経済委員会の視察に行ってきました

8月3日~4日、経済委員会の視察で京丹後市と豊橋市に行ってきましたので、視察内容をご報告します。

京丹後市の環境保全型農業のとりくみ

京丹後市での視察のテーマは「生物多様性を育む農業推進計画」。

京丹後市には隣接する兵庫県豊岡市から国の天然記念物であるコウノトリが飛来することから、環境保全型農業のとりくみをはじめられ、平成22年に「生物多様性を育む農業推進計画」を策定しています。「生物多様性を育む農業」とは、「農業の持つ物質循環機能を活かし、環境への負荷をできるかぎり低減して、多様な生物を育み、消費者の求めるより安全・安心な農産物を生産する農業」と定義しており、有機農業等そうした農業をとりくむ農家の育成に力を入れています。

京丹後市農業振興課のお話では、有機農業をとりくむのはハードルが高いため、特別栽培米(化学肥料・農薬の使用を府の慣行レベルの2分の1に抑える)の生産を推進していますが、化学肥料・農薬を減らせば収量が減ったり病気が増えたりするため、進みにくい現状があるといいます。

これを進めていくために欠かせないのが慣行農業からの転換と、消費者の理解の醸成です。京丹後市では特別栽培米への転換を進めるために市単独で予算を組み、特別栽培米の団地化を進めれば一反当り約1万円の補助金を出すようにしたそうです。これは、化学肥料・農薬を減らすことで収量が減るのではないかという不安を持つ農家に対してまずは特別栽培を「体験」してもらうことを重視したものです。実際に収量が減ったのかについては、1割ほど減った農家もあったそうですが、多くの農家が苦もなく現在も特別栽培米の生産ができているそうです。

京丹後市の地産地消のとりくみ

もう一つ、興味深かったのが同市の地産地消のとりくみです。具体的には①地域商社、②学校給食の二つがあります。

地域商社については、3年間の予算を組み(令和2年2400万円、3年2600万円、4年2600万円)、道の駅を運営している企業に事業を委託しています。京丹後市は小さな農家が多く小ロットの野菜が多いため、消費地への輸送コストが高くなっている現状があり、これを解決するためにはじめられたそうです。5台の輸送車で農家に出向いて野菜を集荷し消費地である京阪神に運ぶと同時に、途中には学校給食、病院、宿泊施設などに野菜等を配送する役割も果たしています。

今年度で事業期間は終了しますが、この3年のあいだに補助金がなくても自走できる仕組みを市が深くかかわってつくりあげており、「思い描いていた絵に向かいつつある」と手ごたえを感じておられました。

学校給食については、「子どもたちに地域のものを食べさせたい」という農家の思いから出発し、京丹後市内産の特別栽培米をはじめ、野菜、魚なども提供しています。

平成22年度から認定農業者で組織する京丹後市農業経営者会議のなかに「給食小委員会」が設置され、地元産の食材を学校給食に利用するとりくみを開始。この委員会は農家が主体となっており、学校とのつなぎ役として栄養教諭も入っておられるそうです。献立は市内統一献立で、毎月特別栽培米を使った食育週間、月1回の「たんご食の日」、年1回の「まるごと京丹後食育の日」をおこない、子どもたちに安心・安全な地元食材を食べてもらい、食の大切さや生物多様性を育む農業の重要性を伝えているそうです。また、生産者が学校に出向いて生物多様性を育む農業の理解を深めたり、地産地消を推進する「出前講座」もおこなっているそうです。

そのほか後継者育成のとりくみとしては、廃園となった園舎を活用した「丹後農業実践型学舎」のとりくみや、農地付き研修制度についてお聞きしてきました。

以上簡単ですが、京丹後市のとりくみを紹介させていただきました。

環境を守りながら地産地消をどのように進めていくのか。具体的なプランをもって進めておられる市の姿勢に感銘を受けました。近年、下関市でも学校給食の問題等をめぐって、地場産野菜の活用や、より安心・安全な食材の生産の必要性が各所で語られるようになっています。抽象的ではなく京丹後市のように、課題を明らかにし、それを解決しながらよりよい農業現場、学校給食、地産地消につなげていくことが下関にも必要だと感じる視察でした。

京丹後市で学んだことを下関市でどのように生かすのかについては、今後、市民のみなさまとも意見を交わしながら考えていきたいと思います。もっと深く知りたいことやご意見があればお寄せください。