつくられた「YSG1号」という品種がある。権利者は山口県と農協で、農家の依頼に基づいて地種に選抜をかけ、品種として登録したものだ。2011年10月26日に出願し、出願公表を経て品種として登録されたのは2015年11月20日。当時のネギ部会の会長さんをはじめ、山口県や農協などさまざまな方の尽力でこの品種ができた。しかし、残念ながら現在「YSG1号」の種子は販売されておらず、農家が購入し育成することはできなくなっている。理由としてはさまざまあり、私にも明確にはわからないが、関係者のお話を伺うと、使う農家がいなければ新しい品種を開発しても、出回ることはないということがわかった。

このことは今、種苗育成者や種苗メーカーの経営が厳しくなっている問題にも直結するのではないか。
 安岡ネギの地種を使った試験・研究は今後も県の事業でやられるそうが、種子を使う農家がいて初めて、開発した種子も育成者も守られる。種苗育成者を守ることと生産者を守ることは紙一重だと思う。

本池 ここで、種苗法とよく混同される種子法を再度見たい。1945年の終戦から7年目、サンフランシスコ条約締結の翌月にできた主要農作物種子法は、「二度と国民を飢えさせない」という固い意志にもとづいてつくられました。この法のもとで都道府県では65年にわたり公的種苗事業がおこなわれ、地域にあった多種多様な種子を公共財として安く農家に提供してきた。

山口県でも農業試験場などで主要作物の新品種の開発や登録がおこなわれてきた。米の種子が生産されるまでには4年間かかり、原種農場での選抜と指定圃場での増産を経て厳選された種子が農家に渡ることになる。しかしこの法は、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で2017年4月に廃止され、公的種苗事業の根拠は失われた。

そしてもう一つ、種苗法とかかわりの深い法律がある。それが2017年に制定された農業競争力強化支援法だ。この法律の中身について説明をお願いする。

渡壁農林水産振興部長 農業を成長産業とし、農業者の所得向上をはかるためには農業者が自由に経営展開できる環境を整備するとともに、農業者の努力だけでは解決できない構造的な問題に対処することが必要という趣旨から平成28年11月に国において13のとりくみ項目を掲げて農業競争力強化プログラムが策定されている。農業競争力強化支援法は、このプログラムに掲げられた13項目のうち種子を含む生産資材価格の引き下げ、または流通加工の構造改革といった課題に対応するため、平成29年に制定・施行された法律であり、官民の総力を挙げて種子・種苗の開発や供給体制を構築することを目的としている。

本池 8条4項をお願いする。

渡壁農林水産振興部長 法律が手元にない。

本池 8条4項では、公共事業として培ってきた種苗に関する知見を民間に積極的に譲渡するよう定めている。2017年にこの法律ができ、2018年には主要農作物種子法は廃止された。「種苗法が改定されても、今すぐに影響はない」ということだが、この二つとセットになったとき、これまで公的機関が提供していた安くて良質な種苗が外資を含む民間企業に渡り、種苗を毎年農家に買わせる体制が出来上がっていくことが指摘されている。民間企業は利益の出る種子に偏らざるを得ません。種子の寡占化が進めば、今ある多様な種子が失われていくことにもつながり、それは病気でも広まれば、農作物が全滅する事態につながる可能性もはらんでいる。生命維持の観点から考えても、種子の多様性は重要だと思う。

そもそも、種苗法改定は「海外流出を防止する」という理由が前面に押し出されているが、海外流出については過去から問題になっており、農水省自身が唯一の防止策として「海外で品種登録することしかない」といっている。では改定の目的はなんだろうかと、疑問に感じざるを得ない。

こうした農業や食に関する問題に対し、農業者や消費者に危機感が広がり、種子法廃止以後、全国の都道府県で地域の種子を地域で守る条例を制定する動きが広がっている。全国の条例制定の状況と、山口県の状況について教えてほしい。

渡壁農林水産振興部長 平成30年4月、主要農作物種子法が廃止されて以降、それまで同法にもとづき稲、大豆、麦類の種子生産を担ってきた各都道府県において条例を制定しているのは令和2年8月現在で21道県となっている。山口県においては平成30年3月に「山口県主要農作物種子生産実施要項」を制定しており、要項に定めたとりくみを着実に実行するより、県の役割を適切に果たすことができることから、条例の制定は考えていないと説明されている。

本池 条例制定は今年6月現在で21道県、この9月定例会で千葉県が加わり、制定済みは22道県になるそうだ。

山口県は要綱で対応するといわれたが、要綱は行政内部の指針でしかなく法規としての性質をもちあわせていない。その点、条例は法規になるので権利の行使を制限することができる。全国で条例制定が広がっているのも要綱では守れないからではないだろうか。

とはいえ山口県でも、「将来を担う子どもたちに安心して食べられるものを残したい」という思いから、地域の種子について考える動きが、お母さん方や保育関係者、教育関係者を中心にすでに始まっている。

「種子は過去からのおくりもの」という言葉を私は農家の方から教えていただいた。どの品種も改良こそ重ねているが、昔から種をつないできてくれた先人たちのおかげで存在しており、一時の誰かの儲けのために利用していいものではない。

最後に、これまで見てきて種苗法のはらむ問題について少しでもご理解いただければ幸いだし、下関にある種子や農業についてもっと市民間で情報を共有していく必要があるのではないだろうか。議論のなかではコメが一番影響を受けるという指摘もなされている。法改正になぜ「賛成」なのか、「反対」なのかも含めて農業形態の部分から整理し、市民みんなで食と農の問題について考えていく素地をつくる必要があると思うが、現段階でどのような考えをお持ちだろうか。

渡壁農林水産振興部長 現状としては先の通常国会では十分な議論ができなかったことから、現在継続審議案件ということで次の国会の方で改めて審議されることになっている。改正内容や改正による影響について、農業者や消費者の皆様からさまざまな懸念があることは承知しているが、法改正の趣旨については初めに説明したように長い年月や相当の費用をかけて開発された我が国の優良な品種が海外に流出し、他国で増産される、あるいは第三国に輸出されるといった事例も生じているということで、国内の品種開発者、育成権者の意志に応じた対策ができるようにということで、国として必要な対策を講じていこうというものと理解している。

対応だが、今後さまざまな疑問点において、国において十分な議論がなされると認識しているので、種苗法の改正が農業者にとって大きな負担となるものではないか、あるいはそういったことで引き続き情報提供に努めるとともに、みなさまの理解が一層進むよう情報提供に心掛けていきたい。

本池 農業生産で見たとき今も下関市は山口県下で最大の産地だ。しかしながら、「統計しものせき」を見ると昭和45年に約2万3000人いた農業就業人口は平成27年には約5200人と当時の2割ほどまでに減少している。生産額でみても、平成6年に116億円以上あったものが、平成26年には47億円ほどと、半分以下にまで落ち込んでいるのが現状だ。これは豊北町や豊田町など農業を中心としてきた地域の急激な人口減少とも大きくかかわっていると考えられる。市として農業をどのように振興し活性化させるかを考えていなかければならないときに、農業や食の安全について大きな影響を与えることが議論されている法改定について、「国が動くだろう」とか「国が大丈夫といっているから大丈夫」という待ちの姿勢ではなく、独自に調査し、どのように地域の農業を守り、振興していくのか考えることが必要ではないかと申して、質問を終わる。

 

【追記】

後日、農業推進課より、9月議会での一般質問における渡壁農林水産振興部長の答弁で一般品種と登録品種の分類や権利者について複数の誤りがあった旨、説明を受けましたので、以下のように訂正いたします。